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7.ストレスと性格

イヌの性格は個体差が大きいと思います。もちろん、犬種によって行動に一定の傾向はあると思いますが、性格の定義を喜怒哀楽の持ち方、出し方に求めるのであれば、犬種差は、巷間ささやかれるほど、顕著なものはないと思うのです。ペットホテルの運営で多くのイヌの面倒を見てきましたが、どの犬種も個体ごとの性格は大きく異なっていましたから。

「脳とホルモンの行動学 近藤保彦他 西村書店 2010年」では、下記の通り、母親の胎内にいる時から成長期の生活環境に至るまで、ストレスというものが個体の性格や行動に大きな影響を与えることが明らかにされています。

「妊娠期の母親が社会的あるいは身体的ストレスにさらされると、その後の子の神経内分泌系、あるいは行動に変化があることが示されている」

「母親から離されて育った仔ザルではおよそ半分のサルが新しいコロニーとの間で攻撃行動を示し、群れへの対応ができないなど、社会的適応度の低下も報告されている」

「すでに1949年にHebbは発達期に暗闇で育ったラットでは記憶学習課題の成績が良くないこと見出し、この発達期環境が脳の発達に多大なる、永続的な影響を与えることを見いだしていた。また通常の飼育ケージで飼育されているラットと、ペットとして家庭に持って帰ってもらい豊かな環境で飼育されたラットを比較した迷路学習テストでは、格段に家庭でペットとして育ったラットの方が成績の良いことを報告している」

どういう性格が良くて、どういう性格が悪い、どういう能力がある個体が優秀で、どういう能力がない個体は劣後している、などとその是非を評価するつもりはまったくありませんが、上記3つの引用記述は、生まれて来し方の一連の環境がその個体の性格を左右し、それはおそらくストレスの影響が大きいであろうことを示唆しています。

ストレスが自律神経に与えるデータもその機序も明らかになっていますし、自律神経が神経機能や各内臓の機能をコントロールしていることも明らかになっています。つまり、知覚や感情もストレッサーに多大なる影響を受け、そしてそれが個体の行動に現れているのだと考えられるのです。


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