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『思考の教室』より、ダメな思考回路についての抜き書き

思考の教室では、論理的思考の技術を習得することが必要な理由として、人間の脳が論理的思考に向いていないことを指摘している。

さらに、その帰結として陥りがちな、「疑似論理的思考」や「集団思考」について、具体的な内容が整理されていた。

その内容がとても面白かった。折に触れて見返すことが重要な内容だとも思うので、リスト化して整理しておきたい。

6種類の疑似論理的思考

①同語反復
主張と根拠がまったく同じもの。少し複雑化させて偽装したものは循環論法や論点先取とも呼ばれる。

「ハーバード大学の高名な経済学者ケネス・ガルブレイスは結局ノーベル経済学賞を受賞できませんでしたが、それはなぜですか?」
「おそらくノーベル賞委員会が、ガルブレイスの業績は賞を与えるのに十分ではないと判断したからでしょう。」

②対人論法
論旨ではなく、主張者の人格や属性、過去の失敗などから批判する論法。

「量子力学と相対性理論は間違った理論だ。なぜなら、それを推進しているのがユダヤ人だからだ。そしてユダヤ人は現実離れした抽象理論をもてあそび、真の創造性をもたない」

③わら人形論法
相手方の主張を曲解・陳腐化したうえで、それに対する反論を行う論法。

「しかし関西の人ってヨシモトの芸人が好きだよな~。」
「んなことないよ。うちんとこのお母ちゃんヨシモトだいっ嫌いやで。」
(主張者は関西の人全員とは言っていない)

④論点のすり替え
相手の主張に複数の要素があるとき、重要性の低い方、論拠の弱いほうだけをピックアップして反論するような論法。

「ボクのいるところでタバコを吸うのはやめてくんないかな。誰もいないところで吸って、キミが身体を壊すのはキミの勝手だ。だけど、副流煙でボクに迷惑をかけるのはやめてくれ。せっかくの料理の香りがわからなくなっちゃうし。」
「なに言ってんだ。そんなにスルドイ鼻の持ち主じゃないだろ。」

⑤ジレンマ(強いられた二者択一)
実際には複数の選択肢が存在するにも拘わらず、選択肢が2つしかないことを前提に論を建てること。

「勉強はどうした、勉強は。ゲームする暇があったら勉強しなさい。勉強していい成績とって、いい会社に入っていい給料もらえばいい暮らしができる。そんときゃ、いくらだってゲームもできるだろう。それとも、いま勉強サボってゲームして、就職もできずに一生棒にふるつもりか。えっ。どっちを選ぶんだ」(実際にはゲームと勉強のバランスを取るという選択肢も存在する)

⑥滑りやすい坂(雪だるま)
仮定を繰り返しながら話を進めていくようなやり方。「AならBだし、BならCになるだろ?CならDになってしまう。だからAはダメだ。」というような論法。数学の証明のように、各ステップに確固たるが繋がりがあれば問題ないが、論拠の薄い仮定をつなげていく形の場合、出だしと結論が実際に結びつく可能性はごく低いものになる。

人間が生まれ持ったバイアス

確証バイアス

自分の仮説の正当性を確かめたいときに、仮説が当てはまるケースを集めることで確信を深めていってしまう。本当は、自分の仮説に反するケースを探して検証することも重要なのだが、見落としてしまいがち。

確率をうまく扱えない

ギャンブラーの誤謬「コインを投げて表→表→表だった。次も表に違いない。」
逆ギャンブラーの誤謬「コインを投げて表→表→表だった。次はさすがに裏だろう。」

典型例(あるある)を使って判断しがち
ある集団において全体的に存在する傾向を、その集団の個々人にも当てはめてしまう。

「noteやってるんだ。意識高いんだね。」
「九州人なのか。男らしいところがあるんだろうな」
(引用ではなく、勝手に作った例)

目立つ事例によって判断しがち

進学校出身の大学生「大半の人は大学いくんだから」
(引用ではなく、勝手に作った例。実際には、半数程度)

バイアスを自覚しないままだと

私たちの心に備わっているバイアスは、客観的証拠を無視したり、つごうの良い証拠にだけ注目したり、自分の狭い経験から「あるある」だと思うようになったことだけに基づいて判断したりすることを促す。それによって、私たちをこうした強い欲求のとりこにしてしまう。こうして、信じたいことを信じ続けるようになってしまう。

・迷信、オカルト、疑似科学を信じてしまう。
・狭いグループ内の考えに同化してしまう。
・希望的観測に従ってしまう。
・自己欺瞞に陥る(※)。
・偏見を持つようになり、異なるグループを敵とみなす傾向と相まってスケープゴートを生み出す。


※ 自己欺瞞とは「うすうす自分の立場が間違っているかもと思いつつ、スタンスを変える痛みから逃避したいので、不利な証拠から目をそらしたり、有利な証拠を恣意的に収集するような状態」を指す。


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