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19.コグニサイズ(ながら運動)

イヌにも認知症が確認されていて、高齢犬の介護において、しばしば、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)同様、大きな問題となります。

理学療法で、同時に行わせる二つの作業を「デュアルタスク(二重課題)」と言い、頭を使う作業を「認知課題」、カラダを使う作業を「運動課題」と言います。この認知課題と運動課題を同時に行わせるデュアルタスク・トレーニングを「コグニサイズ」と言います。「cognition(認知)」と「exercise(運動)」を合体させた造語で、「国立研究開発法人国立長寿医療研究センター」が開発したヒトの認知症対策の運動療法です。

歩いている高齢者(ヒト)に話しかけると立ち止まる、という現象(SWWT)から、脳の機能が衰えてくると、2つの動作を同時に行いにくくなるという結論が導かれました。今では認知症予防対策のためのテストとして重要なものとされていて、立ち止まる高齢者は転倒リスクを抱えていると判定されることになります。

イヌに運動課題を実行させるためには、おもちゃやトリーツを使うことが多いのですが、イヌ用知育玩具として、ドライフードを得るために考えながら全身運動を与えるものが売られています。こんなツールを利用するのが一番手っ取り早いのですが、イヌによっては関心さえ向けてくれず、イヌのコグニサイズをいろいろ考えるのは、楽しいながらもむずかしいものです。

与えられる認知課題はすこし難しくてたまに間違える程度の課題、運動課題は少しきつめの全身運動が好ましいとされています。先のイヌ用知育玩具を使っても、フードなどの取り方を覚えてしまうと認知課題の負荷が落ちてしまいますので、いつまでも覚えない方がありがたいんですね。

パピーや若犬に対しては、どんなことでも、脳の長期抑圧を利用して課題を簡単にこなせるようになることを期待するのに、老犬の場合は、認知症対策として、いつまでも簡単にできないことを期待する……高齢犬と暮らす身としては、何だか少しやるせない気もします。


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー

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