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21.給餌法の注意点

「17.健康長寿をもたらす栄養」の回で、イヌの栄養については、必要な栄養素を過不足なく与えつづけることおよび健康を損なうおそれのある添加成分の給与を避けることが、必要であると書きました。
今回は栄養素ではなく、給餌の方法に焦点をおいて、イヌの食事で気をつけたいことを書きます。

まず重要なことは、食べさせること。食べないことには健康を維持できませんが、食の細いイヌに手こずっている飼い主は案外多いようです。

イヌもヒト同様、脳(間脳)にある視床下部でお腹が空いたか満腹になったかを判断します。それらは胃や腸の運動ともリンクしているようで、自由採食法(いつでも食べられる給餌法)よりも2回食(1日分を2回に分けて与える給餌法)の方が、2回食よりも1回食(1日分を1回で与える給餌法)の方が空腹を感じる時間が長いという研究結果が出ています(「犬の胃および小腸運動に及ぼす給餌量と回数の影響 日本獣医師会雑誌 1995」)。食が細いからといって、いつでも食べられる状態にしておくのは逆効果になりかねませんので、ふやかしたり、嗜好性の高い食材を利用するなどして、何とか決められた時間に食べるように持っていく努力をしてみましょう。

食べさせることが重要だからと言って、食べるだけ食べさせると肥満になることがあります。肥満は整形外科疾患でも内分泌系疾患でもそのリスクを高めますので、そこは飼い主がしっかりと摂取カロリーをコントロールすることが重要です。

次は、食べた後に激しい運動をやらせないこと。

胃捻転や腸捻転はイヌを死に至らしめることもある症状です。食後すぐに激しい運動をやらせると、そのリスクは高まります。特に、胸から腰に掛けての巻上り(タックアップ)の強いイヌ(ドーベルマンやグレートデンなど)、ダックスフンド、早食いのイヌ、怖がりのイヌなどがそのリスクが高いと言われていますが、私は科学的なデータを持ち合わせていませんので、真偽のほどは不明です。食器を床から上げてやればいい、とか、食事回数を増やせばいい、とも言われていますが、これまた科学的データを持ち合わせておりませんので、真偽のほどはわかりません。できそうなことは、食事時の飲水量は抑え気味にして食後の激しい運動を控えるくらいでしょうか。

三番目は、同じたんぱく質摂取をなるべく避けること。

食物アレルギーは、同じたんぱく質を継続して摂取することで発症するリスクが高くなる疾病です。できれば摂取たんぱく質の質を変えてやる、つまり、同じフードばかり与えるのではなく、フードローテーションを行うことが大切だと考えています。肉や魚などのメイン食材を変えるだけでなく、製造メーカーを変えることも検討しましょう。肉や魚だけでなく、野菜類も穀物類も、ほとんどの食材がたんぱく質を含んでいますので、メイン食材のみならず、製造メーカーを変えるフードローテーションの方がそのリスクは下がると考えているのです。
療法食としてのアレルギー対応食はたんぱく質をアミノ酸レベルまで加水分解していますので、パパインや麹菌などのたんぱく質分解酵素や腸内環境を整える乳酸菌の利用はある程度の予防効果が見込めるのかもしれません。

最後は、市販のドライフードを与える時の注意点です。ドライフードは保存食です。メーカーは、開封後長時間放置する消費者も念頭に置いていますので保存料を使います。保存料の使い方は、その種類や量についてそれぞれのメーカーで異なっていて、強い保存料が使われていれば脂質などの酸化スピードは遅く、弱い保存料が使われていれば速いと推測されますが、いずれにせよ、保存料は使われています。私は、弱い保存料が使われているフードを、密閉容器を使って冷暗所で管理しながら、開封したらなるべく早く与え切るようにしています。

食事は、運動や休息と並ぶ「健康長寿」の柱となる最重要ポイントです。摂取させる栄養素だけでなく、その給餌方法もきわめて大切だと思います。


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