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5.n-3系(ω3)脂肪酸

免疫の力

ヒトも犬も、健康を保つシステムとして、持って生まれた免疫システムを備えています。細菌やウイルスなどの病原体などを分解したり体外に排除したりするシステムです。
腫れたり痛みを感じたりする「炎症」の症状も、多くの場合はしばらくすると消えてしまいます。これは、治癒の過程で現れる免疫システムの一端であり、多くの免疫細胞が働いてくれている結果なのです。

炎症と脂質

炎症が起こった時に、その炎症を促す物質があります。それは、ω6脂肪酸のひとつ「アラキドン酸」から生まれる「エイコサノイド」と呼ばれる物質群です。そして、逆に炎症を抑制する物質もあります。それがω3と呼ばれる脂肪酸から出る代謝物です。このω3由来の代謝物はアラキドン酸由来のエイコサノイドの産生を抑えてくれるのです。もちろん、炎症を促進するエイコサノイドもカラダの健康を守るためには必要だからこそ産生されるわけですが、ω6の力とω3の力のバランスが崩れると炎症促進効果が高まることになり、ひどい場合はいつまでも炎症がおさまらなくなり、慢性化してしまうこともあります。

わが国のドッグフードメーカーが総合栄養食の製造基準としている「AAFCO(米国飼料検査官協会)基準」では、ω6(リノール酸+アラキドン酸)の摂取量はω3(αリノレン酸+DHA+EPA)の摂取量の30倍を超えないことと定めています。ただし、ω6のひとつである「リノール酸」も摂取すべき必須脂肪酸に含まれていますので、くれぐれもω3だけ摂取していれば健康を保たれるわけではないことをご承知おきください。

抗炎症サプリメント

炎症が起きると、好中球やマクロファージなどの免疫細胞が活性化します。免疫細胞の内、病原体などを食べて処理する「貪食細胞」は、病原体を退治してくれる一方で、活性酸素の発生源ともなります。そして、この活性酸素が細胞膜を傷つけて細胞自体を死なせてしまうことになるわけです。

炎症自体は正常な免疫システムなのですが、早く治癒させて終息させることも重要です。炎症を抑えるとなると、すぐに思いつくのはステロイド剤ですが、ステロイド剤は適切な処方により大きな効果が期待できる反面、使い方次第では多くの副作用もありますので、専門家の指示に従うことが必須となります。

残念ながらDM(変性性脊髄症)にステロイド剤は効果がない、ということははっきりしているようです(岐阜大学動物病院)。それでも、ステロイド剤とω3では、同じ抗炎症効果でも機序が若干異なりますので、闇の中で鉄砲を撃つようなものですが、ω3抗炎症サプリメントには期待したいところですよね。

WIZ-DOGドッグトレーナー 脇 依里


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー