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世の中には「悪い人」と「もっと悪い人」しかいない

”世の中には「悪い人」と「もっと悪い人」しかいません”

大学最後の授業の日、渡された花束を両腕に抱えたまま教壇へ上がった僕の恩師は、これから社会人になる僕らに向けてそう言い放った。

ショックだった。

だって、恥ずかしながら僕は、自分のことを「良い人」だと思っていたから。

恩師の言葉に、突然自分を否定されたような気持ちになった。

僕が尊敬したその恩師でさえも、「悪い人」か、あるいは「もっと悪い人」だったのだろうか。

卒業を間近に控えた今、改めて恩師の言葉の意味を考えてみる。

***

世の中に「悪い人」と「もっと悪い人」しかいないのであれば、きっと後者は、罪を犯してしまうような人のことを指すのだと思う。シンプルに考えて、それ以上の「もっと悪い人」なんて思いつかないから。

だとすれば、世の中の大半の人はもう一方の「悪い人」であるわけだが、それって一体どんな人なのだろう。

僕はこれまでたくさんの「良い人」と思しき人に出会ってきたが、その人たちすらも「悪い人」に分類されるのであれば、それはきっと「少し悪い部分のある人」程度の意味合いなのだろう。

そして僕は、そうした意味での「悪い人」とは、自分本位な生き方をする人のことを指すのだと思う。

誰にでも公平に接する彼の優しさは、周囲から評価を得るための優しさ。いつも笑顔でいる彼女の明るさは、自分の華やかさをアピールするための明るさ。

全ての「良い人」の行動の裏には、自分を守りたいいつでも自分を優先したい、そんな感情が隠れている。

そして、そうした裏の感情で動く人のことを、僕の恩師はあえて「悪い人」と言ったのだろう。

なんだ、人間として当たり前のことをしているだけじゃないか。

自分本位に生きて何が悪い。誰だって自分が一番大切に決まっている。その上でみんな、少しばかり周りを思いやって生きているんだ。

それを「悪い人」と表現した恩師に思わず苦言を呈したくなった。

でも、きっと恩師が伝えたかったのはそういうことではない。

世の中の人がみな自分本位な生き方をしているからこそ、いつだって自分を信じて、助けてくれるのは自分自身なのだ

周りの「悪い人」に頼りすぎず、自分自身で道を切り開ける人間になりなさい

あの時の恩師の言葉にはそんな意味が込められていたのだと、勝手にそう解釈した。

***

言い方こそ極端ではあったが、恩師が残した言葉には社会人になる上での重要な教訓が示されていた。

世の中には「悪い人」と「もっと悪い人」しかいない。だからこそ、自分を大切にし、自分を信じ、信じられる自分になりたい。

4月から始まる社会人生活。不安なことだらけだが、恩師にもらった言葉を胸に刻み、しっかり自分と向き合っていこうと思う。






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