はじめての手紙

彼が我が家の一員になって、早くも5年半になろうとしている。

「就学前教育は大切だ」なんて見聞（けんぶん）するし、「あぁ、そうなんだろうなぁ。」とか思う。

いわゆる英才教育みたいなことはしなくても、感覚器を育むのに最適な年齢があるのもわかっているつもりだし、運動を習得させるにも小さい頃からいろんなコトをさせたほうが...なんてこともわかってる。

言語習得が云々とか、絶対音感がどうだとかって言われるのも、いちいち納得するし、彼はもちろんだけど、子どもたちに提案してやってもらえばいいのかなぁ...なんてことは常に思ってる。そう、常に思ってる。

だけど、結局は「本人が望んだら」でいいんじゃないか。そう思ってぐだぐだと今に至る。

最近になって、長男くんが「字を書きたい」と言ってきた。それらしい教材を準備して書かせてみたら、Amazon PrimeでPrime Videoのコンテンツを見るときと同じ顔してる。

そう、あのギュッて音がするぐらいに没入し、周囲の雑音が一切耳に入らなくなったときに出す、あの表情だ。

彼が字をなぞり、ぼくや妻が読み方をサポートする形で、「あ」から「ん」までを一気にやり通してしまった。その間、彼は余所見をすることもなければ、気が抜ける瞬間もなく、ずっと入り込んだままやり通すのだ。

あぁ、すごいな。こんなにも没入できることが。ぼくはそんな風に没入することができない。むしろ、いろいろなことが気になってしまい、常に気が散らかっている状態だ。

誰かに話しかけられて、「え？何？」なんてこと、正直あまりない。もしかすればすべて聞こえているぐらいだ。それぐらい、なんだかよくわからないアンテナが鋭敏に何かしらの信号を受信しようとする。

ある時、思いっきりコンテンツを楽しんでいる彼に、どうしても話しかけたくなる出来事があり、話しかけたことがあるのだが、見事なまでに無反応な上に何度か名前を呼んで、揺さぶった。

そしたら「え？ごめん！聞いてなかった！」と、あまりにも自然な謝罪と、反応できなかったことの理由を述べた。お見逸れした、とはこの事を言うのか。彼の没入感たるや、我が家に比肩するものなし。そんな気分だ。

彼が通い続けた保育園から、ぼくたち夫婦の都合で転園をすることになったのだけれど、彼にそれを伝えたとき、彼は「新しい友達ができるね！」と明るく答えてくれた。

なんだか、申し訳ない気分だった。

彼は優しい人間で、こちらの感情を即座に読み取り、フォローの言葉を即座に投げかけてくるぐらい、人の感情に対しては敏感だ。

恐らく、ぼくたち夫婦が申し訳な気持ちを持ちながら話を切り出したものだから、それを察知し、前向きな発言をしたのだろう。それがわかるだけに、ぼくたちとしてはツラくなった。

その彼が手紙を書きたい、と。自分が書いた手紙を2年間、彼の成長を見守ってくれた保育士さんに向けて書きたいと。（その様子はこちら）

実際、彼は字を書く練習をしているし、そのお披露目を含めて保育士さんに自分の成長を確認してもらいたいのだと、勝手に解釈している。

ただ、彼は字を練習をしているとはいえ、自分の書きたい文字が「あ」から「ん」の中のどれなのかを把握しきれていないし、それを何のサポートもなしに書くこともできない。

だから、まずはぼくが彼の言葉を受け取ることにして、3つほどいいたいことを書くことに。

一通り聞き終え、実際に書き始めてみると、書き順はメチャクチャだ。メチャクチャなんだけど、その気持ちはこちらを惹きつけるには十分。

下書きでぼくが大きめに書き、それを彼がなぞる形で手紙を完成させた。

内容はこうだ。

いつもあそんでくれてありがとう
だいすきです
またあそびにきます

書き終えた彼は、スゴく満足そうに笑い、こういった。

「喜んでくれるかな！」

大丈夫、喜んでくれると思うよ。なんたって保育士さんは、やさしくて、マジメで、まっすぐな君のことをきちんと見てきてくれた人だから。

彼をみていて、やっぱり、真剣に相手のことを考えながら言葉を選び、投げかける言葉は清々しく、猛々しい。そして、何よりも愛しいですね。

渡すのが楽しみな様子を見るのが楽しみです。

今日もお読みいただきありがとうございます。そういえば、ぼくが初めて書いた手紙は誰に書いたものだったかなぁ。

ぼく：遠藤 涼介/Endo-san （@ryosuke_endo）

#スポみら （元 #スポーツの未来に僕たちができること ）オーガナイザー。 第一弾、新潟経営大学イベントの資金調達を目的に行ったクラウドファンディングは3サイトで募集し、すべて目標達成（総合達成率140％）#新潟 を #許容度の高い エリアにすべく活動中。