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「時短勤務」や「育休明け」といったラベルを貼って終わるだけの人たち

働き方改革と銘打ち、これまでの雇用慣習に杭を打とうとしているわけですが、同時に女性の社会参画をさらに推進していこうとしてし続けて久しくなります。

これは、政治的にみてもリベラル化(自由なこと、自由であること、自由主義的)することが重要であると、本来なら保守的な家族観(女性は専業主婦となり家を守る)を大切にすると主張するはずの自民党が女性の社会進出の支援を謳っていることにも現れています。

それ自体は時代の流れに沿うことでしょうから、これまでの社会状況に対しての変化を訴えかけているようにも思います。

一人の収入で世帯を支えられる時代ではない

現代は夫婦の共働きが前提になっている社会状況であることは、内閣府によって公表されている男女共同参画白書(概要版) 平成30年版で明らかになっています。

なぜなら、平成9年(1997年)以降、共働き世帯が専業主婦世帯を越えており、日本の中では専業主婦世帯が主流だった時代は、すでに過去のことだといえるようになって久しく、言い方が悪くなるのを承知でいえば、専業主婦を囲うだけの財力を一馬力だけで賄えるような世帯は決して多くはありません。

男女共同参画白書(概要版)_平成30年版___内閣府男女共同参画局

「なぜ、そんな風にいえるか」といえば、給与所得の上昇率よりも租税割合(給与から天引きされる税額の割合)が上回っており、給与所得が増えていたとしても、実質手取りは減っていることを意味するからです。

平成30年分民間給与実態統計調査結果について|国税庁

つまり、社会保障費の負担割合は上昇し続けているのに、給与の所得率はそれを下回っているため、額面上は給与が30万円のだったとしても、1998年と2018年とででは手取り額が異なることを意味しています。その理由は給与面に対する社会保障費の負担割合は30%を超えているためです。

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社会保障給付費の推移等 - 内閣府

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をみると、従業員1000人以上の大企業で働く大卒男性の平均的な生涯賃金は約3億円、大卒女性は約2億5000万円となっていますが、社会保障費の負担率を30%だとすると生涯で総計1億から8,000万ほどを支払う計算になります。

ただ、これは一義的な給与の支払いに対する割合でしかありません。

厚生年金に関しては支払ったものが将来的に返還されるはずですが、全額とは言わずとも、厚生労働省が出している現役時代の手取り収入を厚生年金でどれだけカバーできるかを示す「所得代替率」で確認できます。

残念なことに、2019年現在は、2014年よりも代替率は減少しており、これまで通り、給与所得が高い人ほど所得代替率は下がります

給付水準の将来見通し(平成26年財政検証)_- 人口 中位ケース -

いくら頑張っても報われない社会

また、厚生年金は企業と個人とが折半(労使折半)していますが、その権利自体は個人に属するはず。それなのに、ねんきん定期便には「個人の納付分」しか記載がありません。

これがどこに使われているのかといえば、年金ではなく社会保障、後期高齢者の保険割合が低くなるための財源にされていると考えるのが打倒です。

世界的に体験する国がない『少子高齢化』という現象に対して向き合うためには、所得をあげようと思い、頑張ったとしても現役世代は負担を多くなる一方であり、老後を迎えた高齢者の福祉環境を守っていくことを強いられるわけです。

ただ、いくら頑張って高額所得になったとしても、いわゆる老後に給付される額は少なくなる上に社会保険で見れば、多くの保険料を支払ったとしても重い病気に罹患する率が高くなったり、手厚いサービスを受けられるわけではありません。

つまり、頑張った人ほど報われない社会だといえますが、これを踏まえると、現役世代は少しでも長く働くことが生存戦略になるといえます。

ラベルを貼って片付ける人たち

では、現役世代の人たちは、すべての人たちが平等な認識を持った上で「働いている」のかといえば、まだまだ現場レベルでは認識が足りてない箇所が多々あるのではないかと思わざるを得ません。

「時間短縮勤務」「産休・育休明け」といった具合に、ライフステージにおけるステータスが変化する人は少なからずいて、権利を行使する側は女性が多いのは、これまでの雇用慣習があるといえるでしょう。

もちろん、出産・育児など絶対的に時間的な拘束を受けざるを得ないからでもあります。

だからと言って、男性が取得してはいけないわけではありませんが、男性側の取得に対する意義を見出しているとは、まだまだいえないのではないか、と考えています。(過去にも『育休や時短勤務に関する風潮(前提)から感じた男性目線の"やさしさ"の欠如』で書きました。)

いわゆる時間が短い中で通常通りに成果を求められるのであれば、アウトプットの質を担保しつつ、ただ時間だけが短くなっている状況を踏まえると、厳しいことを求められているのだと気づけると思います。

ただ、時間短縮勤務を取得している人たちは「残業ができない状況」だからこそ取得しているだけで、特に生活の縛りがない人たちが「残業を前提に」仕事をするような態度を取ることは、フェアではありません。

そもそも残業が生じてしまっている事実に対して目を背けているとしか思えませんし、組織のあり方としては俗人化していない作業的な仕事を、どれだけ効率的に回せるのかどうか、つまりは「無駄な時間を削減できるか」が残業時間の減少につなげる唯一無二の策だといえます。

たとえば、2度起こったことはマニュアル化して誰もが見れる社内Wikiや、WEBシステムの中に組み込んでしまうなどで、少しずつでも時間が捻出できることになります。

それらの対応策を無視して、「あの人は時短勤務」「あの人は育休明け」などと制度のラベルを貼って認識レベルを引き上げようとしない人は、おそらく、今後も生産性がどうだという議論に全体が流れて行ったとしても「自分がよければいい」と認識した上で仕事に対して取り組んでいくのかもしれません。

より先鋭化する「仕事」

今後、働き方はより先鋭化されていくものだと思われます。

なぜなら、これまでの日本的な雇用慣習では、さまざまな分野でトップを目指せるだけの対価を支払えないことがわかってきました。

NTTデータがトップレベルの情報技術を保有する技術者の対価を最大3000万円にまで引き揚げたことが話題になりましたが、一般社員の待遇はそのまま据え置かれており、いわゆる特例です。

しかし、GAFAと呼ばれるGoogleやAmazonなどの現在の世界的なトップ(時価総額)企業は、専門職であれば、誰に対しても年収が数千万円レベルなので、ここには大きな隔たりがあります。

それを是正していくためには、定年制度といった年齢差別や新卒一括採用などの非効率的で差別的な慣習を打破し、企業側に金銭解雇の法制化などで雇用の流動性を生み出して行かなければなりません。

ガラパゴス化していき、誰も近寄れない独自の世界を保ち続けなければならない状況になってしまうかもしれませんが、先に触れたようなラベルを貼って片付けるだけの人たちが上層部にいるのであれば、どれだけ時間がかかるのかは予想もできません。

ただ、潮流として、より仕事が先鋭化していくことは間違いありませんから、それに対しての向き合い方を企業側も、個人としても求められていますし、それが解消されることはありません。

どうしましょうか。


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