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南海トラフ地震を想定した復興デザインの提案発表 八幡浜高校防災地理部

6月9日(木)に今年度最初の支援者向けイベント「八幡浜高校防災地理部の発表」が八幡浜みなっと みなと交流館で開催されました。

最初に八幡浜高校防災地理部が「南海トラフ地震を想定した復興デザインの提案」を発表しました。
その後参加者はグループに分かれ、発表に対してのアイディアをディスカッション。最後に各グループのアイディアを参加者全員で共有しました。

「防災地理部」とは
東京大学復興デザイン研究所主催の「復興デザイン会議全国大会」の高校生部門のプロジェクト。
地域の地形や歴史、住民の声から学び、南海トラフ地震が起きた場合の課題は何か、自分たちに今何ができるかについて調査、分析、議論し、復興デザインの提案を発表するものです。
宇和海3地区、松山・今治の2島の6校が参加し、2020年より活動開始。

※今回の八幡浜高校防災地理部の発表は、「復興デザイン会議全国大会」の全国高校生デザインコンペ2021で最優秀賞を受賞しました。


🔹八幡浜高校防災地理部の発表

八幡浜高校周辺は海・川に面し背後に山が迫り、狭い土地に住宅が密集しており、南海トラフ地震が起これば町に大きなダメージを与えることが予想されます。
町は流動的で新旧の住民が入り混じっているため隣人同士の関係が薄い地域もあり、高齢者も多いです。

災害発生時の大まかな流れとして考えたのは
①    八幡浜市からの災害情報を入手した地区リーダーが、コミュニティサイ
  トに掲載

②    事前に作っておいた防災マップを見て集合、避難を開始する
というもの。

平成30年7月豪雨の体験やトロール会議への参加から、適切な情報提供と享受の在り方が課題であると考え、人々がつながりを持ち、より強固な情報網を持つことをコンセプトに復興プランを考えました。

復興プランの具体策は、
①   地域間でハブを作る
②   情報を簡単に得られる機器の導入とコミュニティサイトを作る
の2つです。

八幡浜市を4つの地域に分け、各地域をさらに小さなグループ=ハブ(回覧板で括られた世帯数)に分けます。地域の住民は必ずこのハブに所属しています。

災害時に八幡浜市からの情報を地区リーダーが受け取り、その情報をハブリーダーが持ち、コミュニティサイトを利用してハブ内で情報を共有します。
八幡浜市→4地域→地域間ハブという情報共有のピラミッドを形成することで、災害時に市からの情報をいち早く全住民にいきわたらせることができます。

ハブリーダーには民生委員を推薦します。民生委員は地域に密着した活動を行っており、地域の高齢者や児童のことも把握しているからです。

各ハブ内では事前に防災マップ「これを見たら安心マップ」を作成します。
マップは必ずハブ内の住民が自分たちで作ることがポイントです。

八幡浜市内に住む高校生約150人が協力し、実際にこのマップを作ってみました。
「土砂崩れ」「道せまい」「抜け道」「神社」「公園」「公民館」など、平成30年7月豪雨のときに身近で起きていたことや避難の目印になる場所、避難時の危険場所を付箋に書いてマップに貼っていきました。

各ハブ内では、回覧板に挟んでおいた防災マップに住民が書き込んでマップを作成します。
ハブという小さな単位で自分たちで作ることで、顔の見える関係ができ、住民同士のつながりが強くなると同時に、危険場所を把握でき、避難意識を高めることができます。

ただ、災害発生時には避難することが最優先になるため、ハブという情報連絡網は機能しなくなることが予想されます。
この問題を解決するため、災害時に瞬時に必要な情報を入手し、災害発生後や平時から情報を共有しあえるコミュニティサイトの設営を提案します。

コミュニティサイトはいつでも誰もが見ることができ、普段から活用できます。
サイト内は各地区のリーダーを中心にハブに分かれており、自分の住む地域をクリックするとハブごとに書き込みできる掲示板があります。

平時には地域の祭り、子ども会、老人会などのイベントや、危険な場所や災害が起きたときの対策など地域の情報を掲載することができます。

災害時には、八幡浜市からの情報を地区リーダーが受け取り、該当欄に書き込むことで、その地域全体に情報が回ります。
簡潔に正確な情報を伝えるため、災害の規模、被害の程度、津波到達の時間、避難に必要な情報などを写真や動画で発信します。

避難している途中や避難所で土砂崩れの動画や写真を掲載することで、救助復興がしやすくなり、復興活動に必要な人数を想定することもできます。

ニーズに合わせた情報を発信するとみんなが使いやすくなり、常日ごろから見るサイトとして意識してもらうことで、いざというときにも活用できます。

最後に、災害時の避難場所として寺社の活用を提案します。
寺社は比較的広い道に面しており、目印になりやすこと、大勢が一斉に避難できる広さを持つこと、寺社同士の距離が近いので分散避難ができるからです。

🔹参加者からの質問やグループディスカッションでの提案

  • コミュニティサイト活用に関して、スマホやタブレットの使用が苦手な高齢者に対するフォローは?                     → 災害発生時には高齢者は避難を優先してもらう。平時にはサイトへのアクセスの仕方や掲載内容をプリントして回覧板に入れておくことで、住民全員が確認でき、実際にサイトを見たり書き込んだりできるようにしたい

  • コミュニティサイトに書き込まれた情報の管理や対応は誰がするのか? → 情報を見た人が動いてくれるかはわからないが、誰もが見られて、誰かがつなげてくれる場として、みんなで作るサイト。市民全体で動かしていくことが大切

  • 誰もが利用できるサイトは情報があふれるので、管理者がある程度運営方針を決める必要がある。平成30年7月豪雨のとき、市や社協など公的機関の情報はとても役立った。コミュニティサイトやハブを活用していくのであれば、市民が安心して利用、アクセスできるものを目指してほしい

  • 何でも書き込めるサイトは管理・運営するのが難しい面もある。例えば、発災時の初動は市に任せ、3日目以降の「瓦が落ちて動けない」などの情報に対して支援できるボランティアとつなげるなど限定してはどうか? この方法だと、発災直後よりも緊急性が低いので取り組みやすいのでは

  • 現状では民生委員(高齢者が多い)でサイトを使える人はほとんどいないので、情報の入力は中高生など若年層が頼りになる。災害時、高齢者は少しでも早く避難し、避難所でサイトの情報に接することができれば助かると思う

  • 防災士は防災訓練、地域の障がい者の情報、避難所、炊き出しなどの課題について考えて活動しているので、ハブリーダーには地域の防災士が適任では?

  • 住民みんながイベントに参加したり、サイトを活用するのは非常に難しい問題。けれど、高校生がこのような仕組みやサイトを作ったことを、まずは市民に「知ってもらうこと」(啓蒙)が大事。「何のためにやっているのか」(目的)を理解してもらい、市民にどう広めていくか。知ってもらう、広めていく「きっかけ」を作ることが大事

  • 高校生のITの強さと、高齢者のこれまで被災した経験や地域の知識が合わさったものをみんなが見られる場があれば、災害に強い町になると思う

🔹まとめ
今回の高校生の発表にもありましたが、トロール会議でも発災時に集まった情報を整理・分類し、使える情報にして支援者に届けることが課題です。

発災した地域に情報がたくさん集まっても、その県の担当者は現場対応に追われます。
そんな時、集まった情報を他県の情報サイトにアクセスできるボランティアが、情報を整理・分類してくれた事例がありました。

例えば、高齢者が紙に書いたり写真を送ってきたとしても、そのアナログ情報を若い人たちがデジタル化してコミュニティサイトに掲載することもできます。

今回の高校生のアイディアをトロール会議の中でも活かし、お互いの強みを活かして一緒にできることがあると思うので、実現に向けて一緒に考えていきましょう。

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