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愛媛のしっぽで暮らす。みかんアルバイター体験記 2

2021年11月~12月、愛媛県西端の伊方町でみかんアルバイターとして暮らした1ヵ月半の記録。

週末の収穫と雨の日の選別

収穫ピークの土日は離れて住む息子さん娘さん一家がお手伝いに帰ってくることも多い。
普段は70代夫婦で作業されている農家さんも、2人の息子さんとそのお嫁さん、高校生のお孫さんと、大人5人の手が増え、収穫スピード倍々増。休憩のおやつタイムも賑やかだ。

今メインで収穫しているのは早生だが、3日前から南柑20号の収穫も解禁になっている。こちらは出荷できるのはまだ先なので、色づいたものだけ収穫して倉庫へ。
みかんは品種によって収穫と出荷できる日が決められていることを初めて知った。

日曜の仕事終わりに農家さんから、「最寄りのスーパーまで買い出しに行くついでに、娘も帰って来とるけん、一緒に食事しよや」とお誘いが。
ここへ来て1週間が経ち、足らなくなった野菜やお茶、カレールーなどを車で買いに連れてもらい、近くのレストランで娘さんと高校生のお孫さんと合流。ジャココロッケ、刺身、しらす丼、そしてもちろん!生ビールもご馳走になった。

週明けは朝から雨。収穫作業ができないので、倉庫で初めて選別作業をした。
選別機では、最初に小さいものが穴から落ちていく。次にベルト上をころがる実を目や手触りで傷物や日焼け、青すぎるものを取り除き、最後に規格外の大きな実が落ちる。

私は最初に機械から落ちた小さい実(2S)から、さらに小さい実(3S)を選別する係。穴空き虫メガネのような輪に、1つずつみかんを通し、通らないサイズは2S、通るサイズは3Sに分ける。
みかんはまん丸に見えるが実は平べったい楕円形。丸い穴にのせると落ちない実も、横向けに回すとスルリと穴を通るものもある。穴を通った極小の3Sや大きすぎる規格外の実はジュースなどの加工品になる。

みんまとお裾分け

シェアメイトの学生さんが「みんまに行ってもろうたけん」と言う農家さんから大きなお餅をもらってきた。

「みんま」とは「巳午」と書き「仏さんの正月」と言われ、12月の巳の日にその年に亡くなった人の正月を祝う行事だそうだ。
この行事は愛媛県と四国三県でも愛媛寄りの地域だけで行われているそうで、12月は忙しいので11月に行うことが多いらしい。

鏡餅大の大きな餅で餡が入っている。すぐには食べられないので、冷凍しておいた。
ある日のお昼におにぎりを1つに減らして、この餅を食べた。とにかくデカいので、おやつというより、お昼ご飯向きだ。

みんまの餅(上)は大きくてあんこ入り


昨日の夜は、先日大量にいただいて冷凍しておいた鯵を揚げ、南蛮漬けに。17匹もあったので、鯵をいただいた2軒の農家さんにお裾分けした。

そうしたら次の日、1軒からそのお返しにと、カボチャ、ゴーヤ、ピーマン、カップスープ、牛丼の素、手作りのみかんジャム、梅シロップが届いた。

そしてもう1軒からはお返しに、コロッケ4つと牛肉が届いた。
倍返しだ! いやいや、わらしべ長者か? お返ししたのに、その倍のお返しが返ってくる。

今晩はカレーを作ったので上にコロッケをのせ、いただいた柿が熟れすぎたので柿ドレッシングにして、いただいた野菜のサラダにかけ……していたら、別の農家さんから「親父が釣ってきたけん」とヒラメの刺身を持ってきてくださった。

嬉しい悲鳴の昼ごはん、晩ごはん。こちらへ来てから、買い物にほとんど行ってないんですけど。
毎日、毎日、美味しくて幸せ。

カレーにコロッケのせ、サラダには柿ドレッシング、平目の刺身

浜辺をラン

こちらへ来て初めてのお休みの日曜日。
あんまり天気がいいので、走りに行くことにした。

この日は地元の小学校の学習発表会の日で、学校の前には保護者の車がいっぱい止まっていた。
いつもは2月にあるそうだが、コロナ対策の換気のために窓を開けなければいけないので、寒くなる前のこの時期に変更になったそうだ。

「こんな忙しい時期にあると、見に行けない」と、子どものいる農家さんは残念がっていた。
収穫がピークで忙しく、年末まで休みなし。日曜日も山へ収穫に行くからだ。

みかんのコンテナを積んだ軽トラとすれ違うたびに、「走る時間と体力あるなら収穫手伝って」と言われるんじゃないか、とドキドキしながら走る。
海がきれいすぎて気持ちよくて、アップダウンもまったく気にならない。


気がつけば、隣の集落の浜まで来ていた。そこまで約4km。その先は道がなさそうだったので、キッツイ上り坂の農道を上がり、メロディーラインと呼ばれる国道までさらに4km。

そこから折り返して一気に来た道を下り、農道を走っていると道端に止めた軽トラのそばから、「誰か走りよるなぁと思ったら、まみ子さんじゃないですか!」と見つかり声をかけられる。

お昼に家に帰ってシャワーを浴び、昼からは部屋の掃除。
シェアメイトの学生さんは、大量にいただいたサツマイモでスイートポテトを作っていた。
晩ごはんはジャコカツを揚げ、サラダには甘平(かんぺい=愛媛県で開発された晩柑の品種)で作ったドレッシングをかける。

毎日みかんをいただくので、いよいよ部屋がみかんだらけになってきた。
私は親しい人に少し送ることにし、学生さんは「今度はみかんでケーキを作る」と張り切っている。

1日いったいどれぐらいみかんを食べているだろう。山でも家でもしょっちゅうみかんを食べている。そろそろ手が黄色くなるかな?

こたつにみかん

本当のごちそう

シェアメイトの学生さんと私は、毎日それぞれ違う農家さんの山へ手伝いに行くので一緒に仕事をすることはない。

農家さんたちは午前中収穫したみかんを一旦倉庫へ運ぶため、お昼はそれぞれの家に帰って食べる。私たち二人もお昼に一旦家へ帰る。

昼休みは1時間なのでゆっくり作っている暇はない。
たいていは、まとめて作って冷凍しておいたおにぎりと晩御飯の残りのおかずや味噌汁を温め直して食べている。

仕事は4時半までなので、晩ご飯は二人で手分けして作る。
ある日は、おかずをお裾分けしたお返しにいただいた牛肉で焼き肉にした。すき焼き用の上等なお肉だったので、小さく切って半分こ。

「私、黒毛和牛を食べたの初めてかも!」と感激する学生さん。
一緒に焼いた野菜や大根おろしの大根、肉を巻いたサニーレタスも頂き物。
学生さんが小さく切ったお肉を、1枚1枚愛おしそうに焼いて、本当に嬉しそうに食べるのを見て、こちらまで幸せ気分に。

ほぼいただきもので焼肉

ある日は、釣ったばかりの鯛をいただいた。半身は刺身に、皮は湯引きしてネギポン酢で、骨まわりの身は塩焼きに。庭から抜いた水菜と切り干しで胡麻和えにした。

鯛づくしの晩ごはん

ある日は、ゴーヤとチンゲンサイをたくさんいただいたので、チャンプルーに。
じゃこ天とお新香(これも手作りをいただいた)をみじん切りしてのせた。

野菜多めの食卓

みかんが山盛りあるので、学生さんが休みの日にみかんケーキを作ってくれた。甘さ控えめで、朝食にもイケる!

毎日、毎日、「贅沢だよねぇ」と言いながら、感謝して美味しくいただいている。
「一つひとつがすごくおいしい。本当のごちそうとはこういうものなんだと、ここに来て分かりました」と学生さんが言う。










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