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利尿薬

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2020年12月の記事一覧

【後半は私見】トルバプタンについて【作用機序,推奨,実用性を考えた適応など】

先日,このような質問をいただきました.

「『ループ利尿は血管内脱水を引き起こす』,『SGLT2阻害薬の利尿効果は間質液は減らすが、電解質に影響を与えにくいため血管内脱水になりにくい』,『パソプレシンV2受容体拮抗薬は、水利尿薬であり細胞内・外の両方から水分を排泄するため、血管内脱水になりにくく血圧低下も少ない』
という情報を勉強しているとよく目にしますがイマイチピンときません。
また,ANP製剤

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【ユニークなナトリウム利尿薬】K保持性利尿薬(ミネラルコルチコイド拮抗薬)【ENaCはナトリウム再吸収の最後の砦】

※2021/3/1一部修正.

今回は,K保持性利尿薬(ミネラルコルチコイド拮抗薬:MRA)について.

スピロノラクトン(アルダクトン®),エプレレノン(セララ®),エサキセレノン(ミネブロ®)ですね.

1.K保持性利尿薬(MRA)の作用機序腎臓の遠位尿細管~皮質集合管には,アルドステロン依存性にはたらく上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)があります.

ENaCにアルドステロンが作用すると,

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フロセミドの持続投与に意味があるかを考える【vs ボーラス投与】

今日は小話です.

フロセミドの持続投与をみたことありますか?

あれって意味があるんでしょうか?

よく色んな本に書いてあるエビデンスをピックアップしつつ,個人的な意見を紹介します.

DOSE 研究(N Engl J Med. 2011 Mar 3;364(9):797-805.)
・急性心不全に対して
➀持続投与 vs ボーラス投与(12時間おき)
➁高用量(元々内服していた用量の2.5倍)

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【The利尿薬】ループ利尿薬【特徴から種類や使い分けも解説】

今回は,最強の利尿薬,ループ利尿薬の解説です.

1.ループ利尿薬の作用機序と特徴ヘンレのループ上行脚にあるNa-K-2Cl共輸送体を阻害します.

これの何がすごいって?

(他のナトリウム利尿薬同様の)単純なナトリウム再吸収抑制による利尿効果は当然あります.

重要なのは,それに加え,ヘンレのループの濃縮機構を阻害することです.

ヘンレのループの濃縮機構を阻害すると,腎髄質の浸透圧勾配が低減

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【降圧薬なの?利尿薬なの?】サイアザイド系利尿薬【使用場面や使い分けを解説】

※2020/12/17加筆修正

サイアザイド系利尿薬が誕生したのは1957年のことで,利尿薬の代表格で幅を利かせているループ利尿薬より,歴史的には先輩にあたる利尿薬です.

しかし,利尿薬として,ループ利尿薬に代表格の座を奪われています.

むしろ,「利尿薬」という呼称がありながら,降圧薬としてのカテゴリーもあります.

そんな,サイアザイド系利尿薬の不思議な特徴を,今回は解説していきます.

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【代償機構のブレーキ】カルペリチド(ハンプ®)について【ARNiが流行る前に】

”ハンプ®といえば心不全の薬”

”なんか,心臓とか腎臓にやさしい利尿薬”

こんなイメージですかね?

今回は,カルペリチド(ハンプ®)の話.

これから流行るかもしれないARNi(アーニィ)(ネプリライシン阻害薬とARBの複合剤)の予習にもなるかもしれません.

■前提:心不全における体液貯留カルペリチドと言えば,利尿剤.

利尿剤ということは,体液貯留が治療ターゲットですよね?

 

では

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【利尿薬比較シリーズ➀】利尿作用の強さを比較【ループ利尿薬は本当に最強?】

利尿薬には「強さ」という概念があります.

一般的には,ループ利尿薬が利尿効果最強の利尿薬とされます.

この差ははなぜ生まれるのか.

今回はその点を解説していきます.

利尿薬といえば,ほぼナトリウム利尿薬たいていの利尿薬は,ナトリウムの再吸収を抑えることで,利尿効果を発揮します.

ループ利尿薬,サイアザイド利尿薬,K保持性利尿薬,炭酸脱水酵素阻害薬などがそうです.

「同じナトリウム再吸収

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