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2020年12月の記事一覧

【血管拡張薬が心不全治療になる理由】循環動態の基礎➂【クリニカルシナリオ分類に対する私見あり】

第1回,第2回と,「循環動態の基礎」というタイトルで,フランクスターリング曲線に絡めて循環動態を考察してきました.

今回は,後負荷,すなわち,血管抵抗に関しての解説と,それに関連してクリニカルシナリオ分類に対する私見です.

 

1.血管抵抗とは血圧,いわゆる動脈圧は,心拍出量と体血管抵抗の積です.

動脈圧= 心拍出量 × 体血管抵抗

つまり,いくら心拍出が保たれていても,血管抵抗がなけれ

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【フランクスターリングの法則】循環動態の基礎➀【心不全・補液の基本とフォレスター分類】

心臓は,全身血液を送るポンプの臓器です.

心臓は,ゴムのように伸縮する心筋のかたまりです.

心臓がポンプとして,「いかに血液を送り出せるか」は,「心筋がどの程度伸びるかに」によることがわかっています.

これを,フランクスターリングの法則と呼びます.

今回はこのフランクスターリングの法則を知ることから見えてくる,循環動態の基礎を解説します.

話が長くなるので,今日は第一部.

 

1.心

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【代償機構のブレーキ】カルペリチド(ハンプ®)について【ARNiが流行る前に】

”ハンプ®といえば心不全の薬”

”なんか,心臓とか腎臓にやさしい利尿薬”

こんなイメージですかね?

今回は,カルペリチド(ハンプ®)の話.

これから流行るかもしれないARNi(アーニィ)(ネプリライシン阻害薬とARBの複合剤)の予習にもなるかもしれません.

■前提:心不全における体液貯留カルペリチドと言えば,利尿剤.

利尿剤ということは,体液貯留が治療ターゲットですよね?

 

では

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急性期NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の特徴・適応疾患・注意点

NPPV:Noninvasive Positive Pressure Ventilation は,日本語でいうと,非侵襲的陽圧換気,です.

気管挿管や気管切開などが必要となるIPPV:Invasive Positive Pressure Ventilation侵襲的陽圧換気と対比されますが,NPPVはマスクを介して行うので,”非侵襲的"という表現がされます.

そんなNPPVの特徴や適応,注意点

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浮腫の仕組みと原因【2つの要因×鑑別ポイント】

※2020/12/7大幅修正しました.

今回は浮腫の鑑別方法です.

浮腫形成の仕組み【2つの要因】浮腫の原因を考える上で,浮腫の仕組みを知っておくことが重要です.

要因➀血管内から間質への水移動血管内から間質への水分移動は,Stalingの式で規定されます.

Starlingの式:LpS×(Δ静水圧ーΔ膠質浸透圧)
Lp:透過係数
S:全毛細血管濾過面積

Δ静水圧とは,毛細血管の静水圧と

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