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医療従事者を苦しめているのは○○を知らないあなた【医学生が解説します】

こんにちは!monです!
今日は、医療従事者を苦しめているのは○○を知らないあなた
というテーマでお話していきます!
乱暴な言い方になりましたが、本当にみなさんに知ってほしい内容です。

最近は、新型コロナウイルスに第一線で活躍する医療従事者の姿が報道されています。そこで、知っているだけで医療従事者を助けることができる知識を紹介していきます。

まずは以下のtweetを見てください。

明日は、医療経済系の話をします。医療分野は30兆が税金。
診療報酬の仕組みを交えつつ、病院の機能分担と選定医療費についてです。タイトルは「〇〇を知らないあなたが医療従事者を苦しめる」たぶん国民全員が小学校くらいで知っておいた方がいいです

こういった内容ですね。

実は、現在の医療制度について知っていれば、そんなに難しいことではありません。

実際に、文部科学省の会議でも議論になり国民に知ってもらう必要性が出てきました。以下の通りです。

保険システムだとか医療というものはどうなっているのか、そういうことを社会の時間にきちんと教えなきゃいけないです。そういう認識がないために何が起こっているかというと、日々医者は苦労しているんであります。なぜかというと、何でCTを撮ってくれない、何でMRIを撮ってくれないから始まって、ありとあらゆる理不尽な要求が来ます。これは教育がきちんとしていないからであります。ということを考えただけで、医者の負担というのは私はかなり減ると本当は感じています。

もし、医療従事者に対して何かできることはないかなと思っているなら、ぜひ、このページを読んでください。そうすれば、なぜ、現在の医療制度を知れば医療従事者を助けることができるかが具体的にわかります。

そして、知ることで医療従事者を助けることができ、医療費削減に繋がり我々の税金面でもいい効果が期待できます。

まずは、医療費について把握しよう

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超高齢化社会に向けて考えられた、病院と診療報酬の仕組みについて理解しておけばOKです。まずは医療費について理解していきましょう。

まず、日本の医療費がどれくらいかわかりますか?以下のグラフを見てください。

国民医療費 画像

国民医療費は総額50兆円で入院などの医科診療医療費は30兆円程です。
また、国民医療費の推移については以下のグラフを見てください。

国民医療費推移 ②

このグラフから、医療費の増加と国民の所得に対する医療費の占める大きさ(対国民所得比)が激増していることが分かります。1961年に対して2017年は自分たちの所得に対する医療費の負担の大きさは三倍程度になっています。一概には言えませんが、団塊世代が65歳以上になる2012年までに医療費は激増しました。そして、将来的には75歳以上の高齢者人口はさらに増えます。

20200529 実践医学-35

75歳以上の高齢者の人口は2025年をピークに増え、その後減少に転じていくと推計されています。

つまり、医療費が最も多くかかる高齢者の人口は増え現役世代は減ると考えると、医療費の負担は今後さらに増えそうですね。

私たちの医療費が激増していることは、私たちの税負担の増加につながるため現役世代にとってもただ事ではなさそうです。

超高齢化社会を見据えた医療制度

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現在の医療制度の要点は2つです。
それは、上記した高齢化社会が原因です。

・要点①:地域で完結
・要点②:自宅で治療

それでは、順番に解説していきます。

要点①:地域で完結

まず、以下のイメージを見てください。

医療圏

現在の医療制度には医療圏というものがあります。

一次医療圏:地域のクリニック、町医者。市町村単位。
二次医療圏:普通の病気を診る病院。複数市町村単位。
三次医療圏:特殊な病気を診る病院。都道府県単位。

そして、厚労省は介護も福祉も医療も全て地域で完結するモデルを作りました。以下です。

地域包括ケアシステム

つまり、医療も一次医療圏の町医者や地域のクリニックで完結しましょう、ということです。

要点②:自宅で治療

これは、超重要です。医師が入院させないようにするために、
「ここからは住み慣れた自宅で治療していきましょう」
という理由が分かります。理由は3つです。

・理由①:入院費用である税金(医療費)の削減
・理由②:医療費削減に貢献し、国から報酬をもらう
・理由③:本当に入院が必要な人を優先

入院費は税金ですから、自宅に返せば(在宅復帰すれば)医療費は削減されます。そして、在宅復帰率が一定以上でないと国から補助金をもらえないのです。病院経営の4割が赤字ですから、病院側は死活問題でしょう。
また、入院が必要な患者を優先することもできます。

実際に、高齢者(需要)が増えても、実際に病院に入院することのできる数である病床数(供給)は増えていません。むしろ減っています。

病床数

このことからも、入院ではなく自宅で完結させたい国の思惑が見て取れます。

医療従事者の困っていること

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上記の話を受けて医療従事者が困っていることは、2つあります。

・苦悩①:本当に入院が必要でも自宅に返さなければならない
・苦悩②:医療費が高くつく医療行為は必要でなければできない

そして、患者やご家族が医療制度について理解が少しでもあればと思うことが日常的に多いようです。
それでは、順番に解説します。

苦悩①:本当に入院が必要でも自宅に返さなければならない

これの理由は以下です。

・理由:病気によって入院できる日数が決まっている(在宅復帰率の維持)

例えば、脳血管疾患で回復期病床に在院できるのは150日など、入院できる日数が決まっています。そして、在宅復帰率(入院患者がどれだけ自宅に帰ったか)が一定以上でないと国から補助金をもらえません。

だから、本当に入院して治療が必要な患者でもしぶしぶ家に帰さなければならない場合があるのです。
このことで患者側から
「ずっと入院して診てもらおうと思っていた。自宅に返すなんてあんまりだ。」といった、不満がでてきます。
その度に医療者側は、
「国の方針のため在宅で治療しなければならなくて...」といった問答に時間を割かれてしまいます。

苦悩②:医療費が高くつく医療行為は必要でなければできない

これは、すべての医療行為にも同じことが言えます。
病気によって行う医療行為が決まっているのです。

もちろん、手術はしてほしくない、など患者中心の医療を提供するのは当たり前です。
しかし、いきなり受診してきて「CTを撮ってください。MRIをお願いします。」という要望に対しては、はい、わかりました。とはなりません。
医療行為は基本、必要性がなければ実施できないからです。
さらに、診療報酬は1点=10円で、一回当たりCTは1000点で1万円、MRIは1600点で16000円です。
これを要望に応じて行っていては、たちまち医療費は爆増します。

また、日本は独自のDPC/PDPSという会計方式で病気によって1日当たりの診療報酬が決まっています。
つまり、1日当たりにかかる医療費を下げようとする意図が働きます
このことからも必要のない医療行為は行えないことが分かります。

まとめ

・医療費の負担が爆増していること
・超高齢化社会に適した医療制度があること
・それは、地域と自宅で完結する方向性であること
・これらに対する患者側の理解が浅いため医療従事者が困っていること

これらについて知っているだけで、医療者側はかなり負担軽減となります。
繰り返しになりますが、医療制度を全く知らないことで医療従事者は苦しんでいます。全員が知ることで、医療資源が効率化され本当に医療を必要としている人に充てることができます。(それはあなたのご家族かもしれません)
そして、医療費の削減によって私たちの税金もいくらかマシになるでしょう。あなたが、友人や自分の子どもたちに教えてあげてくださいね!

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