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12/2開催【先進セミナー】シリコンバレーから見るECトレンド~買い方の広がりがECを加速する~ イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2021年12月2日(木)に行われたイベント

【先進セミナー】シリコンバレーから見るECトレンド
~買い方の広がりがECを加速する~

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、現在シリコンバレーに駐在している、ドコモ・ベンチャーズの飯野友里恵さんがお話しました。

・コロナの影響で、米国での人々の購買方法はどのように変化したのか?
・米国の注目すべきEC関連のスタートアップとは?

こういったことが気になる方に向けた内容となっていますので、ぜひ読んでみてください!

<ドコモ・ベンチャーズ シリコンバレー支社 Manager 飯野 友里恵氏>

300飯野さん

<プロフィール>
NTTドコモ新卒入社後、docomoのB2Cサービスの企画・開発に携わり
docomoのAIアシスタント「my daiz」やPFM、IoTなどの様々な新規サービス企画を行い、メディアにも多く取り上げられる。
カスタマーサポートに関連したアプリやWEBサイトの改善では部長表彰を受賞。様々な分野の新規事業開発やサービス企画を担当してきた。
現在は北米スタートアップへの投資及びスタートアップとNTTグループの協業創出に従事。
現在はオープンイノベーションでスタートアップとの協業によるサービス企画を担当。
VR/XR、AI、Workinnovation、Entertainmentなどの領域における投資および事業開発を実施しており、スタートアップの技術を組み込んだ映像コンテンツの創出やWEBサイトのスケールアップ、法人等からのSaaSソリューションの販売といった様々な形で協業を実現している。

■シリコンバレー支店からの投資・協業案件

シリコンバレー支店発の直近の投資・ビジネス開発状況でいうと、例えば以下4つのスタートアップが挙げられます。

LEGION…勤怠管理を、AIを用いて効率化するWFM(ワークフォース・マネジメント)のプラットフォームを提供
Otter…AIを用いて議事録を自動生成するシステムを提供
AVATOUR…360度のストリートビューをリアルタイムで配信し、建設現場や観光に用いることが出来るシステムを提供
tellus…介護のモニタリングデバイスを提供

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このように、業界・業態も幅広く協業支援や投資を行っています。

■ECを取り巻く米国の環境変化

1.Whole FoodsがDoor DashやInstacartと提携し、当日の配送を開始

Whole Foodsとは、米国の大手スーパーマーケットで、Door Dashは、日本で言うUber Eatsのようなフードデリバリーサービスのことです。(Door Dashは日本にも進出しています。)またInstacartもDoor Dashと少し似ていますが、スーパーマーケット等実店舗の商品をオンラインから注文し、その商品を実際に店舗内で買い回りをして袋に入れた商品を配送したり、駐車場でピックアップできる「カーブサイドピックアップ」サービスを提供しています。
この3社が提携することによって、Whole Foodsの商品も即日配送、若しくは駐車場でピックアップすることが出来るようになりました。

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2.TikTokがShopifyと提携し、ライブコマースに本格参入

TikTokは今まで、SNSとして一般ユーザーがショートビデオを投稿するサービスでしたが、Shopifyと提携することで、ユーザーがTikTok内にショップを構築し、ライブストリーミングを通じて商品が販売出来るようになります。
日本でも、メルカリが「メルカリSHOPS」で個人のショップを開設できる機能をリリースしたり、弊社の出資先であるパロニム社でもライブコマースが簡単に提供できる機能がリリースされるなどの動きがあります。

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3.米Amazonがカード不要の後払いBNPL決済「Affirm」を導入

クレジットカードで支払わず、Buy Now Pay Later、通称BNPLの決済サービスAffirmをAmazonが導入し、2021年8月から50ドル以上の購入者は分割払いが可能となりました。Affirmを利用すると、購入金額を3ヶ月~48ヶ月の間で分割払いが出来るようになります。
北米EC事業のデータベース、Digital Commerce360によると、TOP1000社の27.1%が後払い決済を導入しており、BNPLの広がりを見せています。

■米国EC業界の進化

コロナ禍の影響により、実店舗とオンライン、それぞれで”新しい買い方”が広まっています。

・実店舗

顧客との接触を最小限化した販売方法が求められ、新たな販売方法を提供。

クイックコマース(デリバリー)
店舗商品をオンラインから注文、自宅まで配送
クイックコマース+カーブサイドピックアップ
店舗商品をオンラインから注文、店舗駐車場でピックアップ
マクドナルドでも導入されている
チャット型コマース
店舗の店員とチャットやビデオ通話をし、商品はオンライン購入
アパレルなど、モノを店員と相談して購入したいときに用いられる

・オンライン

よりスマートフォン利用者が増え、ストリーミングやインフルエンサー動画視聴が増加し、オンライン購入が進む。
ECのモバイルユーザーは、2022年までに全体の15%から73%まで増加する予測。

ライブコマース
インフルエンサーのライブストリーミングから購入
D2C(Direct to Customer)
店舗を介さず、ブランドから直接購入
チャット型マーケティング
マーケティングチャットから購入
米だとSNSで商品を紹介して売買するのが流行っている

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■E-Commerceを取り巻く環境

全世界で見ると、E-Commerceの市場規模は2024年に約638.8兆円と予測されており、売上高は中国が圧倒的に多く、米国、イギリスと続き、日本は第4位の位置付けとなっています。
中国が多いとはなっていますが、E-Commerce技術の輸出入が活発ではないため、この技術の面で見ると、EC業界は米国を中心に動いています。
テクノロジーでは、2011年から2020年にかけて、約50倍以上となる8000のマーケティングテクノロジーが生まれ、近年は特にビデオマーケテイングやチャットによるマーケティングツールが成長しています。
なお、米国のE-Commerce関連スタートアップへの投資動向については、VCがバックにつくE-Commerce関連スタートアップへの投資が世界で40,159件実施され、そのうち4割を米国スタートアップが占めていました。
コロナ前までは毎年投資案件が増加、2020年は減少したものの2021年はコロナ前の水準に戻る勢いで投資が実行されており、EC業界は非常にホットな領域として着目されています。

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■米国のEC関連スタートアップの事例

先程米国EC業界の進化の部分で触れた、新たな販売方法のカテゴリごとに、注目すべき米国のEC関連スタートアップの事例を紹介していただきました。

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・JOKR(2020年、ニューヨーク発)

2020年に設立された、食料品を15分以内に届けるクイックコマースを提供しているスタートアップです。
既に200億円を調達し、1年で250名に従業員を増やしており、非常に急成長しているスタートアップとして注目されています。
食料品に特化しており、オンラインで注文したら、店員がすぐに店舗で買い回りをしてバイクで配送することで時間を短縮し、「15分以内」という速さにこだわっています。

・Firework(2021年、サンフランシスコ発)

自社のWebサイトやオウンドメディア、アプリケーションにライブコマースを埋め込めるプラットフォームを提供するスタートアップで、動画等のコンテンツを管理するCMSも一緒に提供しています。
自社で開発するよりも、安く素早くライブコマースを導入することが出来ます。

・SHOPSHOPS(2016年、ニューヨーク発)

こちらもライブコマースを提供するスタートアップですが、Fireworkのように自社ツールに埋め込むのではなく、SHOPSHOPSのアプリケーション内でライブコマースを展開しています。
SHOPSHOPSが提携している有名ブランドの商品を売ってくれるインフルエンサーを囲い、彼らがテレビショッピングのようにアプリケーション上で一般人向けに商品を販売します。

・Magiclinks(2014年、ロサンゼルス発)

ブランドが売りたい商品とインフルエンサーをマッチングさせ、彼らにYouTubeやTikTok等の各配信媒体で商品を紹介してもらい、そこからどのくらいの人が自社のサイトを訪問して購入したか、の一連の流れを管理するプラットフォームを提供しているスタートアップです。
このツールを利用することで、どのインフルエンサーがどのくらい商品を売り上げたのか一目で分かり、彼らへの報酬を決定したり、素早くマーケティング活動に活かすことが出来ます。

・HERO(2015年、ニューヨーク発)

店舗商品を、店舗スタッフと共にチャットしながら購入するチャットコマースプラットフォームを提供しているスタートアップです。
既にイグジットし、2021年7月にKlarnaにM&Aされています。

・Bolt(2014年、サンフランシスコ発)

ECサイトで、パスワードやユーザー名を使用せずワンクリック決済機能を可能にするプラットフォームを提供するスタートアップです。
Boltに決済情報を入力しておくと、その情報を各ECサイトに連携することが出来ます。
自社のECサイトをBoltと連携させることで、ユーザーはBoltに登録してある決済情報を呼び出すことが出来るため、商品購入の離脱防止が期待できます。

・Route(2019年、ユタ発)

ECサイトで購入した商品の配送補償をするサービスを提供するスタートアップで、購入された商品が配送されるまでのルートをアプリケーション上で可視化し、万が一破損や紛失があった際に、再配送を行うことが可能になります。

・Heap.io(2012年、サンフランシスコ発)

ユーザー分析を行うマーケティングサービスを提供するスタートアップで、カスタマージャーニーを最初から最後まで分析し、離脱ポイントや改善点を抽出して、CV向上に向けた施策を促してくれます。

Q&Aセッション

ここからは、参加者の質問の中から抜粋してご紹介していきます!

Q1.米国ではカスタマー対応でチャットボットが一般的になっていると思うが、今日出てきたチャットコマースのように、店員が一対一で対応しているチャットもあるとのことで、
ボットと店員が対応するチャットをどうやって使い分けているのか?
また、その普及率について聞きたい。


A.米国ではチャットボットがほとんどのサービスで普及している。
家や車などの購入の際もボットが回答することも多い。
ボットで解決しなかった場合は、有人のカスタマーセンターに繋がる。
解決したかどうかの判断はユーザー側が行う。(ユーザーが解決した、と思えばOK)
なので、大体の一般的な相談はチャットボット、より細かい相談は人が対応する、という切り分けになっている。

Q2.クイックコマースを提供するJOKRが、競合が多かったり収益化が難しい中で急成長している理由は?また、収益化は出来るのか?

A.加盟店を増やしている点と、Door Dashでは、依頼を受けた”ダッシャー”と呼ばれる人たちが店舗で商品を買い回りして配送するが、店舗で売り切れ等が発生した場合に都度お客さんに確認して調整しなければならず、時間がかかったりそれが面倒で代替の商品を入れたりとサービスの質の低下が目立つのに対して、JOKRでは加盟店との連携を密にし、在庫状況なども逐次更新するなどして速さを売りにして差別化している。
しかしこのようなフードデリバリーサービスは、大手であっても収益化が出来ておらず赤字が続く状況は変わらなさそうであり、黒字化は課題がある。

Q3.ライブコマースで有名な人はいるのか?どんな人がいるのか?

A.SNSでフォロワーが既に多い状態の人、最近だとバチェラーなど、テレビ番組などに登場していた人、また一般の人でも、フォロワーが多い人等がライブコマースで主に活躍している。

Q4.VR技術を活用したバーチャル店舗など、VRとE-Commerce関連を合わせた動きは米国でどうか?

A.一部、アパレルのスタートアップが試着をVR空間上で行うサービスなどを展開してはいるが、あまり一般の人に浸透はしていない。

まとめ

今回は、シリコンバレーから見た、主に米国のECトレンドについてお話いただきました。

米国では、スーパーマーケットなど小売店舗がオンラインを活用した販売方法に積極的になり、”新たな小売りサービス”を提供し始めていること、オンライン上ではSNSや動画ストリーミングサービスが、E-Commerceプラットフォーマーとしての振る舞いを加速させていることが分かりました。
日本でも、コロナの影響を受けて、フードデリバリーなどが発展してきましたが、スーパーマーケットのオンライン販売化は米国に比べるとまだまだ進んでいないと感じました。
コロナが収束しても、消費者は多数の選択肢から購入方法を選択でき、様々な”買い方”が広がっていくのでしょうね。

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!
引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

次回は、【スタートアップピッチ】「物流・サプライチェーンの注目3社が登場+海外物流トレンド」についてのレポートです!

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