見出し画像

10/28開催【スタートアップアカデミー】「事業をグロースするマーケティングと具体的な広告戦略」イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2021年10月28日に行われた、スタートアップ向けのアカデミーイベントということで、

「事業をグロースするマーケティングと具体的な広告戦略」

についてレポートしていきたいと思います!

今回は、MOLOCO inc. (以下MOLOCO)の日本事業責任者 坂本 達夫氏 (以下坂本さん)にご登壇いただきました。

坂本 達夫氏プロフィール

300坂本

楽天、Google、AppLovin、Smartly.ioを経て、2021年9月よりUS発の広告ソリューションMOLOCOの日本ビジネス統括に就任。
モバイル広告・マーケティングテクノロジーの専門家。
国内中心に45社以上のスタートアップにエンジェル投資を行う。
アプリ・サービスを紹介する深夜番組「ええじゃないか!!」MC。
東京大学経済学部卒業。福岡出身、関西育ち。2児の父。

坂本さんは、現在MOLOCOで日本事業責任者をなさっていますが、上で述べた通り楽天やGoogle、また、今年4月に上場したモバイル動画広告サービスをはじめとするサービスを提供しているAppLovinなど、マーケティングや広告に関わる分野で活躍されてきた経歴があり、同時にエンジェル投資家として投資もされています。MOLOCOは、アプリ向けの広告を主力事業としたアメリカにある現在注目の機械学習系ユニコーンスタートアップです。

今回のイベントはスタートアップ向けのアカデミーイベントということで、スタートアップのマーケティングについてお話を伺いました!

そもそも「マーケティング」と聞くと、広告や販促活動を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、マーケティングは、「もっと広範囲の戦略も含んだ経営に近い活動だ」とおっしゃる坂本さん。
色々な定義はあるものの、「会社や組織が製品・価値・市場を創造し、他者との交換を通して欲しいものを手に入れる制度やプロセス」がマーケティング、とのことです。

それでは、立ち上げ段階、グロース段階にいるスタートアップはどのようなマーケティングをすれば良いのでしょうか?

スタートアップがやるべきマーケティングとは?

スタートアップは、短期間でイノベーションや新しいビジネスモデルを構築し、新しい市場の開拓をしていく必要があります。
そのために資金調達をたびたび行うわけですが、資金調達のフェーズごとに企業価値を上げなければ、ビジネスを達成することはできません。

画像2

坂本さんは、企業価値を上げるために重要なことは、「不確実性を下げること」だとおっしゃっていました。

”こういうサービスをするんだ” というアイデアだけの状態よりも、プロダクトが形になって動いている状態。

ユーザーが獲得できるかわからない状態よりも、実際に使ってくれるユーザーが存在し市場に受け入れられていることが分かった状態。

サービスはうまくいっているが会社がうまく回せるのかわからない状態よりも、採用が機能しており、組織が整備され、健全に動いている状態。

スタートアップにとって、このような不確実性の削減が、会社として取り組んでいく指針だと話されました。

不確実性を下げるために初期段階のスタートアップが目指すべきものは、PMFです。
PMFとは、Product/Market Fitの略で、顧客/市場にプロダクトが受け入れられた、フィットした状態を指します。

画像3

このPMFを達成するために役立つマーケティングのフレームワークとして有名なのが、4P/4Cです。
4Pは、効果的に市場へ商品・サービスを届けるための、企業目線での重要な4つのマーケティング要素です。

製品("P"roduct)
価格("P"rice)
販促/広告("P"romotion)
流通("P"lace)

の頭文字を取ったもので、

何を売るのか
いくらで売るのか
どのように知ってもらうのか
どんな届け方をするのか

ということを考えます。

4Cは、顧客目線での重要な4つのマーケティング要素です。

顧客にとっての価値("C"ustomer Value)
顧客のコスト("C"ost to the Customer)
顧客の利便性("C"onvenience)
顧客とのコミュニケーション("C"ommunication)

に該当し、

何が求められているのか
どれだけのコストならば顧客の理解を得られるか
買いやすいか/使いやすいか
どのような方法で顧客と接点を作るか

ということを考えます。

「マーケティングを行う際には、これらを利用して、自分たちが考えられていなかった漏れをなくすと良い」と話されていました。

スタートアップのマーケティングでやるべき方針やイメージはバッチリわかりましたね!
それでは、具体的にどのようなことを考えて動けば良いのでしょうか?

続いて、坂本さんはシリーズAまでの初期段階のスタートアップが考えるプロモーション戦略の話をされました。

初期段階のスタートアップが行うべきプロモーション戦略

初期段階のスタートアップが行うべきプロモーション戦略にとって、
より確実に、安価に顧客になってくれそうなユーザーとのマッチング効率」を考えることが鍵だと坂本さんは言います。

スタートアップは、事業を行う上で、TAM(Total Addrestable Merget:対象の市場の中で獲得できる可能性のある最大の市場規模)を考えますが、当然ながら考えられる顧客の状態も様々です。
今解決しようとしている課題に気づいていて実際に困っている顧客もいれば、気づいていない顧客もいる、
また、それを今すぐ大金をはたいてでも解決したいと考えている人もいれば、お金がかからなければ解決したい程度に考えている人もいます。

マーケティングで重要なことは、この中で、”より買ってくれそうで、ニーズがありそうで、高いお金を出してでも欲しい” と思っている人を探し当てることです。

それを考える助けになってくれる概念が、「チャネル」と「ファネル」です。

チャネルとは、プロモーションを行う媒体のことで、
簡単に言うと、”どの場所でユーザーにアプローチするのか”ということです。
例えば、YahooやGoogleなどの検索エンジンや、TwitterやInstagramなどのSNS、Youtubeなどの動画、テレビや新聞などです。

画像6

プロモーションを行うチャネルを選ぶには、どういった層、つまりそもそも商品を知らない人なのか、商品は知っていて今一歩購入に踏み切れない人なのか、にアプローチしたいかをベースに考えれば良いと言います。
それでは、このどの層にアプローチすれば良いのでしょうか?
その時に便利な概念がファネルです。

ファネルとは、自分たちのことを何も知らない状態から実際に商品を購入してもらうまでの顧客の心理プロセスを整理したものです。
上から順に、
認知している

興味を持っている

検討している

購入した
というステップで構成されています。
当然、上の段階にいる人を購入まで導く方が、コストがかかるでしょう。

画像7

このファネルの概念を念頭において、どの層の人にどのチャネルでアプローチするべきかを考えてみましょう。

チャネルごとに、どの層にアプローチできるかが異なり、そのアプローチ効率は大きく変わってきます。
検索システムに載せる広告は、ユーザーが検索した単語ごとに広告を打つことができます。つまり会社名や商品名で検索している人を対象にできるので、より下の段階の層にアプローチすることができます。一方で、テレビや新聞は、ファネルの上の段階にいる人を含む多くの人にアプローチすることが出来ます。

一般的に一番効率よく低コストで顧客を獲得できるのが、Googleなどの検索システムに載せる広告になります。GoogleやYahooで検索した際に検索結果の上部に表示される広告ですね。初期段階のスタートアップも、「まずは自分たちのサービス名や、自分たちが提供している商品を検索する人は獲得しよう」と検索エンジンの広告から始めることが多いそうです。
ただ、検索システムに掲載する広告ばかりを長期間続けていると注意が必要で、アプローチできる層が徐々に減っていき、その結果、新しい顧客1人を獲得するコストが高くなってしまったり、そもそも獲得することが出来なくなってしまうそうです。
それを防ぐためには、どこかのタイミングで、サービスをまだ知らない人に知ってもらったり、サービスの名前を知っている人に興味を持ってもらったりと、ファネルの上のステップにいる人にもアプローチすることが必要になります。
「ファネルの下のステップの人にアプローチをしきったので、資金調達を行い、テレビCMを載せて一度もサービスのことを聞いたことがないようなファネルの上にいる層にアプローチをするのも正しい方法です」と、坂本さんは投資した企業を例に挙げて説明されていました。

画像9

どの広告手法を取ればいいの?

「チャネル」と「ファネル」の話は理解出来たと思います。
では、実際どの広告手法を使えばいいのでしょうか?
坂本さんがおすすめされていたのは、Best Practice法とFirst Penguin法どちらも行うことです。

1. Best Practice法
Best Practice法とは、みんながやっている王道のやり方を自分たちも行うことです。
同じ業種の人たちがやっている広告は、上手くいっているため続けられています。そのベストプラクティスを学んでその通りにやれば、そこそこ自分たちも上手く軌道に乗せることが出来ます。
例えば、広告計測ツールを運営しているappsflyerが定期的に出しているレポートで、どの広告が良いかを掲載してくれています。そこに書かれているランキングの上位からやってみるのも良いでしょう。
また、各広告媒体も自社で広告のベストプラクティスをブログやセミナーで発信しています。(例:より魅力的な広告を作成するためのベストプラクティス - facebook)それをその通りにやれば、少なくとも80点は取れると坂本さんは言います。

2. First Penguin法
First Penguin法とは、多くの人がやっていない初めてのことや新しいことにチャレンジすることを指します。坂本さんがおすすめしているのは、直近で伸びているものの、出たばかりなので大手の広告主が参入してきていないプラットフォームに広告を出すことです。
特に日本の一部上場企業などの大手の広告主は、意思決定に時間がかかったり、成功事例の少ない施策を行うことに対するリスクを嫌ったりするため、新しい媒体に広告を掲載し始めるのはプラットフォームが伸びてからしばらく経った後になります。それまでの期間は、掲載数が比較的少なくなり、それに従って掲載料も抑えられるため、安く効果的なプロモーションを行うことが可能となります。

画像8

最後に、坂本さんはやってしまいがちだけどもしてはいけない注意点を話されていました。
それは、メジャーな広告媒体がどこも上手くいかなかった際に、隠れた名媒体を探そうとしてしまう、ということです。
メジャーな広告媒体で上手くいかなかった場合は、一度立ち止まって、自分たちが提供しているサービス内容や価格、広告に利用しているコンテンツなど、それらのいずれかが適切でないと考え、問題点を解決していきましょうとのことでした。

まとめ

今回は、MOLOCOの日本事業責任者の坂本さんからたくさんのマーケティングの考え方を伺うことができました!

・マーケティングは広告や販促活動だけでなく、より広範囲の戦略も含んで考える必要があること
・より確実に、安価に顧客になってくれそうなユーザーとのマッチング効率を考えること
・チャネルとファネルの概念を抑えて、どの層にどうやってアプローチするのかを検討すること
・広告媒体のベストプラクティスや同じ業界のマーケティングのベストプラクティスを参考にしプロモーションを行うこと
・直近で伸びているものの、出たばかりなので大手の広告主が参入してきていないプラットフォームに広告を打つこと

スタートアップの皆さんの中で、もし今回出てきたお話の中身で取り入れられるものがありましたらぜひ試してみてくださいね!

尚、今回のイベントで使用した資料はこちらに掲載しておりますのでぜひご覧ください!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

次回は、「エストニア/ロシア周辺諸国におけるスマートシティトレンド 国家主導で進むスマートシティ戦略について」をお伝えする予定です!乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベント開催情報はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?