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全面核戦争への序章を描いたカナダのテレビドラマ『戦略軍空中指揮機ルッキンググラスへのカウントダウン』(1984年)ギングリッチ元下院議長も本人役で出演


少し前の記事の中でも紹介した『トータルフィアーズ』(2002年)で

核爆弾が起爆する寸前にスーパーボウル開催中のスタジアム(ボルチモア)から脱出した大統領の一行は、大統領専用機(VC-25、ボーイング747-200B改)ではなく、ドゥームズデイ・プレーン(終末の日・審判の日・地球最後の日の飛行機)と呼ばれるナイトウォッチ(E-4B、ボーイング747-200B改)に搭乗しました。

一方、カナダで制作され、アメリカではHBOで、カナダではCTVで1984年10月14日に放映されたテレビドラマ『戦略軍空中指揮機ルッキンググラスへのカウントダウン』(1984年)では、核攻撃に備えてホワイトハウスから退避した大統領の一行は、旧い大統領専用機(VC-137C、ボーイング707改)と同型の要人輸送機・空中指揮所(VC-137A / VC-137B、ボーイング707改)に搭乗し、(戦略軍グローバル作戦センターの姿見・鏡(ミラー)の機能を果たす)空中指揮機ルッキンググラス(EC-135、ボーイングC-135改)が随行します。

退役機

現行機

The President's emergency airborne command post is now taking off from Andrews Air Force Base. Flying high over the United States, it will join another airplane carrying members of the Strategic Air Command. They will attempt to maintain communications with United States forces throughout the world. The code name of the second airplane is Looking Glass.

Countdown to Looking Glass

架空の放送局CVNのニューヨークにあるスタジオ、他を舞台に、全面核戦争への序章(アメリカとソヴィエト連邦の間(艦隊vs潜水艦)で核兵器の応酬が始まり、24時間、上空で待機している戦略軍空中指揮機ルッキンググラスと合流するために、ホワイトハウスから退避した大統領の一行が搭乗した要人輸送機・空中指揮所がアンドルーズ空軍基地から離陸するまで)を描いたカナダで制作されたテレビドラマには、以前の記事

で紹介したアメリカで制作されたテレビドラマ『スペシャル・ブリテン』(1983年)とは異なり、ニュース番組以外の場面も盛り込まれています。

前夜
南米諸国(の国債や国の借入)がデフォルト(元本の返済・利息の支払を停止)。南西アジアで混乱が発生。オマーンでソ連の支援を受けた武装勢力がクーデター。

DAY 1
サウジアラビアにある米国大使館が爆弾テロにあって、米国大使が死亡

DAY 2
サウジアラビアの平和維持のため、ファハド国王の要請により、米国陸海空軍の大規模作戦がサウジアラビアで行われる。
英国を含む多くの同盟国が、この作戦に参加を拒否。
米国は平和維持活動は可能と主張。
これに対して、ソ連傀儡国家オマーンがホルムズ海峡を通過するタンカーに通行税1万ドルを要求。
米国がサウジアラビアから撤退すれば、通行税を撤回するとソ連が主張。

DAY 5
米軍機と、イランもしくはクェートから飛び立ったとみられる不明機が戦闘。米軍偵察機1機がペルシャ湾上空で撃墜。攻撃してきた5機のうち2機を撃墜。不明機は、サウジアラビアが米国軍派遣を要請したことに関してラスタヌラの石油精製施設攻撃に向かう途中だったとみられる。

DAY 6
タンカーの自由通行を守るため、米国大統領は核武装及び通常武装の、空母ニミッツと随伴艦隊をペルシャ湾に派遣。
ソ連は対抗して、ペルシャ湾に潜水艦を派遣。
CVNはマイケル・ボイルをニミッツに派遣

DAY 8
CVNは24時間報道を開始

DAY 9
ホルムズ海峡を通過しようとしたオランダの非武装船を、オマーンのガンボートが攻撃。
CVNは、その付近にソ連攻撃型潜水艦を目撃。
米国では、市民の都市からの避難が始まる。国外旅行を禁止。多くの学校が休校。戦略空軍はB-52を各空港に分散配置。
ホワイトハウスの退避開始
ホルムズ海峡で、オマーンのガンボートが米軍を攻撃したが、米軍に撃沈される。
米国艦隊がソ連潜水艦に爆雷攻撃。最終的に核爆雷を使用。
ソ連潜水艦は、米国艦隊に核魚雷使用。ニミッツが撃沈されたとみられる
米国大統領空中指揮機Looking Glassが大統領・統合参謀本部長などを乗せて離陸。
米国の放送局は緊急放送体制に移行。

忘却からの帰還~Atomic Age
"Countdown to Looking Glass"(カナダCTV 1984年)

また、複数の有識者が本人の役で出演しており、物語の信憑性を高めているようです。

Nancy Dickerson (1927-1997) 米国のニュースキャスター(NBC)
Eric Sevareid (1912-1992) 米国のジャーナリスト(CBS)

Lincoln Bloomfield (1920-2013) MIT教授、外交政策の専門家
Robert Ellsworth (1926-2011) 下院議員(共和党)、NATO常駐代表
Newt Gingrich (1947-) 下院議員(共和党)、後に下院議長
Eugene McCarthy (1916-2005) 下院議員・上院議員(民主党)
Eugene LaRocque (1918-2016) 海軍代将
Paul Warnke (1920-2001) 外交官

忘却からの帰還~Atomic Age
"Countdown to Looking Glass"(カナダCTV 1984年)

今日では旧統一教会の友好団体・関連団体が主催するイベントの常連として知られるニュート・ギングリッチ元下院議長(共和党、当時は下院議員)も自身の役で(低予算のテレビドラマなので、同じ(おそらく自前の)衣装と背景で、DAY 3DAY 9 に)出演され、America First でない意見を述べていらっしゃいます。

2019年10月15日 於(宴会場)ル・パレ
ホテルナゴヤキャッスル(旧ウェスティンナゴヤキャッスル)

2012年の大統領選挙に際してミット・ロムニー(マサチューセッツ州知事)と共和党候補の座を争った元下院議長は、講演料等を受け取りながら旧統一教会をよいしょしている点を除いては、立派な政治家でいらっしゃるのかもしれません。

DAY 3
DAY 9

尚、このテレビドラマはスコット・グレンが(マーキュリー3号でアメリカ人として初めて宇宙空間を飛んだ)アラン・シェパード宇宙飛行士を演じた『ライトスタッフ』(1983年)が公開された翌年の作品ですが、ハリウッド映画で既に大きな役を演じていたスコット・グレンが(重要な役ですが、主役ではない)従軍記者の役で出演していることを書き添えます。

主演はカナダのテレビ界で超大物であったパトリック・ワトソンです。本人の役ではありませんでしたが、本人のような役を演じました。

https://www.cbc.ca/news/entertainment/patrick-watson-dead-1.6509912

日本のテレビ局で放映されたことはなく、VHSもDVDも販売されていませんが、1980年代前半に核戦争に対する脅威が高まっていた証左の一つとして、お時間があれば(自動生成された英語字幕をONにして)YouTube 等でご覧ください。

ターミネーター・シリーズ等の例外はありますが、ヒーロー・ヒロインの活躍で核戦争の危機が回避される小説や映画やドラマが多い中、世紀末ではなかったにも関わらず、1980年代前半のアメリカやイギリスやカナダで次々に重苦しい作品が制作されていたことを記憶にとどめておきたいと思います。





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