バー・ファンタジア?

とある小さな町の片隅に、「バー・ファンタジア」という奇妙な名前のバーがありました。このバーのマスターである山本さんは、ちょっと変わったカクテルを作ることで有名です。常連客たちは、日々新しい驚きを求めてこのバーに通い詰めていました。

ある晩、いつものようにカウンターに座っている常連たちが、山本さんに珍しい注文を出し始めました。

「マスター、今日のおすすめは?」と、メガネをかけたサラリーマンが聞きました。

山本さんはにっこり笑って答えました。「今日は『バナナイカ』がおすすめです。」

「バナナイカ?何それ?バラライカじゃなくて?」と興味津々のサラリーマン。

山本さんはシェイカーを取り出し、バナナリキュールと少量のイカスミを混ぜ、謎の炭酸水を加え、氷とともにシェイクしました。グラスに注がれたカクテルは、不思議な黄色と黒のマーブル模様が浮かび上がっています。

「飲んでみてください。」

サラリーマンが一口飲むと、驚いた顔をして言いました。「おいしい!バナナの甘さとイカスミの塩気が絶妙だ!」

他の常連たちも興味をそそられ、それぞれの好みに合わせて注文を始めました。

「私は『カンパリソーダ』は、やめて『頑張りそうだ』をお願いします」と、若い女性が頼みました。

山本さんは、エナジードリンクとソーダをミックスし、謎の炭酸水を加え、ブルーキュラソーで鮮やかな色をつけました。飲むと、体が元気になるような気がしてきます。

「私は冒険したい気分だから、『ブラッディーマリー』ならぬ『ブラッディカリー』を」と、中年の男が注文しました。

山本さんはトマトジュースにカレー粉を少し加え、さらに謎の炭酸水を加え、ウォッカを混ぜてシェイクしました。カクテルはスパイシーで刺激的な味わいです。

「急場しのぎの急場って書く方の『急場リバー』って名前が面白いから、それをください」と、若いカップルの彼女が言いました。

山本さんは、ラム酒とコーラにミントリキュールを加え、そこに謎の炭酸水も加え、爽やかな風味のカクテルを作り出しました。名前の通り、急なピンチでもリフレッシュできそうな一杯です。

「じゃあ、俺は『まぁ痛い』を『マイタイ』じゃないですよ」と、スポーツマン風の男が笑いながら注文しました。

山本さんは、ジンとトニックウォーターに謎の炭酸水を加え、チリペッパーを少し加えたピリ辛カクテルを作り出しました。飲むと、確かに少し「痛い」感じがする刺激的な味です。

最後に、静かに座っていた年配の紳士が「『レッドアイ』じゃなくて『デッドアイ』を」と頼みました。

山本さんは、濃いエスプレッソにウォッカとカカオリキュールを加え、やはり謎の炭酸水も加え、強い一杯を作り出しました。そこに死んだ魚の目玉を浮かべた。紳士は一口飲むと、目を細めて満足そうにうなずきました。

「なんか懐かしい味だ、子供の頃喜んで飲んだような……。なぁ山本さん、そろそろ教えてくれないか。その……謎の炭酸水の正体を……?」

山本さんは、淡々と口を開いた。
「あの炭酸水は、ファンタです。
これで全体の味を整えるのです。
よく考えてください、あんなに変なものばかり投入して、味が整う訳ないじゃないですか!」

「それにうちは『バー・ファンタジア』ではなく『バー・ファンタアジ』ですよ。お客様方が勝手に読み違えているだけで……」

その晩、「バー・ファンタアジ」には笑い声が絶えず、常連客たちはそれぞれのカクテルを楽しみながら、いつもと変わらない奇妙で素敵な夜を過ごしました。

そして山本さんは、今日も新しいカクテルのアイデアを頭の中で巡らせながら、次の挑戦を楽しみにしていました。ファンタの瓶と共に。

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