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【Interview企画/ちうね先生-Vol.1】アマからプロへ!!漫画家ちうね先生の原動力とは?【学生小委員会】

みなさんこんにちは!土木学会学生小委員会です!
今回からインタビュー企画第三弾となる漫画家のちうね先生・担当編集の門脇拓史さんとのインタビューの様子をお伝えします。
 
 ちうね先生は、『まんがタイムきららキャラット』という月刊誌で『紡ぐ乙女と大正の月つむぐおとめとたいしょうのつき』を2024年2月まで連載されていました。『紡ぐ乙女と大正の月』は、主人公である主人公である女子高生・藤川 紡 ふじかわつむぐが大正時代にタイムスリップし、窮地に陥ったところを助けてもらった令嬢・末延唯月 すえのぶいつきらとともに女学生として生活する日々を描いた作品です!
 第一回となる今回は、ちうね先生の漫画家人生を振り返るとともに、作品に込めた思いを伺いました。意外な経験についても伺うこともできたので、是非読んでみてください!!

『紡ぐ乙女と大正の月』1巻~3巻

ちうね先生の漫画家人生のスタート?

橋本(学生小委員会)
 初めに『まんがタイムきららキャラット』という雑誌で漫画の連載を始めようと思ったキッカケを教えてください。

ちうね先生
 出発点としては、普通に社会人として働いていて、仕事終わりにあまりやることがなくて、趣味で何かやりたいなと思っていた時に、「艦隊これくしょん(注※)」にドはまりしました。その時にファンアートというものがあるのを知って、私も「描いてみよう!」と思ったのがキッカケです。

ちうね先生
 なので、最初は商業誌で連載するなんて思ってもいなかったし、商業誌で連載しようという高い志も一切なかったです。だから、気持ちは今も「インターネットお絵描きマン」だと思ってます(笑)。
 Twitter(現:X)に自分で描いた作品を載せたときにコメントがもらえたことが嬉しくて、コミケに出展してみました。運がいいことに、初めて描いた漫画を見てくださった出版社さんが商業誌で描いてみないかと誘ってくださり、電子雑誌で商業デビューしました。何作か描いているうちに、最終的に現在の担当編集である門脇さんから声をかけていただき『まんがタイムきららキャラット』で連載することになりました。

川端(学生小委員会)
 担当編集さんは、どういう部分に惹かれてちうね先生に声をかけたのでしょうか?

門脇(担当編集)さん
 編集者は、日々即売会などに行って同人誌を読んだり、普通の書店で漫画を読んだりして作家さんを探しています。ちうね先生は、結構かわいい絵柄の作風なのに内容がダークなので、そのギャップが出せる作家さんなら面白い作品を作ってもらえるのではないかなと思い声をかけました。

ちうね先生
 こんな感じで、計画性はなく流れ着くままですね。雑誌で連載して単行本まで出してもらえると思ってなかったので「人生何があるか分からないな~」と思ってます!

※「艦隊これくしょん~艦これ~」は、ユーザー数150万人を突破するゲーム。メディアミックスも展開されている。

大正時代を作品の舞台とした理由とは?

橋本(学生小委員会)
 現在連載されている『紡ぐ乙女と大正の月(注※)』では、主人公が地震をきっかけに今から約100年前の大正時代にタイムスリップするところから物語が始まります。タイムスリップする時代を大正時代に設定した理由を教えてください。

ちうね先生
 門脇さんと作品の内容を決める初回の打ち合わせをしているときに、私が大学で中国史を専攻していた話をしたら、偶然にも門脇さんも大学で日本の平安時代を学んでいたことを知りました。
 野良の歴史学徒は、あまりいないので「あっ、えっ!歴史学科だったんですか!」と盛り上がりました(笑)。

橋本(学生小委員会)
 私たちも土木専攻の学生を見つけると、同じように盛り上がります(笑)。

ちうね先生
 その流れで、歴史を題材にすることになりました。最初の案は、専攻していた中国史を題材にしようと思っていたんですけど、一般的な日本人になじみが薄いことと日本時にも知られている三国志などの時代は既に漫画になっており、調理するのが難しいということで、却下になりました。一般的になじみがあって、現代の日本人が文化や歴史に憧れをもっている時代といったら明治・大正なのかな?と思い、大正時代を題材にしました。

主人公たちが暮らす日常の様子(『紡ぐ乙女と大正の月』1巻総扉より)

※インタビュー時は、連載中でした。2024年4月号で完結しております。

史実を忠実に作品に反映させる理由とは?

宮﨑(学生小委員会)
 私たちが「紡ぐ乙女と大正の月」という作品に興味を持って、インタビューを企画した理由の1つに、題材にしている大正時代の史実が作品の中で細かすぎるほど忠実に再現されていると感じたのですが、そのような作品となった理由はあるのでしょうか?

ちうね先生
 私も門脇さんも歴史を研究していたので、適当に描くことが許されないという思いを持っているのです!
 やっぱり、論文を書く時も適当って絶対あり得ないじゃないですか!

橋本(学生小委員会)
 教授に「参考文献の何を根拠にしているか?」って聞かれるような感じですか?

ちうね先生
 そう!そう!だから逆に、2人とも「ここは想像でやっちゃいましょう!」みたいなイマジネーションで描くことができなくて、調べなくてはいけないので結構苦労しました

どうやって史実を調べているの??

橋本(学生小委員会)
 史実の確認は、2人で行っているのでしょうか?

ちうね先生
 そうですね。主に私が国立国会図書館に行ったり、門脇さんは、国立国会図書館のアーカイブを調べて情報交換するなど二人三脚で調べています。

門脇(担当編集)さん
 初期の頃は、私も国立国会図書館に行って、少女雑誌を印刷して読んだりしてました。集めたけど、使ってない資料もたくさんあります(笑)。この資料は、実際に使ったものです。

ちうね先生
 こういう便利な本がありまして、当時の出来事が年表になっています。なので、次の話で描く予定の月の年表の出来事からお話の内容を決めたりしました。

大正11年の出来事が記された年表
(青木宏一郎『大正ロマン 東京人の楽しみ』中央公論新社、2005より )

橋本(学生小委員会)
 例えば、この資料の3月に書かれているように平和記念東京博覧会を取り上げた日などは、この年表を手掛かりに存在を知ったのでしょうか?

ちうね先生
 そうですね!調べていくと博覧会に出展した食堂の責任者の「俺はこれだけ凄いんだ!」みたいな日記みたいな資料が見つかりました。『今日は、○○人来た』とか『学生が集団見学に来た』などが記されていたので、主人公たちが行ってもいいなと思い、博覧会の回を描きました。

平和記念東京博覧会の様子(『紡ぐ乙女と大正の月』3巻32話より)


ちうね先生
 他にも、当時の資料は探すと案外多く残っているので、大学の図書館で漁ったりしました。その時に百貨店のカタログを見つけて、読んでみたらタピオカが載っていて「えっ~!タピオカ?」となりました。平成から入ってきたものだと思ったのに意外で「これは、是非漫画に取り入れなければ!」と思い、百貨店を扱う回で取り上げました。
 正直、ストーリーを考えるより調べる方が楽しいんです。

大正時代、百貨店で売られていたタピオカ(『紡ぐ乙女と大正の月』2巻17話より)

補足:ちうね先生の調べ方が気になる方は、今回取り上げた2つのお話に関して、ちうね先生の取材記があります。こちらも是非読んでみてください!

歴史好きな理由と歴史の魅力を「伝えられなかった」学生時代の苦い経験…

宮﨑(学生小委員会)
 ちうね先生の歴史に対する熱い思いが伝わってきました。先生は、小さい時から歴史が好きだったのでしょうか?

ちうね先生
 そうですね、歴史を好きになった明確な理由はなくて子供の頃に親とともに大河ドラマ等を見ていたらいつの間にか好きになっていて、学校の図書館で横山光輝の『三国志』とかを読むようになりました。あるとき「日本史より中国史の方が楽しいな!」となり、中国史の本を読んだりしてドはまりしました。
 歴史は、昔は今と違って面白いと思う部分もあるけど、人間はどんな時代でもどんな文化でも根本は変わらないなって思えるところが面白くて、大学でも民衆の考え、文化、芸術などの社会史を学びました。なので、作品でも政治などではなく、人々の暮らし方に焦点を当てています。歴史を敬遠している人は、歴史を武将や政治家の名前を暗記するものだと思っている人が多いですよね。

橋本(学生小委員会)
 私もそういうのは苦手ですね……

ちうね先生
 そうですよね。歴史を暗記ゲームと思っている人でも、自分たちの日常に近い内容を描くことで面白いって思ってもらえるのではないかなって思ってます。『紡ぐ乙女と大正の月』では、身近に思える文化を題材にしているので、この作品を見て歴史に興味を持ってもらえたとしたら、それが一番うれしいですね。

橋本(学生小委員会)
 作品よりも歴史を好きになるほうが嬉しいのですか?

ちうね先生
 当然作品にハマってもらえるのも嬉しいですが、さらに歴史に興味も持って調べてみようと思ってくれる方が個人的には、嬉しいですね。
 やっぱり、歴史好きな人って少なくて、小中学生の時、友人に「○○がこうなっていて面白いと思ったの!」と、歴史の話をしても「何それ?」って感じで盛り上がらなかったみたいな経験もしているので、この作品が歴史好きの人口拡大に寄与しているのであれば、それは喜ばしいことだなって思いますね。

感想

 ちうね先生が歴史に忠実にこだわった作品を連載することとなった経緯や子供時代の体験が、多くの人に歴史の魅力を伝えたいという思いを生むと同時に、作品の魅力の一因となっていると感じました。伝えるという意味では、土木業界・学会は、発信に課題が多いと指摘されていますが、①誰かがではなく、「私」自身が自らの経験を踏まえて、心に残った(刺さった)点を伝えること、②受け手がどう感じるかを踏まえて表現すること、この2点がその分野を好きになってくれる人を増やす秘訣なのかなと感じました。私も勉強としての歴史は非常に苦手ですが、この作品を通じて当時の文化(歴史)を楽しく知ることができ、歴史もいいかな?と思うようになってきました(笑)。
 具体的な伝え方の方法・技術については、碓氷峠を事例として次回の記事で紹介していきます!次回もぜひ読んでください!!!

ちうね先生(中央)、編集者:門脇さん(左から2番目)、学生小委員会のメンバーでの記念写真!

<謝辞>

今回私達のインタビューのために貴重なお時間を頂戴しました
ちうね先生
担当編集 門脇 拓史 様
には厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

<取材チーム>

学生小委員会
東洋大学 宮﨑康平
東京大学 橋本拓幸
東洋大学 川端浩平
2024年1月12日 『土木学会応接室』にて

<メンバー随時募集中!>

「インタビューを通して、直接話を聞いてみて考えを巡らせたい!」「インタビューしたい相手がいる!」という学生は、是非とも学生小委員会に参加し、私たちとともにいろいろな方へインタビューに行きましょう!その他さまざまな企画も進行中です!