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4)主人の言葉「炭礦長 家族を頼みます」という言葉を残して警備についた

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貨物列車での逃避行

貨物列車でも屋根の中ですから眠りました。翌日停車した駅で〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇(※判読できず)等と云われて、心細い事。でもまだ軍の列車があったので便乗を許されて今まで同行した人達も分かれて満炭社員家族だけになりました。

図門に着いて行先未定の爲、〇(※判読できず)暗闇の階段を〇(※判読できず)子供を失うまいとのみ念じて昇り降りしました。よくあれ丈の力が出たものと自分でも感心したものです。何にも持ってなかったが夜の冷え込みは経験ずみですからベビ毛布だけは各自の分を持って出て居たので体に巻き付けてやり立ち眠りしてゐました。

日系だけが仲々汽車を割り当てて貰えずヂリヂリしてゐましたが、ここで悲報を聞きました。老黒山で米の配給所をしてゐた人達や警察隊の家族其の他商事関係、自由業の人達の一隊がおそわれたと云う事です。満鉄関係の人は汽車を(我々満炭割り当ての汽車まで)自分達や利益関係の〇(※判読できず)い人達で先に逃げ、米も八月分の配給分を皆持って行ってしまったのでした。

平常時は美旬を並べてゐても切迫つまった時は我身の事だけしか考えない人間の心の汚さを見せつけられて、最后になった我々の隊でしたが、襲撃されたと聞くと心配でどうか助かってゐて慾しいと念じました。一部の人は河を徒歩で渡ってゐたとも聞きましたが、其の后どうなったのか全くわかりません。

漸く汽車に乗れた時の嬉しさ。安心して眠りました。そして吉林駅に着いた時です。今 日本軍はソ連のエコライエフスクえ攻め込んだのだ いや違う等 何を信じてよいのか全くわからなくなりました。
とに角 新京本社え着く事を考えるだけです。

止まった列車

一両全部同じ社員と家族ですから安らぎがあります。病人が出ても皆で持ち合わせの薬を出し合ったり 私は乳児のオムツだけ沢山持ってゐた 〇〇(※判読できず)途中で出発を急いで干したまま忘れて来たりしましたが、でもそれで下痢の女児の手当てが出来たり どの辺か地名は分かりませんが駅でない変な所で汽車が止まってしまったのです。

どうしたのかと思ってゐたら、二百人位の民に囲まれてしまったとの事。もう此処で死ぬのかなと思いました。

安達さんと云う剣道をやる方と主人が日本刀を抜刀して(主人は柔道)守りに着き、別の車両に軽機関銃二丁を持った兵隊さんとがそれぞれの守りにつきました。

主人が守りに着く時 炭礦長 家族を頼みます と云った言葉が今でもはっきりと耳の底に残ってゐます。

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