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5)新京へ辿り着く

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列車での攻防

乳児を連れてゐたのは私だけ。
子供を泣かすな、と云われて必死になってゐるのですがお乳が出ません。出ない乳房を吸う子。ひしひしと身に迫る危機。

あなたのご主人は、死を覚悟して行ったな。皆で家族を守らねば。

と云って下さる。
桑野炭礦長の言葉によけい泣かされました。
でも、死ぬ時は、皆一緒だからな。落ちついて。と励まして居られました。長い長い時間の様でした。実際には どれ位だかわかりませんが、汽車が動き出した時、生きてゐる!! 何とも云えない感銘を受けました。

軽機銃と日本刀で構える一方 お金を出し合って満人の機関手に金を握らせて発車させる事に成功したのだと 後で聞きました。裏工作が素早くされてゐたのですね。

新京へ到着

新京が近いと云う声、新京が焼えてゐる、何だろう 新京が近い喜びと不安とでじっとして居られない。皆がそわそわと動き出しました。
新京駅に着いたら駅の人が飛んで来て、あぁ、よかった 汽車が止まって〇(※判読できず)貴方達が第一陣ですよ。どこから来たか等と親切に子供を抱いて〇〇(※判読できず)を変わって下さった。嬉しくて嬉しくて甦生と云う事を強く感じました。

駅には武装解除された国軍の兵と隣り合わせに坐り込んでしまいました。
駅の前の道路には、日本軍の戦車が走り廻ってゐました。頼もしく思ったものです。

それから疲れた足を引きずり乍ら本社え。本社で割り当てられた部屋に入って、日本は降伏したのだ 戦争はもう了ったのだと始めて聞かされましたが、今見て来た 走り廻ってゐた戦車。武装した日本兵 信じられませんでした。

新京の焼き打ちは其の晩も續いてゐました。この日が16日か17日か定かでありません。

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