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映画「オッペンハイマー」を観たんです

*ネタバレ入ってます

◆作品賞 ◆監督賞 (クリストファー・ノーラン)◆主演男優賞 (キリアン・マーフィ)◆助演男優賞 (ロバート・ダウニー・ジュニア)◆撮影賞(ホイテ・ヴァン・ホイテマ)◆編集賞(ジェニファー・レイム)◆作曲賞(ルドウィグ・ゴランソン)

アカデミー賞7冠

映画「オッペンハイマー」

を観てまいりました。

オフィシャルサイトから


意外だった!
音響関係受賞しなかったんだ…。

ワタクシの一番印象深かったのが

音響

だったもので…。

だって、あんなにも冒頭から
ある意味わかりやすいほど

オッペンハイマーの苦悩を
音で表現していた

じゃないですか…

わかりやす過ぎたのかな?もしかして…。

かなり個人的には追い込まれたんですけどね…。音によってね。

クリス・ノーラン

だから〜とか

原爆で物理的

だから〜とか

歴史的

に〜とか言って

難しい

って感想も多いですが…。


そんな時のために、登場人物の部分でしっかり説明してれているNoteを発見!
すごいわかりやすいです。オススメ。⇩


あと背景としてココを押さえとけばってのがコレ。

オフィシャルサイトから

構造として、

原爆制作の行程を描いてる部分

②1954年、赤狩りの一環としてオッペンハイマーがスパイ容疑で追い込まれる部分

③1959年、その事件の首謀者ストローズの公聴会の部分

この3つが交差する感じで描かれてるから、確かにややこしい

でも、

オッペンハイマーが原爆制作当時のことを話す必要があって思い出すと同時に原爆がもたらした惨状を思い出して、
苦悩する。
コレがポイントだと思うわけ。

その苦悩の様子が、予告篇にも出てくる彼の度アップと、激しい激しい音響で
何回も何回も描かれる

しかし、広島長崎の惨状は映像としては描かれていない

そこがさ、

尚更、恐怖感を出してる


と思うのだけれど、

それは日本人だから?なのかもしれない。もしかしたら、広島長崎を映像や写真で見た事のない外国人には伝わり切ったのかどうかは疑問かな。伝わっているけれど、日本人には倍増ってのが正解かもしれない。(広島長崎も知らない日本人、特に若者がいるかもだけれど。)

広島長崎を出さなかった事をクリス・ノーラン監督はインタビューで語っている。⇩

米公開時から批判の声も上がっていたその判断について、ノーラン監督は「この映画はオッペンハイマーの体験を主観的に描いている。それに厳格に固執することが、常にわたしの意図だった。オッペンハイマーは原爆投下について、世界の人々が知ったのと同じタイミングで知った」とVarietyに説明。「わたしは、自身の行動の意図せぬ結果をより明確に理解し始める人物を見せたかった。わたしが見せたものと同様に、見せなかったものも重要なんだ」と続けている。

シネマトゥデイから

ここまで書いて思った。

やっぱり上手い、上手いよ。


オッペンハイマーって、女好きで浮気もするような不誠実な男だけれど、

精神的に参ってた元婚約者が死んだ事を告げられると、自分が助けられなかったって落ち込みまくるような人なわけ。(実際、元婚約者が死んだら落ち込むだろう け れ ど も。)


自分には妻も子供もいるわけ。もう既に別れた後なのに会いに行っちゃうんだけどさ。


要は

数万人を原爆で殺す事になる


のに、身近な人が死んだら「助けられなかった」と落ち込んじゃうわけです。

最初は対比?って思ったんですが、彼女の死は、彼に人の死を実感させるきっかけになったのかもしれない。

それこそ、広島長崎の後に、既に後悔している中、トルーマン大統領との面会シーンで、大統領に

「原爆投下で非難されるのはわたしであり、あなたではない」

って言わせて、

「あんな泣き虫を二度と呼ぶな」

って言われちゃうわけです。


繋がってる。
全部が繋がってる。


オッペンハイマーは
理論物理学者です。


Wikipediaから


彼が学生時代から実験は苦手。

数理的手段で研究分析した原爆が実現するのかどうかを

戦争という時代に

政府のお金と権力と大勢の人々を使って

研究分析しているのです。


だから、自分の理論研究が実現して出来上がった時、

大喜びした。

でも、使われる前に使ったら

どうなるか?をどれだけ考えてていたか…。


何千人とか数万人とか、水爆だと大き過ぎて日本には適当な街はないとか言っているけれど、

それが何を意味しているのか?

多分、いつものように机上の数字としてしか

わかっていなかったのでは?

とも思えた。


だから、実際の惨状を知った時、

後悔し始める。


バカなの?

って気がしないでもないが、それも今だから思う事。

それも天才に言うことじゃないけれどね。

何しろ

戦争中。

戦争を終わらせたい。


映画の中でドイツにも使いたかったって誰かが言っているけれど。


彼や他の科学者たちが、原爆実験が成功し、

実際に使用されたらどうなるかを理解していたとしても止めることなどできない状況

ということだろう。


今でも、ウクライナやイスラエルとか戦争が絶えない地域の人の中には、

早く終わってほしい、使って。

と思ってしまう人がいてもおかしくない。


しかし、それを世界中で踏みとどまっているのは周知の事実。

世界を壊さないため。


“Now, I am become Death, the destroyer of worlds.”

インドの聖典「バガバッド・ギー ター」の中の言葉「我は死なり、世界の破壊者なり」という言葉で、原爆実験が行われた時にオッペンハイマーが思い出した言葉だそうだ。

(どうしてインドの聖典って思うけれど、彼はサンスクリット語も勉強しているシーンが出てくる。そう、繋がってる。)


オッペンハイマーの後悔は一生続いたに違いない。


でも、その結果を完成前から知っていた人がただひとりいた。


同じく理論物理学者であり、「20世紀最高の物理学者」と称賛される天才

アルベルト・アインシュタイン。


今回、アインシュタインを演じた俳優・トム・コンティのインタビューが紹介されていた。⇩ 彼もまた後悔を背負った天才だったのでしょう。


アインシュタインオッペンハイマーが話すシーンは3つ。正確には4つだけれど(最後は回想シーンだから)。


アインシュタインはオッペンハイマーに成し遂げた成功に対する責任と未来を示唆している。

そのシーンの会話の内容は、原作となる伝記や他の書物にも出て来ず、ノーラン監督の創作とも言われているけれど、その出典を探したけれど、見つからず。

それはノーラン監督から観客へのメッセージだったのでは?と思うのは間違いだろうか?


オッペンハイマーは天才であるけれど、普通の人だと思う。

しかし、強い人でもある。


1967年、彼は62歳の時咽頭癌で亡くなっている。

1945年から22年間。どれほど彼は苦しんだのだろうか…。原爆開発への懺悔と苦悩だけでなく、

水爆開発に反対して、公職追放された後は私生活も常にFBIの監視下におかれるなど、生涯にわたって抑圧され続けた。

Wikipediaより

と言う。


彼の苦悩と懺悔の大きさが本作においては、キリアン・マーフィーのアップの演技と心理を表す音響により十分なまでに表現されていたと思う。


彼が成し遂げた功績による重さは、計り知れないほど重かったと感じた。


ワタクシは途中から、その重さに吐きそうになった程でした。凡人には耐えられない。


最後にクリストファー・ノーラン監督が、映画『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督の対談ビデオがあったので、リンクを貼っておきます。




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