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台湾周遊 1

二週間があっという間に過ぎた。
記憶に記憶が重なるように次から次へ。
回想に耽っている暇もなく、ただ前に進むような突き動かされるような、旅。

出発前、二週間は長いだろうと思っていた。

鉄窓花?洗い出しのコンクリートの建築?街並み
日本語を話す民族…クレオール…?
よく知りもしない単語を詰め込んだ。

ザックには替のパンツとTシャツ短パンを一着、 タオル、台湾建築の本と深夜特急にカメラとレンズを詰め込んだ。一眼だけが重く他が軽いのでバランスが悪い。

成田から桃園国際空港へ。
海外、といっても3時間で着いてしまう。

入出国の手続きはあるものの
ちょっとそこまで、の海外だ。
無事に乗り込み座席へ座り
窓から見えるマーシャラーたちを側目に離陸した。


✈️✈️✈️

飛行機は着陸体制に入る、というアナウンスで起きた。すっかり眠っていたらしい。

まだ夢うつつの状態でフラフラと出国ゲートへ向かう。

中国人、多いなあ

30分くらい列に並んでスタンプが押された。

ひとまず携帯SIMを交換して、現金だよな。流れに巻き込まれるように列に並んだ。

国泰銀行のATMの口にクレカを流し込む。



画面にはエラーの文字。


は?

何度やっても、出金額を変えてみてもダメ

現金なきゃ..どうすんだ?


クレカが使えるとはいえ夜市や田舎の方に行けば現金しか使えない。

現金のみの旅など面白いはずもない。

だって使えるのはせいぜいコンビニと観光客向けのぼったくりの飯屋しかないんだろ?

夜市行ってみたい。観光客が行かないようなうまい店を発掘したい。

のはずだった。

頭がグルグルした。

どうしよう。

深い闇の中にスーッと沈み込んでいくような絶望感。
とりあえずは手元にあるなけなしの日本円を台湾ドルへ替えて、台北までの切符を買う。

ずっと空港でウダウダしているわけにも行かないので、前もって予約した宿へと向かうことにした。

———

しかし、台北で現金が引き出せないことに気づき、前もって予約してやっと辿り着いた宿だったが支払いは現金オンリー。

え、カード使えないの?

No,cash only.

キャンセルはできず女将もウーンと困った顔。
誰かに電話をかけて何か交渉のようなものをしてみるがダメだったらしい。

宿は一泊2000円、財布の中身は3000円。
残りの二週間は?どうするんだ?

どうしようね…
宿の女将と一緒にしばらく虚空を眺めていた。

台北の空、
このあとめちゃくちゃ雨降った。



ひとりの風呂上がりの男が私に声をかけた。

「どうしたの?」 

「!!!!!!!!」

日本語だった。

藁にもすがる思いで事情を説明した。

私は今すぐに彼の口座に送金できる。
そのお金を彼がATMで出金すれば彼の手持ちが減らなくてすむんだ。どうかお願いします。

話がついた。セブンイレブンへ2人で向かい
札束を手に取って叫んだ。

現金!!!!

ほっとした、旅が続けられる。
“前途ターナン”が頭に浮かんでは消え浮かんでは消えた。

手にしたのは10,000元。
日本円にして40000円である。 

世界が変わる感覚。
胸がスッと腫れるような思いがした。

旅ができる喜び、安堵。

でも毎回こういうのなのは少し勘弁してほしい。

こんばんは、台湾。

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