見出し画像

追加投資|Hubble:契約業務を滑らかに

DNX Venturesは、株式会社Hubble(以下、Hubble)のシリーズAラウンドに、リード投資家として出資させて頂きました。本ラウンドでは、既存投資家であるArchetype Ventures, Money Forwardにご出資頂いたことに加えて、新規投資家としてSalesforce Venturesにもご出資頂きました。Hubbleは、企業向けに契約書の作成・管理を誰もが簡単に行えるソフトウェアを提供するSaaSスタートアップです。2019年にシード投資をさせて頂いて以来、Hubbleはスタートアップ中心にシェアを広げ、驚異的に低いチャーンレートを実現しています。本稿では、契約書管理というどの企業も避けては通れない業務に関するトレンドと、我々DNX Venturesがリード投資家として調達をリードするに至った背景について、触れてみたいと思います。


契約書管理という概念

Hubbleがサービスを提供する契約書管理という領域ですが、英語ではContract Lifecycle Managementという呼び名で注目され始めており、既に米国では同分野のユニコーンも出ています。そもそも契約書は自社が取引先を含めて「誰と」「何を」「いつ」「どのように」合意したのかを表す意味で、企業と企業同士の合意事項の証拠という性質を持つ為、契約書管理は全ての企業が避けては通れない領域です。しかしながら、業務上必要な専門性の高さも相まって業務フローの工数が多くなってしまい、結果として契約書締結まで膨大な時間がかかり、締結した契約書も適切に保管・共有されないといった課題が企業の中で存在しています。読者の方も、契約書作成時に自社の法務部門やカウンターパートと何度も契約書のやり取りを行ったご経験や、前の担当者が作成した契約書の引き継ぎなどが適切にされずに、カウンターパートとまた一から交渉するといったご経験もあるのではないでしょうか。

そのような業務上の課題がある中で生まれた概念が契約書管理です。契約書管理のソフトウェアベンダーとして最大手の米国Icertis社によると、契約書管理の業務ステップは以下のような形で分けられます。

  • Template Authoring(雛形作成)

  •  Contract Creation(実契約書作成)

  • Contract Review(レビュー・交渉)

  • Contract Approval(承認)

  • Contract Execution(締結)

  • Contract Performance(保管・運用)

  • Contract Expiry(失効・リニューアル)

これらの業務ステップの中で、特にContract Execution(締結)のステップはDocuSignやクラウドサインのような電子署名アプリケーションが早くから台頭していた中で、さらにコロナが追い風となったこともあり、SaaSによる業務効率化が進みました。また、その他ステップにおいても、Legal Techアプリケーションの浸透によって効率化が一定程度進んでいますが、契約書管理プロセス全体を通じて業務効率化の余地は依然多いと考えています。

Hubbleとは?

Hubbleはこのような契約書管理領域の中でも、特に契約書作成及び契約書保管・運用部分にフォーカスしたSaaSプレイヤーです。Hubbleを使うとユーザー企業はHubbleのプラットフォーム上で契約書作成を行うことで、例えば事業部-法務部間で誰がいつどのようなコメントを追加・修正したのかがリアルタイムでわかります。また、クラウドサインのような電子署名アプリケーションやMicrosoft365や Google WorkspaceのようなドキュメントアプリケーションともAPIで連携しているので、ユーザー企業はこれまで使っていたアプリケーションを変えることなく、契約書管理にまつわる業務効率化を進めることができます。

次の章では、このHubbleへの追加投資に至った背景について、お話したいと思います。


今回の投資によせて

2018年のシード投資以降、Hubbleはあらゆる面で目覚ましい成長を遂げてきましたが、我々が伴走させて頂く中で見てきたHubbleの成長の一部をここでは少しお伝えしたいと思います。


1) 経営陣の強力なリーダーシップ・組織構築力

2019年に出資頂いた際には数名しかいなかったHubbleのチームですが、現在では20名弱まで規模を拡大しています。弊社DNXが提供するインキュベーションオフィス・コミュニティ「SPROUND」で日々Hubbleメンバーとコミュニケーションを取る中で、メンバー同士の固い結束・お互いをリスペクトする強いカルチャーを感じる機会は多く、ここまで強い組織を作れているのは早川CEO・藤井CTO・酒井CLOの強力なリーダーシップによるものだと思います。

2)顧客に向き合う圧倒的なプロダクト開発力

2018年のプロダクトリリース以降、Hubbleの顧客エンゲージメントは非常に高く、結果としてスタートアップ・エンタープライズ問わずに様々な顧客企業にHubbleを継続して利用頂いています。機能面では、直近ではGoogle Docsとの連携などをリリースしていますが、いずれの機能も顧客からの反響が高く、顧客のニーズから逆算してプロダクトに向き合うHubbleのマインドセットは今後も素晴らしいプロダクトを開発し続けられるだろうと感じています

3)長期的なビジョン

スタートアップの事業戦略構築を登山に例えると、契約書管理領域はカバーする領域が広い反面、様々なサブセグメント・ソリューションが考えられる領域なので、山の登り方も千差万別です。「契約書管理におけるコミュニケーションを滑らかに」という早川CEOのビジョンとこれまでのプロダクト開発は、契約書管理という山を登るにあたって最も高みを目指すことができる山の登り方の一つであり、早川CEOを筆頭にしたHubbleという強力な組織は必ずそれらの山を登り切ることができるであろうと確信しており、Hubbleのプロダクトの未来に我々も大いに期待しています。

CEO早川さんからのコメント

シードに引き続き、シリーズAでも投資いただけて本当に嬉しく思っています。SPROUNDなどでお話しする中、DNXの皆さんはOne of themではなく、Only OneでHubbleを応援してくれます。それがいつも嬉しく、心強いです。DNXの一貫した「強烈なファンを作れ」というメッセージは、Hubbleらしさそのものです。
今回の資金調達で、更なる事業成長、ユーザー体験を大切に細部までこだわったプロダクト開発、Hubbleらしいカルチャーの醸成に投資していきます。
—— 株式会社Hubble 代表取締役 早川晋平

メディア掲載

本日プレスリリースの配信に合わせ、複数のメディアでHubbleの資金調達について記事で取り上げていただきました。ぜひ合わせてご覧ください。


契約書という概念は歴史も長く、ビジネスの根幹を成すコンポーネントであるが故に業務フローも中々変えにくい領域ではありますが、SaaSにより新たに再定義された契約書業務は欧米中心に広がり始めており、日本でも遠くない将来に契約書管理という概念の名の下に新たな契約書業務のモデルが普及すると考えています。今後Hubbleがプロダクトをより広くの顧客に届け、プロダクトを進化させることで、ユーザーの生産性が向上することによって日本企業の競争力が高まり、最終的に日本の産業競争力をより強くしてくれることを心から期待しています。我々DNX Venturesも、Hubbleのビジョンの実現に向けて、今後も力強く支援していきたいと思います。



(文:小澤 祐介/編集:上野 なつみ)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?