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追加投資|RESTAR:不動産業界向けデータベース

DNX Venturesは、RESTAR株式会社(以下、RESTAR)のシリーズAラウンドに、リード投資家として出資させて頂きました。RESTARは、不動産売買に関わる企業向けに商業用不動産データベースを提供するSaaSスタートアップです。2019年にシード投資をさせて頂いて以来、RESTARは優れたプロダクトを開発し、不動産投資ファンドやデベロッパー中心にシェアを広げ、驚異的な成長率でマーケットシェアを広げています。本稿では、不動産業界という身近な業界をSaaSという観点から考察すると共に、我々DNX Venturesがリード投資家として調達をリードするに至った背景について、触れてみたいと思います。


不動産市場とペインポイント

RESTARがサービスを提供する収益不動産という市場は巨大市場ですが、一口に不動産と言っても以下のように様々なセグメントがあり、またステークホルダーも多いことから業界としてのペインポイントは多く、依然効率化の余地は大きい市場です。

B2C領域では、物件を探す際にアプリやWebサイトを使うことが今では当たり前になりましたが、B2B領域では物件の仕入れから管理・運用まで非効率なプロセスは依然多いのが実態となっています。

RESTARはB2B領域の中でも特にCRE(商業用不動産)の売買領域にフォーカスしていますが、同領域は基本的には企業間での取引が多く、エクセルによる情報管理やオフラインでのコミュニケーションが依然として主流です。例えば不動産情報の管理に関しては、様々なデータベースから情報を引っ張ってきた上でエクセルにまとめ、何かあれば都度Updateするといった俗人的なワークフローになっており、SaaSによる業務効率化の余地は依然多いと考えています。


RESTARとは?

RESTARはこのような不動産領域の中で、デベロッパーや投資ファンドを中心に投資時に必要となる不動産データベース”REMETIS”を提供するSaaSプレイヤーです。

REMETISを使うとユーザー企業はREMETISのプラットフォーム上で投資時に必要となる不動産・地理情報にアクセスすることができ、従来時間を要していた分析資料の作成等もプラットフォーム上で時間をかけずに行うことができます。また、案件のソーシング元や担当者情報含めて案件情報を蓄積することで自社独自の不動産データベースを作成することで、自社独自の案件情報を低いコストで整備することができます。

これまでの不動産取引においては、分散しており、かつ歯抜けのようになっている公開データを手動でかきあつめて纏めることしかできておらず、企業情報におけるSPEEDAやBloombergのようなサービスがありませんでしたが、REMETISを利用することにより、ユーザーはワンストップでの情報収集を実現することができます。また、道を一つ挟むだけでも取引価格が大きく変わる不動産業界において、案件情報を地図上にプロットできることはより高速・正確に判断をする上で大変に役立っています。

中小規模の不動産会社であっても、取り組み対象でない案件を含めると、年間数千の物件情報が集まります。実際に、こういったデータ整備や収集は、若手が汗をかいて行ったり、専門の入力部隊を抱える会社もあれば、放置してしまっている会社も多いですが、REMETISを導入することにより自社の持つ非公開情報も検索可能な形で保有することが可能です。

次の章では、RESTARへの追加投資に至った背景について、お話したいと思います。


今回の投資によせて

我々が伴走させて頂く中で見てきたRESTARの成長の一部を少しお伝えしたいと思います。

1) チームの強い経験

DNXではアンドパッドやカケハシといった業界特化型のインダストリーSaaSに複数社投資を行ってきていますが、業界特化型のインダストリーSaaSにおいては第一に業界に対する深い知見と共感を持っている経営陣と、SaaSプロダクトに馴染みがない業界でもユーザーに使ってもらえるような高い開発力が不可欠です。

元々右納CEOと横田CTOで創業したRESTARですが、右納CEOは不動産ファンドで不動産売買の投資業務経験を持ち、横田CTOは大学院在学中にAIの研究に従事していた経験を持っています。まさに右納CEOが不動産ファンドに在籍していた時に「こういうプロダクトがあったら」という想いをベースに開発されたのがREMETISであり、実際顧客エンゲージメントは非常に高く、不動産業界のお客様に継続して利用頂いています。

2) インダストリーSaaSとしての巨大な市場ポテンシャル

先日リリースしたnote記事“インダストリーSaaS企業のFintech戦略について”でも触れた点ですが、近年海外のインダストリーSaaSはToastやService Titanに代表されるように、様々な追加プロダクトをLaunchすることでRevenueポイントを重層化する戦略を取っています。不動産市場は前述のように関与するステークホルダーが多く、業界特有の商慣習もあるので、RESTARは今後様々な機能・プロダクトを開発することで市場を広げていくポテンシャルがあると考えています。

3) これまでのトラクション

RESTARは強いFounder Market Fitを強みとして芯を食ったサービスを初期から提供しており、急激な速度で顧客を獲得しており、既に不動産売買に関わるプレーヤーは大手から中堅企業まで多岐にわたる顧客がREMETISを使っています。チャーンレートも驚異的な数字な数字を示している中、短期間で急激な成長を遂げており、今後不動産領域におけるインダストリーSaaSのリーディングプレーヤーになることを期待しています。


右納CEOからのコメント

今後のビジネス及びチームの拡大に向けて、DNX Venturesの皆様からの強力なコミットメントをいただけたことを大変心強く思います。今回の資金により、顧客及び事業ドメインに今まで以上に大きなインパクトを与えられるプロダクト開発を推進いたします。また、今まで以上にチームの規模及び多様性といったケイパビリティ拡大も進め、対象市場の拡大を図って参ります。

—— RESTAR株式会社代表取締役 右納響

不動産領域はソフトウェアによる効率化が進んでいる領域の一つではあるものの、アメリカや中国に比べるとまだまだ効率化の余地は大きく、日本でも不動産取引の為のソフトウェア活用はより進んでいくと考えています。今後RESTARがプロダクトを進化させることで、不動産取引に関わるプレーヤーの生産性が向上し、日本の不動産取引がより活発になることを心から期待しています。我々DNX Venturesとしても、今後もRESTARを全力で支援していきたいと思います。


(文:小澤 祐介)

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