見出し画像

株式会社オーに聞く、「体内時計」から考える“従業員エンゲージメント”

新しいシリーズをはじめます!
DNXの投資先スタートアップが向き合う社会課題と、課題を克服するべく提供するソリューション、そしてそのソリューションを導入した企業にはどのような変化がうまれているのか。私たちDNXが投資を通じて応援したいと、つよく可能性を感じている投資先の数々。彼らの取り組みを紹介するべく、スタートアップCEOの生のプレゼンテーションをお届けしていきます。


初回テーマは「従業員エンゲージメント」

はじめの3回は、「従業員エンゲージメント」を切り口に、3つの投資先を紹介します。

「従業員エンゲージメント」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
「働き方改革」であれば、馴染みがあるかもしれません。

ここ数年多くの企業が取り組んできた“働き方改革”。そのブームで様々な制度が導入され、働き方に変化が生まれた結果、企業は従業員のコミットやパフォーマンスの最大化が求められています。“従業員のエンゲージメント”を醸成するための取り組みは、いよいよブームではなく本質的に求められる時期に差し掛かっているようなのです。

そこで今回は、「体内時計・睡眠」をキーワードに、株式会社オーが様々な企業の働く環境や人事政策の現状に触れながら向き合ってきた課題と取り組み事例を紹介しながら、“従業員のエンゲージメント”の実現へのアプローチについて話を聞きました。(本記事は、11月5日にBaseQにて開催したイベント「組織を強くする“従業員エンゲージメント」の登壇内容をベースに作成したものです)

画像1

パーソナライズされたマネジメントの時代がやってくる?

弊社オーは、従業員向けの体内時計・睡眠を支援するスマートフォンアプリと、「チームを強化するアクションを実効できる」ダッシュボードを展開しています。

体内時計や睡眠というと、その改善を支援するようなイメージがあるかと思いますが、弊社で一番企業様の課題解決に貢献しているのは、「チーム強化やマネージャー育成」に関してです。

マネージャー育成のために、多くの企業様の中で研修プログラムなどが体系化されているかと思います。ところが、人事ご担当者とお話をしていると、「それだけではなかなかうまくいかない」とか「成長が可視化しづらい」といった声をよく耳にします。
マネージャーの方の多くは、突然「今日からマネージャーです」と言われ、簡単な研修を除いてほぼ訓練を受けることなく、いきなり現場に配置される。すると、自身がそれまで受けていたのと同じマネジメント方法を部下にやってしまう人が多い。ところが、この多様な人々が増えている中、自分が受けたのと同じマネージメントをしてもなかなかうまくいかないケースが増えてきました。一方、そういった日々直面するコミュニケーションの問題について、解決するための方法もわからないし、わかっても対策を実践できない程昨今のマネージャーの負荷が増えています。

画像2

そうした課題は世界中で起こっていて、先日アメリカであったHR Tech Conferenceという人事向けの世界一のカンファレンスでは、「これからはパーソナライズされたマネジメントが実現されるのではないか」「それに伴い人事の役割もかわっていくのではないか」と語られました。

「アクションプラットフォーム」という言葉が用いられますが、人事がもっと現場に直接介入・支援する仕組みが増えてきています。90年代から行われている、体系化された研修プログラムで個々人の才能を発掘・育成する「タレント・マネジメント」は、2000年代以降からエンゲージメントスコアや組織の状態を数値化して管理する「ピープル・マネジメント」へ移行してきました。
そして今年囁かれはじめた、この新しいマネジメントのあり方は、人事が現場に介入してマネージャーを支援し、現場のマネージャーに具体的にどのようなアクションを取ればいいかわかるような新しいマネジメントのあり方「エンゲージメント3.0」を示唆する内容でした。

実際、経営者である私もマネジメントの難しさを感じています。オーは創業3年になるんですが、起業して1年くらい経ったころ、3人の創業メンバーの一人が音楽性の違いのようなもので辞めたことがあったんです。振り返ってみると、マネジメント経験が全くないまま起業してしまい、マネジメントを全然わかっていなかったなと反省点が大きくあって。そんな原体験から、サービスを立ち上げました。


コンディション、タスクに関する認識、自信といった情報から
『個性別マネジメント』を実現

弊社もこのカンファレンス以前から、睡眠データをもとにしたマネジメント支援のサービスを準備し、提供してきました。簡単にいうと、「性格も個性も違う従業員一人ひとりに合わせて、どのようなマネジメントをしたらいいかわかるサービス」です。

画像12

「なぜ体内時計や睡眠なのか」というところですが、我々はこのあたりが得意分野で、実は睡眠データというのは、人の心理状態や生産性が、嘘もつけないかたちで表される、非常に優れた客観的データなんです。先日出たとある論文では、生産性の低下や休職の要因は、「上司との関係性」や「仕事の質」ではなく、「睡眠関連習慣」が最も影響を及ぼしているという研究結果が示されていました。さらに、睡眠に問題がある人とない人とでは、ストレスの感じ方が14倍くらい違うという結果や、長時間労働をしても問題が起こる・起こらないに大きな差が生じます。

スクリーンショット 2019-12-05 20.12.27

体内時計・睡眠データは仕事にも関わってくる内容だということがお分りいただけると思いますが、弊社は「ヘルスケア × HR」を標榜していて、「理想のはたらく状態」を「コンディションと仕事の緊張感が中庸の状態」だと考え、その理想にメンバーやチームが近づけるよう、企業を支援することをミッションに掲げています。

オーが提供するのは、「自信力」を高めるソリューション

ここからはサービスの説明です。
アルバート・バンデューラという、現代心理学者で最も著名なカナダ人心理学者は、「個人のパフォーマンスの向上や成長、および組織を強くするのは、自信力(自己効力感)である」と述べています。弊社はこの「自信力」に着目しています。

この自信力や自己効力感に重要なものが4つあると言われています。

スクリーンショット 2019-12-05 20.17.35

①難しい仕事を達成した経験
②心身コンディション
③承認される、仕事を褒めてもらう経験
④成功している他人の観察

弊社のサービスを使うと、①難しい仕事を達成した経験と②心身コンディションが可視化されます。さらにはその可視化された情報から、具体的にどうマネジメントを実践すべきかアクション単位でわかるようになります。

基本的には、この「自信力」が高まっている状態というのを維持できれば、よりチームの底力は強化されますが、理想のマネジメントに近づきつつある状態となります。

画像13

コンディションと自信力が計測できるようになると、8パターンに分類できるようになり、パターンそれぞれの特性に合わせて離職を避けたり、仕事のパフォーマンスを上げるための方策などがデータ上に表示されます。仕事のお願いの仕方が、コンディションなどを踏まえてわかるようになります。

このサービスが目指すところとして、最終的には一緒に仕事をしている仲間とのコミュニケーション改善を通じて「未来を戦えるチーム」をつくることです。

いま多くの企業が「部署や個人間で戦力にばらつきがある」「マネージャーの育成」「もっとメンバーの定着を強化できないか」という点について課題を抱かれているかと思いますが、その課題を「チームを強化」して解決することが最終的なゴールだと思っています。


睡眠が健康をつくる。睡眠をトレーニングできるアプリ

一方では、睡眠に関するスマートフォンアプリを開発・提供しています。

前職時代に、私自身も体調を崩した経験があり、そのとき仕事も誰も追ってこれないと思い(笑)、フィリピンのとある無人島に行きました。2週間、太陽が昇ったら起きて沈んだら眠るという生活をしたら、頭の回転が自分でもわかるくらい高速になり、恐ろしいほど健康な自分を実感したことがありました。
当時の経験をもとに、南の島に行かずとも大都会東京にいても、そのとき感じた原体験を実現できないものかと開発したアプリとなります。

スクリーンショット 2019-12-05 20.20.10

現在、弊社取締役で東京医科大学で臨床も実施している志村と共同開発をしていますが、枕元にスマートフォンを置いて寝るだけで、ベッドや布団の揺れを加速度センサーで検知してその人の睡眠の時間と質を算出します。
算出した情報をもとに、その人の睡眠が良いのか悪いのか、悪い場合にはどうしたら良くなるかを2週間単位でトレーニングできるようなアプリとなっています。

スクリーンショット 2019-12-05 20.20.22

スクリーンショット 2019-12-05 20.20.30

人によってパフォーマンスの出る時間が毎日変動しているため、それをわかるようにグラフで表示。基本劇には従業員自身がそうしたデータを活用して自分のペースで伸び伸び仕事をしつつ、必要に応じてマネージャーや人事が介入してパフォーマンスを上げていくことを目指します。

スクリーンショット 2019-12-05 20.20.47

スクリーンショット 2019-12-05 20.20.58


Unisysではアプリのみでメンタル不調が大きく改善

ここで、先日NHKでも放映いただいたUnisysさんの事例をご紹介します。

Unisysさんでは、自社の調査でストレスや生産性の悪い方々について分析を行ったところ、従業員の睡眠状況が非常に良くないという結果が出ました。そこで、特別なデバイスが必要ないという観点からオーのアプリを導入してもらい、従業員250名使って頂きました。250名のうち、35名が「ハイリスク」と判断され、その後アプリを利用してもらったところ、アプリの利用のみでうち半数が改善しました。

スクリーンショット 2019-12-05 20.23.41

そのほかにも、現在大手企業を中心に、業種関係なく数多くの企業でご活用いただいています。

スクリーンショット 2019-12-05 20.23.49

睡眠ってマネジメントにも使えるんだということに、意外性もあったかと思いますが、弊社の取り組みだけではなく、アメリカではアップルのAppleWatchなどで睡眠データを取得し、そのデータを活用し状態を判断するヘルスケアプロジェクトもあったりします。私たちも、体内時計・睡眠という文脈で企業さんに貢献できればと思っておりますので、もし何かございましたらお声がけいただければ幸いです。


株式会社オー
https://o-inc.jphttps://o-inc.jp


(写真・稲田雅彦 文・上野なつみ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?