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Notionがユーザーに愛される理由、カスタマイズとクオリティ。Notion CEO Ivan Zhao氏インタビュー実録

DNX Ventures

業務を効率化したりナレッジを管理するツールが数多くありながら、Notionが使いやすくユーザーに愛されるには訳があるはず。そこで「プロダクト開発の舞台裏」を聞き掘り下げていくと、見えてきたのはCEO自らが「クオリティ」にこだわる真摯なプロダクト開発、そして組織づくりの姿勢でした。

11月11日に開催したDNX Ventures主催のイベント「B2B Summit Online #2より、NotionのCEO、Ivan Zhao氏のインタビューをご紹介します!
(ビデオはYoutubeで英語/日本語同時通訳でそれぞれご覧いただけます)


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Notion Co-founder/CEO
Ivan Zhao
Notionの共同創業者でありCEO。Notionはメモ、ドキュメント、Wiki、プロジェクト、コラボレーションのためのオールインワンのワークスペース。デザイナーとしてのスタートから、世界中の誰もがコードの書き方を知らなくても必要なツールを作成できるようにするために、2016年に同社を設立。Notion以前はデジタル教育のスタートアップInklingでプロダクトデザインを担当。
ブリティッシュコロンビア大学を卒業し、サンフランシスコ在住。


ユーザーが自由にカスタマイズできる「ソフトウェアのレゴ」

Ivan (Notion):こんにちは、僕は今、サンフランシスコから、とても綺麗な夕日を見ながら参加しています。

Natsuki (DNX Ventures):ご参加ありがとうございます! さっそくですが、まずはNotionのご紹介をお願いします。最近は、CEOとして主にどのようなことに時間を使っていますか?

Ivan:改めまして、みなさん初めまして。Notionの創業者のIvanです。僕たちはNotionというコラボレーションツールを作っています。ユーザーのみなさんには、ノート、ドキュメント、Wiki、プロジェクトマネジメントなどのツールが全て一つになった「All-in-one コラボレーションツール」と捉えていただいています。メールや Slack、Google DocsやAsana、TrelloやEvernoteをまるっと置き換えることができると捉えていただくと、さらにわかりやすいかもしれません。
他のプロダクトと比べると、Notionは柔軟性がとても高く、ユーザーのニーズに応じて個別にカスタマイズを行なうことができるのが特徴です。ユーザーが使用する場面や用途に合わせて作り上げていくので、僕たちは「ソフトウェアのレゴ」と呼んでいるんです。

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僕は元々エンジニア兼デザイナーのバックグラウンドで、今でもデザインやクオリティ管理、プロダクトマネジメントなどの業務に時間をどっぷり使っています。加えて、会社が成長するに連れて、ビジネスや会社の成長戦略を考えることにも時間を割くようになってきました。まだ会社の従業員数が60〜70人規模なので、何でもHands onでやっています。


コンテンツと向き合えるよう、プロダクトの存在感を消す最小限のUI

Natsuki:私自身Notionユーザーなのですが、細部まで非常に拘った作り込みがされていて、それがこれだけ多くのファンを獲得している理由でもあるのかなと感じています。Ivanのお気に入りの機能はなんですか。

Ivan:僕のお気に入りは、「ショートカットシリーズ」です。Macユーザーであれば、【Command+Shift+Up/down】でリストを上下に動かしたり、【Command+Enter】でチェックリストにチェックを入れるなど、慣れ親しんだショートカットを使うことができます。

Notionを開発するにあたって僕たちは、「UIを最小限にする」という思想を掲げているんです。なにかというと、ユーザーがNotionで作業をするとき、その空間に「ユーザーであるあなた」と「コンテンツ」しかいない状況を作ること。いかにプロダクトそのもの存在感を消し、ユーザーがコンテンツと向き合う「フロー状態」に入れるようにできるかを常に考えています。僕たちは、ユーザーがノートを読むことや、Todoリストにチェックをすること、旅の計画をすることだけに集中してもらいたいと考えているんです。


京都移住のきっかけは事業ピボット。チームをサイズダウンしてリスタート

Natsuki:Notionは京都から生まれたという記事を拝見しました。別のプロダクトからピボットをしたとも。

Ivan:はい、創業して間もないとき、創業者も含めて4〜5人のメンバーで初期プロダクトを作っていました。「人々が毎日、自分が使うソフトウェアを自分で作れるツールをつくる」というプロダクトのコンセプトについては当時から変わっていないのですが、初期のプロダクトは、土台となるテクノロジー(Technological foundation)の選択が良くなかったため事業成長が停滞していました。やり直すことを考えたときに、フルメンバーでは資金が枯渇することは見えていたので、とても悲しい決断でしたが、創業者2名までチームをダウンサイズして、一からプロダクトを作り直すことにしたんです。

やり直すにあたって共同創業者とは、極力誰からも邪魔されない開発に集中できる環境に身をおこうと話し、それが日本だったんです。2人とも日本には縁もゆかりもなかったんです。でも、文化的におもしろいと感じていて、日本に決めました。

滞在期間は、基本的に食事と自転車で散策する時間以外は全てプロダクト開発に集中することができ、とても濃密な時間になりました。結果的に、京都に滞在したことはいい選択でしたね。京都の町並みの至るところで見れる職人技(Craftmanship)やホスピタリティーの高さは目を瞠るものがあって、プロダクトを作る上でのインスピレーションをたくさんもらいました。


誰でも好きなソフトウェアを作れるようになる世界観を目指して創業

Natsuki:続いて伺いたいのは、なぜNotionをやろうと思い立ったのか。コラボレーションツールという領域には当時からGoogleやEvernoteなどの強力な企業がひしめいていて、参入するのには勇気がいたのではないでしょうか。

Ivan:Notionは自分たちが実現したい世界観が先にあって、それを実現するためにできたプロダクトなので、外部環境を意識して作ると決めたプロダクトではありません。僕たちは創業当初から、「もし世の中の人たちが、毎日自分で使うソフトウェアを自分が作ることができたら、どんな世界ができるだろう?」という問いを追求していて。創業初期は、(さほど技術力がない人も含めて)世の中すべての人がデベロッパーになり、ユーザー自らソフトウェアをイチからコーディングしてもらう、というアプローチをとりました。これが僕たちが最初に取り組んだNo-Code型のプロダクトです。

ただ、プロダクトを作って間もないうちに、このアプローチに修正が必要なことに気がつきました。ユーザーは例え能力があっても、必ずしも自分でソフトウェアを作りたいわけではなく、毎日直面する課題を解決するのに、より適したツールがほしいだけだと。そこで、僕たちはアプローチを変え、人々が毎日使っているツールはなにか?そしてそのツールで困っていることはなにか?を問いました。いわゆるMicrosoft Officeシリーズに代表される「プロダクティビティーツール」を毎日使用している人たちの課題を解決できるか、と。その観点から、Microsoft Officeの裏側にNo-Codeの力を宿したようなプロダクトを作ることにしたのです。
その結果、今のNotionがあります。Notionは、誰でも好きなソフトウェアを作れるようになる世界観からは程遠いかもしれませんが、個々人のニーズに応じて自分でカスタマイズするという観点では、EvernoteやGoogleDocsと比べると遥かに勝っています。

対談の最初の方でも触れましたが、僕たちはレゴのような、とても使いやすく柔軟性にとんだソフトウェアのビルディングブロック(但し、コーディングする必要はないもの)をどう作るか常に考えているんです。


ソフトウェアのレゴ、だからこそユーザーが思いもよらぬ使い方も

Natsuki:レゴは人々の想像力を引き出しますよね。Notionがレゴと似たようなものならば、想像するに、Ivanが想像もしていなかったようなNotionの使い方をしているユーザーもいると思うのですが、これまで一番驚いた使われ方はどのようなものでしょうか。

Ivan:マジョリティーは、①ノート・文書管理、②Wiki、③プロジェクトマネジメント、④一般的な仕事用データベースの4つの使い方に収斂しますが、ほかにもたくさんのクリエイティブな使われ方もしていますね。例えば、Notionはインターネット上にあるNote/文書管理ツールなので、うまく発想を変え、軽いウェブサイトやパブリッシャーとして使用しているユーザーがいます。企業がNotionで自社ホームページを作ったり、全体でなくても求人やニュースリリースのページにNotionを使ってくれたりしています。業務でNotionを使っている会社であれば、わざわざ別のブログサイトにアクセスしたり、コンテンツマネジメントシステムを立ち上げたりすることなく、Notion上でどんどん記事を書いて公開することができるので、とても便利な使い方だと思います。

あとは、プロジェクトマネジメントを行なうときのワークフローの複雑性にいつも関心しています。ユーザーからは、自分が所属するチームにとって最適なワークフローにするために、とても複雑なものを作ったというな苦労話を聞きます。僕たちは、ソフトウェアというのは、従業員が主役となって利用し、それがスケールして企業全体に導入されるべきだ(企業が導入して全社員に使用させるものではない)と信じていますが、そのミッションにも直結するような事例ですね。


ユーザーが中心になってアイデアが広がる

Natsuki:そうですね。既に「Notion Pros」と呼ばれるNotion社員ではない独立コンサルタントが、有用なテンプレートをたくさん作って売っていますよね。彼らのクリエイティビティーにはいつも脱帽しています。真っ白なキャンバスからNotionのページをカスタマイズで作ることが難しい人にとってはとても助かりますし、どんどんいいテンプレートが作られ、広められています。

Ivan:まさに。ユーザーが中心になってアイデアが広がっていく様は、まさにレゴですよね。レゴもコンベンションなどでユーザーが活躍しています。NotionでもユーザーがテンプレートをRedditやTwitterなどで共有し、それを生業にしている人も大勢居ますから。僕もNotionやめてNotionテンプレートを売り始めたほうがいいかもしれません(笑)。

Notionのユーザー自身がどんどんNotionを布教し、より良いものに改善してくれていることは心から嬉しいですし、ユーザーには感謝しています。僕たちは数ヶ月前に韓国でプロダクトローンチをしたのですが、韓国語への翻訳はローカルのユーザーコミュニティーが主導して行なってくれましたし、このようなユーザーがいなければ、こんなに早く国際展開はできていません。まだ本格的にローンチしていない日本にも既にNotionを教える講座があると聞いています(笑)。日本市場もいつか近いうちにローンチしたいと思いますので、もうしばらく待っていてください。

ユーザーに愛される秘訣はカスタマイズとクオリティ

Natsuki:これだけユーザーからNotionが愛される秘訣はなんなのでしょうか。

Ivan:僕自身も驚いていて、正直その理由ははっきりと分かっていません。サイエンスというよりはもっとアートや運よりの話かなとという気もしていますが、いくつか仮説は持っています。

一つはとてもフレキシブルであること。Notionはユーザーが自身の用途やパーソナリティーに併せてどんどんカスタマイズをすることができますが、一旦自分らしいものを作ると、誇らしくなって完成したものを人に見せたくなりますよね。レゴと一緒です。「僕が作った車、お城を見て」と友達に見せたくなるというのと一緒です。この心理がうまく働き、どんどんユーザー間で勝手に広がっているということはあると思います。

もう一つ考えられることとしては、僕たちがプロダクトを作るときに一つ一つのディテールのクオリティーに徹底的に拘っていること。たくさんのことを大雑把にするより、少ないことを徹底的に磨くことに拘っています。


NikeやPixarなど大企業の利用も。組織に最適化したツールを簡単に

Natsuki:Notionは個人ユーザー、スタートアップ/SMB、そしてEnterpriseありとあらゆる層に使われていますが、今はどのユーザーの獲得に注力していますか。

Ivan:僕たちの理想は誰にでも使ってもらうことなので、幅広いユーザーを大切にしています。ただ、直近、そして今後の注力は、いかにEnterpriseユーザーを増やすかです。様々なユースケースの中でも、特に大企業のように多くの人が関わる組織においては、ある程度業務にあったワークフローを独自に開発できるツールのニーズが強いと感じています。NikeやPixarでは主要な部門でNotionを導入してもらっていますし、彼らのような偉大な企業に使ってもらっていることを誇らしく思っています。

Natsuki:Enterpriseユーザーに売り込みにいくときは、どのようなアプローチをとるのが一般的ですか?従来のアカウントセールス的にトップダウンでいくのか、あるいは、あくまでもボトムアップでユーザーである従業員から組織内にじわじわ広がっていくのでしょうか。

Ivan:どちらもありますが、現状はまだボトムアップで広がることが多いです。ただ、自分たちのブランドもだいぶ認知されるようになり、また、Single Sign onなどのセキュリティー、権限設定などEnterprise向けの機能も充実し始めているので、最近はCIOやCEOからトップダウンで声がかかることも増えてきました。今はNotionが1000人、10000人の規模で使えるような機能開発を着実に進めている段階です。


組織が小さく一人の範囲・裁量を増やせば、全体的アプローチに

Natsuki:事業規模に対して、社員規模が60〜70人と非常にリーンな組織づくりをしていますが、意識していることはありますか?

Ivan:実はコロナ前までは30名程度で、コロナ禍で倍以上になっているのですが、非常にリーンな組織を意識していることは確かです。量の前に質を重視し、質が高い人への大きな裁量を与えます。より少ない人数に対して多くの範囲と裁量与えることで、問題をより全体的俯瞰的にアプローチすることができるので、解決手法がより本質的になります。

例えば、うちのマーケティング担当者はエンジニアリングスキルもあるので、自分一人でランディングページ、ユーザーフローの設計・デザインを自分で行って、コーディングして展開するところまで全てやります。従って、意思決定から実行までのスピードがものすごく早く、PDCAのサイクルもよりスムーズに回すことができます。小さなチームはアジリティーも高く、いいところが多いと感じています。一方、結果的に採用基準がものすごく高くなり、かつマルチタスクなタレントプールも少ないので、人を採用することが本当に難しいです。



録画はこちら!


(翻訳・文:向川恭平 / 編集:上野なつみ)

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