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スピーチ原稿 『未来へのプレゼント』

 去年の夏、事件が起きました。昔同じ習いごとをしていた女の子がアイドルデビューしたんです。ぼんやりテレビを見ていると、画面の向こうに彼女は現れました。昔とは比べものにならないくらい、洗練されてこちらに向かって笑顔を振りまくその姿は本当にキラキラしていました。すごいと思いました。でもなぜか素直に喜べなかった。それどころか見ているうちに、顔がほてってきて、胸がじくじく痛みだしてついに耐え切れなくなって気づいたらテレビの電源を切ってました。悔しかったんです。たった数年前同じ空間で同じことをやってた子が、いつの間にか私の手には届かないところにいって、私には到底できないであろう経験をしている。それをみていると、段々自分が情けなく思えてきました。そして、同じだけの時間があったはずなのに私は何をしてたんだろうと過去を悔やみました。
 
 さて皆さん、「あの時なんでああしなかったんだろう。」そう思った経験ありますよね。そんなとき皆さんは、さあこれから頑張って取り返そうとすぐ前を向けますか。それとも自己嫌悪に陥り、後悔から心が離れなくなってしまいますか。私は後悔を引きずってしまうタイプです。冒頭で話した事件の後なんて本当にひどかった。もう一生立ち直れないんじゃないかとさえ思いました。でも、一生なんてことはありませんでした。
 何か月か経った頃、ふとおもったんです。自分の理想の未来って何だろう。自分の目標ってどこにあるのかって。そして私は見つけました。一年後に、絶対に実現させたい未来があることを。そして今がその未来を実現させるための努力を始める時だと気が付いたんです。そこからは自分を見つめる日々が始まりました。過去に合ったことや将来起きてほしいことに思いを巡らせました。すると徐々にこれからやっていかなければいけないことが明確になっていき、徐々に目標達成のための具体的な行動も起こしていくことが出来るようになりました。そこからはとにかく前を向いて走り続けました。正直、実体がなく、目をそらしたらすぐになくなってしまいそうな未来を追いかけるのは簡単なことではなかったです。それでも、理想の未来を想像して走り続けたんです。
 
 そして今、私はあの時思い描いた未来に立っています。一年前とは全く違う、満足できる今を私は生きているのです。そしてこの今があるのは、まぎれもなくあの事件があったおかげでした。もしあの子がアイドルデビューしていなかったら、私がそれを見なかったら、私が理想の未来にここまで執着することもなく、やる気を出す時期も遅れ、未来も違っていたかもしれません。そう考えるとぞっとする部分があります。確かにあの時、どうしようもない後悔や、強い劣等感を感じた時はとてもつらかったです。でもそれらは、私のやる気を引き出してくれました。
 後悔はやる気の起爆剤です。負の感情というのは、人の気持ちを奮い立たせる力を持っています。もちろん、何もつらい思いをしなくても欲しいものがすべて手に入ったら、それに越したことはありません。でも人生はそうはいかない。何かを手に入れようと思えば手に入れられない自分に嫌気がさすし、未来に進もうと思っても過去の後悔に後ろ髪をひかれてしまうものです。また人間は窮地に立った時ほど後悔に飲み込まれて行ってしまいます。でもそんなとき、それに気をとられて自分を見失ってしまっては一歩も前に進めなくなってしまいます。大きな後悔を感じた時。それは自分を見つめるチャンスです。自分の過去、未来をしっかり見つめること。そして今自分がすべきことを着実にこなしていくこと。それらはきっと目の前に道を拓いてくれます。
 
 目指す未来は一か月後でも一年後でも十年後でもいいんです。その時代を生きる自分に最高な世界をプレゼントできるのは、今ここにいるあなただけです。

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2018年度
学内弁論大会にて発表


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