どうしても結婚できなかった女
詢川華子さんの note記事たちが教えてくれた曝け出しバンジーの精神。
前回から引き続き、もうしばらく自分を曝け出してみようと思いました。
この私にパンドラの箱を開かせてしまった詢川さんには、責任を感じていただきたいと思う今日この頃です。
結婚歴 5回のバツ 4男が、かつて死ぬほど恋をし、結婚するために全精力を注ぎ込み、それでも結婚できなかった女の話をします。
人生は不条理で、ままならない。そんな思いを共有できる人に読んでほしい、私の宝石です。
謎だらけの女に振り回される
海外生活が通算で 16年になる私でも、日本に住んでいた時期はあります。
30 代の半ば頃、3年ほど東京に住みました。当時は独身でした。
結婚歴 5回の人間に独身してるヒマがあったのか?と思われるかもしれませんね。正確に言うと、3つ目のバツをつけた後、4 回目の結婚をするまでの間、約 2年の自由契約期間がありました。
その 2年は、自由と言うには程遠い、たった一人の女に身も心も持っていかれた、ファンタジー兼ダークサイドな期間でした。
当時の私は、束の間の日本生活を自由奔放にエンジョイする方針で生きていました。
突然ですが、あなたはチェーン系の居酒屋にひとりで入れますか?
例えば「和民」のような。
かなりハードル高いですよね?
当時、ルクセンブルク帰りだった私は、日本のコテコテのThe 居酒屋に飢えていまして、友達もあまりいなかったので、ひとりで居酒屋巡りをするのがマイブーム(👈死語ですね)でした。
ある晩、いつものように賑やかな居酒屋でひとりメシをしていたら、同じようにひとりで淡々と食事をしている女がいました。
今の日本なら「おひとり様」みたいなカルチャーが浸透しているのかもしれませんが、当時はまだ相当シュールな絵ですよ。
スマートフォンもなかった時代ですからね。
日本にもかっこいい人がいるんだな、と思いました。
人間観察が趣味の私は、自然にその女を観察していました。
職業が全く読めん・・・会社員でもない、主婦でもない、水商売でもない。
何を考えているのかも全く読めない。それでも、不思議なほど私の心をざわつかせたのは、その女にただよう「不幸オーラ」のようなものでした。
女が食事を終えて帰ろうとしたとき、私は思わず声をかけていました(自由奔放モードですから)。
私「あの、お酒足りてますか?」
女「?」
私「もう少し飲みます?」
女「飲みますけど」
私「たまには誰かと飲みませんか?」
女「・・・いいけど」
それから私は女と別の居酒屋で飲みました(どんだけ居酒屋が好きなんや)が、とくに会話が盛り上がることもなく、お互いのことはほとんどわからないまま。でも名前くらいは聞きました。女の名前はレイコといいます。
飲むのはほどほどで切り上げて自宅に招き、朝を迎えました。
その日から私の精神生活は一変しました。
前回の記事で言うところの、「セックスが良い・スーパー・デラックス」に相当するレベルだったからです。
なんと初回で。
端的に言えば、一発で惚れたわけです。(👈端的すぎるだろ)
そのときは、私の受難の日々が始まることなど知る由もありませんでした。
徐々に明かされる女の過去と今
携帯電話(当時はまだガラケーです)の番号くらいは交換しましたよ。
でも、レイコという名前以外、自分のことをほとんど話してくれませんでした。
レイコという名前も本名なのかどうか。上の名前も知りませんでしたし。
私は、自分からはあれこれ訊かないタイプの人間なので、相手が話してくれないと何もわかりません。
ただそんなことよりも、私を最も苦しめたのは 2回目のセックスがなかったことでした。
基本的に私から連絡し、週 1~2回くらいのペースで会っていました。
でも、セックスはせず。そういう雰囲気にならないんですよ。私のほうはセックスする気満々なのに。
彼女のほうが、「しないよ」みたいなサインを送ってくるわけです。
ときどきいますよね、「1回だけする女」っての。でも、彼女はどうもそういうタイプではなさそう。ただ、気が乗らないとしないってだけなのか?
もうひとつの問題。そんなに頻繁に会っていて、どうして彼女の素性がよくわからないのか。じつは、会っていても会話がほとんどないのですよ。
私は、初めて会ったときから気づいていました。
レイコは、一般常識とか教養みたいなものがほとんどない人だと。
それまで私が付き合ってきた女性たちというのは、高学歴というか、まあ端的に言えば頭の良い人が多かったんですが、レイコはその真逆でした。
そんな女に惚れてしまった自分に、たじろぎ、おののきました。
だって、それまでの自分なら絶対に好きにならないタイプの女ですから。
1回だけしたセックスが最高だったから?
いや、それだけではないはず。
やがて私は気づきました。
レイコが強烈な不幸オーラを放っていることに、私はすっかりやられてしまっているのだ、と。
でも、その不幸の原因はわかりませんでした。
当時、レイコは無職でした。
自由奔放に生きていた私も、時間は腐るほどありました。
ふとゴージャスな企画を思いつき、タヒチのボラボラ島で 3週間のバカンスを過ごしました。
このイベントは私たちの関係性を変えました。
ひとつは、普通にセックスできるようになったこと。
もうひとつは、レイコが自分のことを少しずつ話してくれるようになったことです。
年齢は 29歳だということ。
出身は石川県の金沢だということ。
看護師の資格を持っていること。
横浜にある病院で働いていたこと。
三人姉妹の真ん中だということ。
両親とは絶縁していること。
そして、やくざ者の彼氏持ちだったこと。
じつを言うと、まあそんなところだろうな、と薄々勘づいてはいました。
レイコの彼氏(👈やくざ者)は、服役中だそうです。
私「そいつのこと、まだ好きなんか?」
レイコ「好きや」
私「俺と、どっちが好きなんや?」
レイコ「わからん」
もうね、なんでこんな女に惚れたのか、自分に腹が立ってしゃーない。
でも、レイコが好きで好きでしゃーない気持ちをどうしようもない。
タヒチでしたセックスは「ウルトラ・スーパー・デラックス」になっていました。
そりゃそうなるわな。初回でスーパー・デラックスなんだから。
結婚、という目標が見えました。(👈もうやめとけや)
どう頑張っても自分のものにできない苦しみを知る
レイコと出会って半年ほどした頃、レイコの彼氏が出所してきたようです。
ところで私は、広域指定ホニャララ団の組員の女に手を出したことについては、何とも思っていませんでした。なんせ、自由奔放時代でしたからね。
たぶん、レイコのことが好きすぎて何も見えていなかったんだと思います。
ワレ、わしのオンナに何さらしてくれとんじゃー!!
的な展開もありませんでした。
その頃から、レイコはときどき行方をくらますことがありました。
そもそも私は、レイコがどこに住んでいるかも知らないし、どうやって生活しているのかも知りませんでした。
レイコは行方不明になると、電話にも出ないし、メールにもいっさい返事をくれませんでした。
そのような状態が 1~2週間続いただけで、私は身を切られるような思いをしました。
今思えば、レイコは関西方面で彼と会っていたのでしょう。
顔に青アザをつくって帰ってきたこともありました。
好きな女のタイプに、「不幸な女」が加わりました。
このかわいそうな女を私が救い出したい、と悲痛なまでに感じました。
全力で頭と気を使いました。時間とお金もあるだけ使いました。
30歳のお誕生日を、私が考え得る最も盛大な演出でお祝いしました。
できるだけ普通のデートもたくさんしました。
ボラボラ島の水上コテージではなく、十番祭りでタコ焼きを食べました。
一緒に住むための家を見に行ったこともありました。
あるとき私は、俺と一緒になる気はあるの?とマジメに訊いてみました。
レイコは、珍しくちょっと考えてから言いました。
「あんたとは住む世界が違いすぎるわ」
私は、レイコとしばらく距離を置くことにしました。
あまりにもあっけない幕切れ
数ヵ月ぶりにレイコと会いました。
場所はたしか、窓から海が見えたから横浜だったのかな。
レイコは妊娠していました。
あんたの子ちゃうよ、とレイコは言いました。
大阪の彼(広域指定ホニャララ団)の子でもないそうです。
そもそも、レイコは彼とは手を切って(とゆーか、足を洗って)いました。
ほな、誰の子や?と訊くと、レイコは「誰でもいいやん」と言って笑いました。
おや? レイコが笑っている。珍しいな、と思いました。
心なしか、不幸オーラが弱くなっている気がしました。
レイコは、父親のいない子供を産んで独りで育てる決意を固めていました。
「俺が育てる。結婚しよう」
不意に口をついて出ました。
「できひんくせに」
と、レイコはさびしげに笑いました。
人生の Sideways に宝石があった
レイコは、この私が全身全霊を傾けても手の届かなかった女です。
結局、私はフラれたわけです。
前科のあるやくざ者を彼氏に持ち、常識も学もなく自分の意思も願望もないどうしようもない女(ダメンズならぬダウメンズ)に、私は激しく恋をし、そんな不幸な女を誰よりも深く愛しました。
他人の子も含めて一生面倒をみようと思いました。
シングルマザーとして生きると決めたレイコは、少し強い女になっていた。
だから、私はもうそれ以上追うことはしなかったのだと思います。
それでも、歴史の if が許されるのなら・・・
もしレイコと結婚していたら、と今でもときどき考えます。
バツが 4つから 5つに増えるだけだろ、と思われるかもしれませんが、私はそうは思いません。子供がいる人と離婚したことはないのです。
人生にはメインストリート(大通り)とサイドウェイ(脇道)がある
私のメインストリートには、4人の元妻と 1人の現妻がいるのでしょうね。
でも、人生のところどころで妖しい光を放っている宝石は、案外、脇道に転がっているものです。
麗しい子と書いてレイコさん。
あなたは、私の人生のサイドウェイで今も輝いているよ。