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【イベントレポ 後編】資生堂×DMM.make AKIBA×スタートアップ|ポストコロナ時代の美容業界。

DMM.make AKIBAでは、新型コロナ影響下の美容業界の未来について考えるオンラインイベント「資生堂 × DMM.make AKIBA × スタートアップ〜ポストコロナ、美とイノベーションどう変わる?~」を6月25日に開催しました。

イベントレポート前編では資生堂のオープンイノベーションについて、そして新型コロナウイルスによる美容業界への影響サマリーをまとめました。

後編のこのnoteでは、注目のスタートアップを招いて行なったパネルディスカッション「スタートアップと語る、ココロの美」「スタートアップと語る、カラダの美」をまとめていきます。


パネルディスカッション①
スタートアップと語る、ココロの美。

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ここからはスタートアップと共に「ココロ」と「カラダ」の2つをテーマに美とイノベーションについて語り合いました。

「スタートアップと語る、ココロの美」では、資生堂 R&I戦略部より野田さん、LOAD&ROADより河野辺さんにご登壇いただきました。モデレーターはDMM.make AKIBAコミュニティマネージャーの上村が務めました。

試作段階からDMM.make AKIBAで開発を行なっていてDMM VENTURESの出資先でもあるLOAD&ROADは、気温や人のメンタル状態、茶葉の組み合わせで最適に抽出するティーポット「teplo」を開発しています。

▼teploについて

現在は個人での使用だけでなく、飲食店で料理とペアリングさせたり、海や洞窟でお茶を熟成させたり、おもてなしツールとしての導入、ポップアップレストランの企画等も進めています。

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美容業界と家電メーカーという異なる2社ですが、現在のコロナによる影響について伺いました。

[資生堂・野田さん
「化粧品市場としては外出自粛やマスク着用の影響からファンデーションや口紅の売上が低下した一方でアイメイクはあまり変化がありませんでした。
また”おうち美容”として美容マスクや医療美容の需要が伸びています。さらに、他業種でも言えることですが、”ECシフト”が強まっています。

一方で、これまでもウェルビーイングやマインドフルネスなどココロの美や健康へ注目が集まってきていましたが、それが加速していくと考えています。

これには2つの背景があると思います。
①ストレス、リフレッシュなどココロのケアへのニーズが高まっています。プレスリリースでも発表していますが、外出機会の減少や生活スタイルの変化により、生活者の13.6%が化粧品でリラックス・癒しを得られることを重要視するようになったというデータも出ています。

②生活者がより本質的なことを求めるようになったと考えられます。
他人との距離感や働き方の変化などの常識の変化や見直しに加え、”不要不急”という言葉から何が必要で何が不要なのかということを考えるようになることで、その一つとしてより本質的なもの、自分が精神的に満足するものを求めるようになると考えています。」

LOAD&ROAD・河野辺さん
「ネガティブな影響としては、2〜4月あたりに中国や日本のサプライヤーに影響が出ていることです。こちらはなんとか8月の一般販売に向けて動いています。

ポジティブな面では、在宅勤務が普及し、久しぶりに急須を使ってお茶を入れる人が増えたことでニーズが高まったことです。BtoBの取り組みが減るかと思っていましたが、設備投資が必要ないのであまり影響はありませんでした。」

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続いて、これからの時代に美とイノベーションがどう変わっていくのか、お2人に伺いました。

[資生堂・野田さん
「”化粧とココロ”という文脈は、かつてより言及されてきたことです。メイクやスキンケアは見た目を変化させるだけでなく、ココロの変化にも重要な役割があり、化粧療法というものがあるくらいです。

これからは社会の常識が変わることで、外見のためだけでなく内面のための化粧など、お客さまが化粧をする目的が変わることが考えられます。また、不眠症や生活習慣の改善と化粧をアプリで連携するなどにより、プロダクトやサービスの幅が広がる可能性があると思っています。

この後の”カラダの美”にもつながる話ですが、睡眠や運動(=ウェルネス)との結びつきが強まることで、ホリスティックビューティーにおいて新たな取り組みが考えられるようになるのではないかと考えています。」

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LOAD&ROAD・河野辺さん
「美に関してはインナービューティーにも注目が集まっていくと考えています。一方、イノベーションについては、アイディアや柔軟性だけでなく、資金も大事だと思っています。

柔軟性においては、まだまだスタートアップに強みがありますが、資金に関しては、確実にコロナの影響で経済が後退し、今までのように資金調達することが難しくなっていきます。資金的に体力のある大企業がイノベーションを生みやすい世の中になっていくのではと考えています。スタートアップは柔軟性と資金のバランスを取らないと生き残っていけないのではないでしょうか。」


パネルディスカッション②
スタートアップと語る、カラダの美。

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続いて、資生堂・インキュベーションセンターより秦さん、no new folk studioより小林さん、古川さんにご登壇いただき、「カラダの美」について語り合いました。

no new folk studio(以下、nnf)は、ランナーを進化させるスマートシューズ「ORPHE TRACK」などを開発するスタートアップで、DMM.make AKIBA開設当初から入居しています。

▼ORPHE TRACKについて

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はじめに、今の状況について伺いました。

[nnf・小林さん
「工場がストップしたことで納期が後ろ倒しになることもありましたが、プロダクトとしては、自宅でできるエクササイズや手軽なランニングに注目が集まるようになり、ポジティブな影響がありました。実際にフィットネスアプリのダウンロード数が過去最大の伸びを見せています。

nnfのホームページへのアクセス数も伸びていますが、それ以上に潜在ニーズの高まりを感じました。

また、スマートシューズとしての新たなニーズとして、工場内での従業員の歩行データを用いることで感染防止に繋げられないか、という問い合わせをいただくこともありました。ポジティブな影響もあったのではないかと感じています。」

[資生堂・秦さん
「コロナの前からビューティとウェルネスの関係は加速していましたが、良くも悪くもコロナの影響で家と個人の時間が大きくなったことで、生活者が自分と向き合うようになったと思っています。

上述でもあるように、一部のメイクアップ領域は売上が下がっていますが、スキンケアはそれほど変化がありませんでした。個人的にウェルネスやインナービューティーへの意識や需要はもともとあったのではないかと思っています。

資生堂としてもニューノーマルの価値観に合わせたソリューションを提供する必要があります。」

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続いて、これからの時代について、伺いました。

[資生堂・秦さん
コロナの影響で価値観が変わったことは言うまでもないと思いますが、この変化が元に戻ることはないと思います。資生堂としてもこの変化にスピーディーに対応していかなければなりません。

これまで資生堂は顔まわりの美容は得意でしたが、インナービューティーについてはメインストリームではありません。スピーディーに対応していくには自前主義ではなく外部の技術を取り入れていく必要があります。

nnfは全身へのビューティー、ウェルネスにおいてのソリューションを持っているのでご一緒することで新たな価値を提供できるのではないかと期待しています。また、今後はニューノーマルな時代に合わせ、一見領域が異なる業界ともコラボレーションしていくことで、資生堂が提供できるソリューションの領域を広げていきたいと思っています。」

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[nnf・古川さん
「nnfは足まわりの知見があるので、資生堂とコラボレーションをすることで新たなシナジーが起こるのではと期待しています。これまでランニングすることでのフィジカルやマインドへの変化が注目されてきましたが、美容という新たな視点でどのような変化があるのか資生堂と取り組んでいきたいと思っています。

今までは、ランニングをする方は早く走りたい、マラソンで完走したい、という数値的や具体的な目標がある方が多かったですが、これからはリアルなイベントも難しい中で、ランニングへのモチベーションも変わっていくと考えています。

外出自粛による運動不足の解消や日々健康に走り続けるというマネジメントという意味でのソリューションも提供できればと思っています。もしかしたらスポーツのあり方すら変わっていくのかもしれないですね。


資生堂とDMM.make AKIBAのオープンイノベーション。

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資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona」プロジェクトオーナーの荒木さんにご登壇いただきメッセージをいただきました。

[資生堂・荒木さん
研究開発のスピードが、生活者やマーケットの時間軸と合わなくなってきていると感じています。

高度成長期の時代とは異なり、正解が見えにくい時代になっています。それにより一つの製品にリソースを割くことに対するリスクが高まっています。これからはアジャイルで開発していくことが必要になってきています。

その流れもあり、1年ほど前にオープンイノベーションプログラム『fibona』を立ち上げました。資生堂の研究所をもっと外に開きたいという思いがあります。このイベントのように自らドアを開ければ多様な知識を持つ社外の人と触れる接点が持てます。これこそがイノベーションの第一歩だと思っています。

今後はビューティーの分野にとらわれず、ユニークなアイディアを持つスタートアップと資生堂のアセットを融合することで、生活者に新たな価値を提供していきたいと思っています。」

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最後に、モデレーターを務めたDMM.make AKIBAの上村より、オープンイノベーションとDMM.make AKIBAについてお話させていただきました。

[DMM.make AKIBA・上村
「イノーベーションという言葉は一見難しく考えられがちですが、”新結合”、”新しい捉え方”と訳されることもあります。今までと異なる見方をすることや合わないと思っていたものと組み合わせることもイノベーションに繋がります。

オープンイノベーション(=共創)は新しい価値創造やドライブさせることに役立ちます。この”共に創ること”を細分化すると下図のようなサイクルがあると考えています。

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ここでまず大事なのは自分のことに”気づくこと”です。自分自身の価値、プロダクトの価値、会社の価値に気づくことで、初めて”他社/他者の何がすごいのか”を理解することができます。先の見えないポストコロナ時代にぜひご活用ください。

DMM.make AKIBAでは新規事業開発に向けたスタートアップや事業会社のマッチングのお手伝いもしています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。」

最後に今回ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

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