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実写版ブラックジャック 感想など 〜漫画の実写化における諸騒動に対して思うこと〜


実写版ブラックジャック
先日、Tverで視聴しました。

原作のブラックジャックも勿論好きですが、主演の高橋一生さんは私の好きな俳優さんの一人であると同時に、彼の出演されているドラマもまた自分の好きなものばかりということで期待していた作品です。
また、漫画の実写化という点では岸辺露伴の成功例もありますね。
また、脚本担当の森下佳子さんも「白夜行」「JIN-仁-」「天国と地獄」など名作と言われるドラマを数々手掛けていたベテラン脚本家さんということで、より一層期待していました。

…が、蓋を開けてみれば、ブラックジャックと対になる重要キャラであるドクター・キリコを女性に、琵琶丸をミュージシャンにといった多くの改変でドラマ放送前から炎上してしまい、放送終了後の今でもドラマスタッフの一人の方がキリコのキャラの造形について(おそらく炎上コメントの数々を見てこれはまずいと思ったのか)釈明ともとれるツイートをしたりと色々と残念な方向で話題を集めてしまいました…。
私個人としても、勿論主演の高橋一生さんやピノコを演じる永尾柚乃ちゃんなど、役者さん達の演技は良かったと思いますしここが良かったな、と思う点もあったのですが正直これは炎上してしまっても仕方ないかも…と思ってしまいました。

と、いうわけで今回はこのドラマがなぜ炎上してしまったのか&どうしてもこの設定でドラマをやりたかったのだとすればどうすれば極力炎上を防ぐことができたのか、について色々考えたことを書かせていただきたいと思います。

炎上の最大の理由となったキリコの性別変更について


これに関してはドラマを見ていて、獅子面病患者を女性キャラとすることで、キリコを同性として寄り添えるキャラにしたかったことが理由なのだな、と見ていて分かりました。
そもそもブラックジャックは今から50年以上も昔の作品であり、スマホやSNSどころか携帯電話すらなかった時代の話です。
そこを現代に合わせてドラマ化するとなると、現代の社会問題を落とし込みたい→「ルッキズム」「女性の生きづらさ」をテーマとして掲げよう、そんな風に制作サイドは考えたのではないでしょうか。
批判意見の中にはルッキズム=女性の悩みと決めつけるのはジェンダーフリーを謳う今の世の中においてどうなんだ、そもそも外見のコンプレックスをテーマにするのであれば全身ツギハギで半分白髪で顔の半分の肌の色が違う、初対面の人物からはまず警戒されたり不審に思われるという明らかなハンデを抱えているBJというキャラがいるじゃないかというツッコミ意見も見かけましたが、こと顔の美醜という問題に関しては私としては確かに女性同士でないと分からないことだと思います。

確かにいつの時代も美男、美女である方がもてる、というのは別に男性も女性も同じでしょう。
ですが、もてる、もてないといった恋愛面意外の場所や状況まで考えてみるとやはり女性の方が容貌でジャッジされる場面は男性よりも多いよな、とは思います。
それこそよりすぐりの美男美女が揃っている芸能界であっても、男優さんは年齢を重ねても渋くなったとか俳優として味が出てきたと言われても女優さんの方が「老けた」「劣化した」などとネットで心ない言葉をかけられがちですからね…。
これに関してはもう、はっきり言ってしまうと、人類の長い歴史を見てきて女性が男性から「選ばれる」側の性であったことが原因なのだと思います。
男性と同じように女性が働くようになったのは本当にごくつい最近のことであって、長い歴史で染み付いた社会通念はなかなか変わらない…そういうことから女性の容貌に関する悩みはきているのではないかな、と思いますね。
自分が世間一般で言うところの「美人」ではない、ということで苦しむ人もいれば、美人は美人で周りから嫉妬されやすかったり仕事ぶりや内面性の評価よりも外見でまず判断されてしまいがちだったり、といった苦労があったり。
男性に比べて人からどう見られるのかといった点において非常に気にしてしまう傾向がある分、なかなか女性の社会というのは大変だな…と思いますね…。

と、少々脱線してしまいましたが(汗)
キリコ女性化の理由に関しては一応こういった制作上の意向があったのだな、と納得はいきました。

日テレの某ドラマの件があったばかり、というタイミング

おりしも(局は違いますが)とある漫画の実写ドラマで原作者の意向がドラマ制作サイドから軽んじられた結果、最悪の事態を引き起こしてしまった…という事件があったばかり、というタイミングも悪かったな…と思います。
(一応言っておくと、個人的には最悪の事態の引き金となってしまったのはネット民の過剰な脚本家の方への攻撃にも原因はあると思っています。勿論、脚本家の方のSNSでの書き方もあまり宜しくなく、原作者の方からすれば耐え難い思いをされたと思われますが、それ以上に「攻撃したかったわけではなくて」という最後の言葉から察するにネット上で行われる第三者同士の誹謗中傷合戦に苦しまれたのではないか…という考えもあると思います。勿論、当のご本人が亡くなられてしまった今となっては分からないことですが…。)

勿論、この件に関しては本当に悲しい出来事でしたし未だに納得のいかない原作ファンの方々もおられることでしょう。
ただ、この実写版ブラックジャックは、原作者である手塚治虫先生はとうに鬼籍に入られてはいるもののご遺族が代表を務められている手塚プロダクションとしてはしっかり承諾されているとのこと。
また、公式サイドの発表曰く原作を大胆に変更してもらっても構わない、それはそれとして楽しんでもらいたいといったようなことも書かれていました。

ですので、よくよく考えてみると某ドラマの件と今回の実写版ブラックジャックで問題視されている件では全く状況が違うわけです。
中にはドラマの制作局自体が違うのに、また日テレが、これだから日テレは、と言ったように日テレ制作だと勘違いして日テレを叩くコメントまで見受けられましたし。
そういった面ではただただタイミングが悪かったとしか言えないですね…。

炎上の火種を極力小さくするためにどうすればよかったか

では、ここからは今回のドラマで起こった大炎上を極力抑えるにはどうすれば良かったのかについて自分なりに考えたいと思います。
一応前もって書かせていただきますと、根強いファンが沢山いる名作だからこそ、原作を大胆に改変するということに関してはどうしてもある程度の批判は避けられません。
よって、炎上「しないようにするためには」ではなく「極力火種を小さくするためには」、という体で書かせていただきたいと思います。

  • 告知の段階で「令和の時代を舞台にした作品であり、令和の世ならではの現代社会問題をBJという作品に落とし込みたい」と宣言しておく

まずもって時代が令和であると宣告しておくこと。
この一言だけでも原作を忠実にドラマ化するのではないのだな、というのが分かるので、その時点で原作に忠実じゃないと嫌だと思う人は見ないでおこうと判断できます。
これがアニメならいわゆる「サザエさん時空」のように主人公やその周辺は原作の連載当時のままだけどパソコンやスカイツリーの存在など時代は一応現代に即している、といったようなファンタジー的な描写でも割と許される感がありますが(笑)
生身の人間が演じる「ドラマ」となるとそれはなかなか難しいでしょうしね…。
時代が昭和なのか現代なのか?についてはキャスティングと同じぐらい皆さん気にされてた部分だと思いますし、それぐらいならネタバレにもならないでしょうし早めに公表しておいても良かったんじゃないかな、と思いますね。

個人的には時代を令和に変更した点に関しては肯定的に受け止めています。
そもそも原作が発表されてから半世紀以上経った現代。医療技術の進歩は目覚ましく、当時は治療不可能と言われていた病もきちんと適切な治療を施せば完治できるようにもなりました。
特に、(主人公の専門分野ではないものの)精神疾患に関してはかなり研究が進んでおり、うつ病や統合失調症、パーソナリティー障害なども世間一般的に認知されるようになり、まだまだ十分とは言えないもののそうした精神障害への理解も少しずつ進んできている世の中です。
令和の今の世にブラックジャック先生やピノコが存在していたら?というifのストーリーは見てみたいな、と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。

余談になりますが、いくら時代が現代とはいえスマホをいじるブラックジャック先生というのはどうしても想像できなかったので、電話するときなどはピノコのスマホを借りている、というのは良いアイデアだなと思いました。笑

  • 最初の段階で主演の高橋一生さんだけでなく、ピノコ役の永尾柚乃ちゃん、女性版ドクター・キリコ役の石橋静河さんの三人のキャスティングとビジュアルを公表しておく

自分の記憶によれば、この作品が炎上したのは一回だけでなく、何回かに渡ってのことでした。
一度目は、キリコ役が公開されたとき。
二度目は、予告動画が公開されたとき。(プラスしてほぼ同時期に制作プロデューサーのキリコ女性化についてのコメントが公開されたとき)
そして三度目は、ドラマ放送直後。
最初にも言ったように、原作を大胆に改変するということはどうしても原作ファンからの多少の批判は避けられないことだと思います。
しかし、時系列的に見て一度目、二度目の炎上に関しては第一弾の告知の段階で高橋一生さんのビジュアルがあまりにもハマっていて、世間の多くの人が期待が高まっていたところでのまさかのキリコのキャラ改変、という原作ファンからすれば急転直下の大打撃を受けてしまった…というのが大きかったと思います。

よって、最初の告知の段階で、時代を令和と説明すると同時にメインキャラ三人のビジュアルと配役を公開していれば、多少の批判意見はあっても三度に渡っての大炎上とまではいかなかったのではないでしょうか
(ちなみに、既にネット上ではキリコのキャスティングが発表されていたにも関わらず予告が公開されてから再炎上したのは、予告という映像として流れたことによってより広い層にまで認知されたことが原因なのかな?と自分では分析しています)

  • 手塚プロ側のドラマに対して肯定的なコメントももう少しメディアで取り上げてほしかった

Yahooニュースのコメント欄の批判的意見を見ると、「原作者サイドはこの改変を許しているのだろうか」といった意見もありましたが、上にも挙げたようにむしろ原作改変に関しては積極的にGOサインを出しているんですよね。
私は2000年代に放送されていたアニメ版のブラックジャックを子供の頃に視聴していましたが、あのアニメ版も子供の視聴者層への配慮なのか、原作では死亡してしまったキャラを生存させたりなどの改変が多く賛否両論(賛否というかどちらかというと「否」が多かったような…汗)あったように思います。

また、評価の高いOVA版も原作のエピソードとはかなりかけ離れているんですよね。
特に、重要キャラであるピノコの姉のエピソードに関してはここまで変えるんだ、と驚いた覚えがあります。

今回のドラマも、そうした各メディア媒体によっていろんなアレンジされている作品の中の一つとして放送開始前の早い段階で告知しておいた方が良かったんじゃないかな、と思いますね。

以上三点が、私なりに考えた少しでも炎上の火種を小さくできたのではないかと思うポイントです。

原作はひとまず置いておいて率直に、ドラマを視聴しての感想

では、ここからいち視聴者としての私のこのドラマへの感想を述べたいと思います。
はじめに書かせていただきますが、かなり率直な感想となりますので、ドラマを楽しんでご視聴された方にとっては不快に思われる表現もあるかもしれません。申し訳ございませんが、予めご了承下さい。

  • 獅子面病でルッキズムの問題提起をしたい、のであれば最終的にあの女性が一命をとりとめた上に顔も元の美しい顔に戻ってハッピーエンド、ではなくむしろ顔は戻さない方が良かったのでは? 

まず間違いなく彼女があそこまで精神的に追い詰められた原因は「自分の美貌に拘る夫」にあったと思うので、彼女が助かった上に顔ももとに戻ったのではあまりにも都合が良すぎではないかと。
そもそも妻の顔が好きすぎてあんな大量の妻とのツーショット写真を部屋に貼りまくっている夫。
顔が好きと言われたことに対して反発しつつも結局は顔に拘ってしまっている妻。
正直、第三者視点で見ると共依存的なカップルとしか思えませんし、お互い離れた方が良いんじゃないの?という気持ちが拭えませんでした… 。
原作の某名シーンをこのドラマではこの夫婦のエピソードに当てはめていますが、正直こんな好感の持てない夫婦にあのシーンを使ってほしくなかった。。
(ので、ぶっちゃけラストのあのオチも正直言うと別にたいしてショックは受けませんでした…。)
結果的にもとの美人な妻に戻り、手術費用も実質チャラになったようなもので夫からしたら万々歳でしたが、妻の命が助かった一方で顔は治らなかったとしたら。
それでもこの夫婦はきちんとお互いを受け入れ合って生きていけるのだろうか。

気になるところではあります。
(あと、細かいところなんですが、夫婦二人でいるときなら良いけど、良い歳した夫婦が第三者の前で自分の夫/妻のことを「くん/ちゃん」付けで呼ぶのは、ちょっと恥ずかしいですよ…。汗)

  • キリコ、何もしてなくない?

原作の「ドクター・キリコ」はひとまず置いておいて。
先入観やフィルターを取っ払って見てみて思ったのは「このキャラ、何もしてなくない?」でした。汗
いや、勿論彼女がいらんことをしてくれたおかげで結果オーライ的に全てが上手くいったといえばいったのですが。
プロデューサーや制作スタッフのコメントを見るに、ルッキズムに苦しむ女性患者に寄り添えるには同じ女性のキャラクターの方が、ということでしたが、確かに上の方でも述べたように顔の美醜に対する女性の苦しみは女性にしか分からないものだと思います。
けど、寄り添うって、ただ相手の話を聞いて「可哀想に」って抱き締めるだけのことなんでしょうか?
優しい女神のような存在をイメージして、といったプロデューサーのコメントも拝見しましたが、自殺志願者と向き合うにあたって「優しく寄り添う」ってあまりにも考えが浅くはないでしょうか。
そうした人と向き合うとき、優しさしか持ち合わせていない人はまず相手の感情に取り込まれてしまいますよ
また、彼女は仕事上、たくさんの安楽死を望む患者と向き合ってきたはず(だと思う。ドラマではそこまで掘り下げられてはいなかったけど)なので、それならばなおのこと、患者一人一人に優しく寄り添うのではなく医師として一線を引き、俯瞰した目で患者を見つめる冷徹さが本来であれば必要なのではないでしょうか
ドラマを見た限りではあまりにもキャラとして浅すぎるし、ぶっちゃけキリコ云々関係なく、名前ありの重要キャラの一人ではなく名も無いぽっと出の怪しい自称カウンセラー的なキャラとかでも良かったんじゃないかと思うぐらい、はっきり言ってしまってキャラが浅いなぁ…と思ってしまいましたし、演じている女優さんも、いくら演技力のある役者さんであってもこれはどう役作りすれば良いのか悩んだだろうなと思ってしまいました…。

一応、デザイナーさんのコメントを拝見したところ、視聴者から散々キリコだけ安っぽいコスプレのようだと非難されたキリコのあのキャラクターデザインについて色々と説明されていましたが、そんな「実はこういう裏設定があったんです」的な話を放送終了後にスタッフさんが説明する必要がある、というのはどうかなと思いますね…。

  • 何故竹原ピストルさん…?

このアーティストさんご本人を責めるつもりはありませんが、単純に起用理由が何故?と疑問しかありません。汗
主題歌もドラマの内容に全く関係のないものだったし…
「琵琶丸」という名前じゃなくても全然問題じゃなかった、というかキリコ以上に全くの別キャラになってましたし。

  • スタッフさんのコメントについて

ドラマのスタッフさん(キャラクターデザインを担当された方)のツイートに関しては、そもそもこの方自身も原作から大きく改変されたドクターキリコというキャラクターのデザインにかなり悩まれただろう、ということでこの方自身を責めることはしたくはありません。

けれども、「BJはじめメインキャラクターが全員「容姿の課題」を抱えている」という言い方に関しては正直疑問を抱いてしまいました。
BJとピノコのあの姿は生きるか死ぬかのぎりぎりの瀬戸際を乗り越えて獲得した「生」そのものを体現している姿なんですよ。
そしてBJのあの顔のツギハギは大事な友人の皮膚を移植させてもらった大事な顔なんですよ。
ピノコだって、実年齢の18歳の姿で先生の隣に並びたいという願望はあるでしょうけど、それは「顔」に関する悩みとはまた違いますし。(先生に繋ぎ合わせてもらった身体自体は大事に思っているでしょう)
よって、この二人の(敢えてこういう書き方をさせていただきますが)「特異」な外見に関しては容貌の美醜に悩むルッキズムとは全く別のものだと思いますし、それを一括りにして「容姿の課題」と表現されたのに関してはなんか違うんじゃないかな…というのが正直な気持ちでしたね。

  • 良かった点

いろいろと気になってしまった点もありましたが、もちろん良かったなと思う点はあります。
高橋一生さんのブラックジャックは本当にハマり役でしたし、正直「岸辺露伴」と比べられるんじゃないか…という心配はあったのですが、ちゃんと「ブラックジャック」の演技になっていたと思います。
声のトーンも低めにされていてアニメの大塚明夫さんをイメージされてるなぁと思いましたね。
声といえば、アニメの大塚さんボイスでかな貫禄のあるイメージがありますけどブラックジャック先生の実年齢って20代後半〜30歳ぐらいの設定なんですよね。
なので、実年齢40代の一生さんはちょっと年齢が行き過ぎなんじゃないかという意見も見られましたが、正直今の30歳前後の俳優さんであの貫禄と存在感を出せる人ってそうそういないんじゃないかと思うんですよね。
(芸能人に限らず、最近の人って年代問わず男性も女性もすごく若々しい人が多いような気がします…サザエさんの波平さんなんておじいさんに見えるけどまだ50代ですからね汗)
決して人当たりは良くない、不気味で無愛想、でも内面は熱く人に対する情を秘めており、ピノコに対しては物凄く甘い。笑
そんなブラックジャック先生を本当にそのまま体現されていたな、と思いましたね。

あとは永尾柚乃ちゃん演じるピノコ。
私は「ブラッシュアップライフ」というドラマで初めて彼女の存在を知ったのですが、そのときの第一印象がなんだかアニメかマンガにそのまんま出てきそうな子だな…というものでした。
なので、彼女がピノコ役と知ったときは確かにピノコだ!と思ったのが率直な感想でした。笑 ビジュアルも完璧でしたしね。
ただ、滑舌については少々聞き取りづらい箇所があったのが気になりましたが…
この点に関しては、正直、ピノコのあの喋り方自体が難しいし仕方ないよなぁ、という気持ちもあります汗
逆に考えてみれば、あの舌っ足らずな喋り方でなおかつちゃんと聞き取れるように演じているアニメの声優さんって本当にすごいな、と改めて思いましたね。
(水谷優子さん、本当に惜しい方を亡くしました…。)
この二人のキャスティングに関しては本当に文句なしでした。

あとは、獅子面病患者の女性を演じる松本まりかさん。
特殊メイクをしているため表情での演技に制限がある中で内面の苦しみや葛藤、もとの容貌への憧憬、夫への諦めといった複雑な感情を見事に表現されていて凄い女優さんだな、と思いましたね。
時々見かける女優さんではありましたが、今回改めて凄い役者さんだと認識しました。今後彼女の出演する作品があれば、注目したい役者さんの一人になりましたね。

終わりに

賛否両論さまざまな意見が見られたドラマでしたが、やはりマーケティングを適切に行っていれば、原作サイドは了承しているのだからここまでの炎上はなかったのではないか、と思いますね。
よくよく考えてみたらアニメ版やOVA版などいろんなブラックジャックのメディアミックスは存在していますし、今回のドラマもあくまでそういった「数あるメディアミックスの中の一作品」なのですし。
(ちなみに、過去の実写化作品については生憎私は見たことがありません)

しかし、一方で「手塚プロがOK出してるんだから原作厨はグダグダ文句言うな」という意見もまた少々極端ではないかと思います。
勿論公式サイドが了承の上だ、という大前提はありますが、原作改変そのものが絶対ダメだということはありません。
が、その上で、映画にしてもドラマにしても漫画やアニメ、小説に関しても自由に「感想」を述べる権利は誰にでもあります。
ということで、今回私も少々厳しめの感想になってしまいました。
また、その原作の改変に関しても、主演の高橋一生さんのコメントを読む限りでは原作に忠実なものを希望されていたと読み取れるので、その辺りの役者さんサイドと監督や制作サイドとのやり取りに関してはどうなっていたのだろう?ちゃんとコミュニケーションを取れていたのだろうか?という疑問も正直なところあります
(↓ネットニュース:高橋一生、手塚治虫氏の名作『ブラック・ジャック』挑戦への思い「原作に準拠したドラマを」 より)


ただ、出演者の方々(特にキリコ役の女優さん)や、名前を出した上で作品をフォローするコメントをされたデザイナーさん個人に対する行き過ぎた攻撃はやめてほしいですね。漫画の実写作品に限りませんが、メディアでなんらかのドラマや映画が紹介されるときって、どうしても監督ではなく「◯◯◯◯主演の〜」と主演俳優さんの名前が真っ先に出てしまうんですよね。
なのでどうしても視聴率が振るわなかったり評判が悪かったりすると真っ先に役者さんの名前が出てきてしまいますが、俳優さんはただ与えられた仕事を全うしただけ。
行き過ぎた批判や、ましてや誹謗中傷的なコメントは絶対にしないでほしい、と思います。
(逆に言うと、監督やプロデューサーや事務所サイドは何かあったときに役者さん一人一人をきちんと守る姿勢を見せてほしい。つい最近も某映画作品の監督が炎上して、主演女優さんが所謂大人の対応でフォローされていましたが、はっきり言って情けないとしか言いようがないですよ…。)

私の個人的な考えとしては、漫画の実写化は何がなんでも原作に忠実にしないとダメだ、とは思いません。
そもそも紙の上に描かれた絵をそっくりそのまま三次元で映像化するなんて無理なことなんですから。
原作をアレンジしてドラマにすることに関して原作への冒涜だ、という批判もあるでしょうが、原作のファンだからこそ忠実にドラマ化したいというのも、逆に原作を読み込んだ上で自分なりの解釈で作品を作りたい、というのもどちらも作り手の自由だと思いますし、それについて第三者が「原作を冒涜している」とジャッジする資格はないと思います。それこそファンの中でも百人いれば百通りの「原作愛」があり、それは人それぞれ違うものなのですから。
(昨今のディズニー実写化のように明らかに大人の事情が絡んでいるであろうキャスティングや原作アニメの設定改変だったりというのは流石に如何なものかと思いますが…汗 )

そういったいち個人的な意見の上で、令和の今の時代にブラックジャックをドラマ化するということになるのであれば…
個人的には「如月恵先生」のエピソードをやってもらいたかったな、と思いますね。
手術により卵巣と子宮を摘出せざるをえず、「女としては生きられなくなった」からと名前を変え男性として生きることになった、という現代であれば少々考えられないエピソード。
令和の今の世の価値観からすれば、結婚や出産だけが女性の生き方ということはありません。独身で仕事をバリバリこなし、自分の趣味を楽しみながら生きているという女性もたくさんいます。
でも、男性の生き方、女性の生き方という括りは関係なくその人の抱える痛み苦しみは当人にしか分からない
それだけが女性の生き方、女性の幸せじゃないんだよ、貴女には他の生き方もあるんだよといくら他者から言われたとしても…。
多様性という言葉だけが時に一人歩きしているのでは、と時に疑問を感じてしまう今の世の中に敢えて一石を投じるような、そんな物語を見てみたかったな、一歩間違えたら大炎上にも繋がりかねないけど、令和の社会問題を提起したいのであれば炎上を恐れず勇気を出して取り上げてほしかったな…と少し思いましたね。(あくまで一個人の希望というか妄想です)

いろいろ長々と語ってしまいました。
漫画の実写化における「改変」問題。
人それぞれ原作への思い入れというのは違うので、皆が皆100%納得のいく実写化というのは不可能だと思います。
いろんな意見があっても良い。
ただ、いつ何時「炎上」が起こるか分からない今の世の中、作品に真摯に向き合う役者さん達やスタッフさん達が真正面から攻撃を受けてしまわないように。
また、一方で原作への思い入れがあるからこそドラマに色々な意見がある…という立場の人の考えも「誹謗中傷だ」と切り捨てられてしまうことのないように。
誰もが「言葉」で自分の思いの丈を書き込めることになった今の世の中だからこそ、それぞれの思いを皆が尊重し合えるような世の中になっていってほしいなと思います。
以上、実写版ブラックジャックの感想と、漫画の実写化における諸騒動についての意見でした。


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