飢詩「渇望」&歌唱まとめ

「渇望」
大好きな父と母が事故で死んだ
愛された記憶が粉末になって容器に収まった
誕生日にもらった、かわいくて大きな容器
専用のスプーンですくってコップ等に入れて
液体に溶かして飲むと、甘い
日常的に山盛り一杯を水に溶かして飲んだ
私は明らかに中毒者だった

年月が流れ、ある日
粉末の減りの早さに恐怖した
山盛り一杯ではなく、表面が平らな
すりきり一杯の量に変えた
どうか長持ちしますように

年月が流れ
振り落とさずともすりきり一杯になったとき とても悲しかった
それでも飲まずにいられない
着実に減っていく粉末に、泣き暮らす心

やがてスプーンが容器の底をかすめた
大泣きした

そして、とうとう
粉末が少なすぎてスプーンですくえない
容器を傾けて直接口に入れようとした
風が吹いて粉末が窓から外へ飛んでった
最後の一口、夢中で追いかけた
人は飛べない もちろん転落死した
容器の「生まれてきてくれてありがとう」
という文字は
読めない程に薄くなっていた

⬇左:雪の華     右:Bye-Bye Show


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