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小池壮彦「山の上のホテル」の今 予告編

皆さんは「山の上のホテル」の怪談を知っているだろうか。

怪奇探偵として有名な小池壮彦が語り継いだ、最も恐ろしい因縁話とも言われている、とある山の上の温泉地にまつわる怪談である。

初出は小池氏の「幽霊物件案内2」だが、その後日談が後年の「怪奇事件はなぜ起こるのか」にも収録され、また不定期的に発行される、廉価なコンビニ雑誌の怪奇特集でも取り上げられた。

概要はこうだ。

とある温泉地、そこは標高の高い山の上、の大きなホテルで働いていた女性の話。

彼女はフロントで目にした滝の写真に心をひかれ、その滝があるという、ホテルより更に奥の山へとバイト仲間と共に向かう。そこは滝と共に、今は使われなくなったホテルの旧館もあった。旧館は源泉に近く、有毒ガスが発生するため使われなくなったという。彼女は滝の写真をとり、ついでに旧館も探検する。旧館内部は異様だった。各部屋に御札(蛇の絵が描いてある)が貼られ、なにか封印しているかのよう。彼女らはふざけて御札を剥がしてまわり、旧館を後にする。

その後、バイト仲間のひとりは高山病のため下山するが、その途中に事故死。滝の写真には顔のようなものが写り、彼女の身の回りで不可解な死亡事故や怪現象が続発。写真をお寺さんに見せると、これを祓える人物は日本に2人しかいないと言われる。うち1人には高齢を理由にお祓いを断られ、もう1人は「必ず私の指定する飛行機で来ること、さもないと乗った飛行機は墜ちる」と警告される。

指定の飛行機で行者の元を訪れ、お祓いは済む。その後、怪現象は収まったかに見えたが、小池氏にこの話をしようとすると本棚が倒れ、大怪我を負ったという。

この強烈な因縁話の舞台を、小池氏は訪れ、取材している。

小池氏の記事によれば

現地は山の上の温泉地で、宿以外の公共施設などは無い。

硫黄泉であり、硫化水素ガス(猛毒)が各所で発生している。

スキー場がある。

スキーヤーが有毒ガスに巻き込まれる事故が起きている。

物語の舞台のホテル(女性が勤務していた)は全国展開の大資本である。

旧館は、かつて独立して経営されていたが、ホテルに買収され、その後休止、廃屋として放置される。ガスの影響か、朽ち方が激しい。

昭和中期に火災で全焼しているが、死者は出なかった。

滝は崖崩れによる地形変化のためか、無くなっていた。

等の情報が判明した。

小池氏が訪れた時、旧館はまるで解体途中かのように激しく朽ちていた。女性が見たという蛇の絵の御札は既になく、しかし客室には隠し部屋のようなところや、布団が敷かれた部屋があったという。女性によれば、ホテルで死者が発生したときの遺体安置場所として休館が利用されていたことがあるというから、この布団の敷かれた部屋はなんとも不気味である。女性が働いていた時期にも、大浴場で高齢女性が死亡した。

この温泉地に病院も警察もなく、市街地まで車で何時間もかかる。冬期はさらに雪に閉ざされる。そして火山性の有毒ガス。しかも、温泉地の宿はどこも一族経営の様相で、閉鎖的であるという。小池氏はこれらの要素を元に、なぜ休館を封印しなければいけなかったのか、考察している。すなわち死体を騒ぎにならないように秘密裏に処置するため。なにしろ火山性ガスの真っ只中である。事故が続発して危険だからと営業を規制されれば、ホテル経営者にとって大打撃なのだ。

この最凶クラスの因縁話の舞台は、小池氏の記事では地名はもちろん伏せられている。ネット上でもこの怪談は話題であり、多くのネットユーザーが場所の特定を試みているが、「ここだ!」という場所を探り当てている様子は無かった。

筆者も気になり、日本各地の条件が合致する温泉地を調べてみた。その結果、ある有名な温泉地に、条件に当てはまる宿と、廃屋になった旧館があるのを見つけることが出来た。また火山性ガスやスキーヤーの事故のエピソードも合致する。

間違いない、ここだ。筆者は確信し、現地に赴き、視察を試みた。

これから、「山の上のホテル」の今を書き記していきたい。

しかし、現地は今も普通に営業しているホテルがあり、その敷地内にこの封印された旧館がある。いや、正確には「あった」。旧館は既に解体されている。

解体されているとはいえ、この因縁話を地名、ホテルの実名を挙げて公開することには抵抗がある。そこで、全体公開は控えたい。また実名をあからさまに挙げることも控えたい。

現地訪問録は、整理しながら書き進めていくことにする。


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