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タンパク質の一生 -生命活動の舞台裏-【本の紹介】

これまでに食事や栄養に関する本をいくつか読んだことはこのnoteでも何度か触れてきました。

ただ、そのどれもがメインテーマとしてどんな食事を摂ればよいか?どんな生活をすればよいか?といった方法論を取り上げているものばかりでした。

もちろんそういった本のほうが即実践できるので成果につながりやすいです。
でも、本によって主張が違うこともあるため、どれが正しいかを自分で判断するためには裏側の仕組みを知っておくのが望ましいでしょう。

そこで手に取ったのがこの本です。

オススメする理由

タンパク質は3大栄養素の一つなので、重要であることは以前から認識していました。
でも、逆に言えばその程度でした。
すなわち、同じく3大栄養素に数えられている脂質や糖質と同じレベルでしょう、と思っていたのです。

ですが、この本を読んで認識が全く改まりました。
端的に示しているのは以下の一節です。

生物は、糖や脂質などさまざまな高分子物質を作り出しているが、それらの分子そのものを作るための情報はDNAには書き込まれていない。DNAが持っているのは、こうした糖や脂質などを作り出すために働いているタンパク質(多くは酵素)の情報、それらタンパク質のアミノ酸配列を指定する情報だけなのである。

私は本を20%ほど読み進めたところに出てくるこの1節で一気に引き込まれました。
DNAが生物の設計図であることは以前から認識していましたし、メディアなどでもよく言われています。
ですが、具体的にはタンパク質の設計図であり、そのタンパク質の種類や量などによってその他の体を構成する物質や作用が決まるのだ、と認識したのはこの時が初めてだったからです。

本の概要

まずはタンパク質とは何ぞや、という話から始まります。
タンパク質はアミノ酸がたくさん結合してできたものです。
アミノ酸がいくつかつながったものをペプチドと呼び、それがさらにたくさん1列につながって折りたたまれたものがタンパク質です。

アミノ酸とタンパク質

タンパク質を構成するアミノ酸は20種類しかありませんが、タンパク質の種類は数万にも及びます。
数万の種類の中には、筋肉を構成するアクチンやミオシンと呼ばれるものや、美肌効果で有名なコラーゲンなども含まれます。
また、生体内の様々な化学反応を触媒する酵素もタンパク質です。

その後細胞や内臓などといった生体を構成する要素についての説明があり、その中でタンパク質がどこにあり、どのように振る舞うのかについて具体例を交えて語られています。

例えばブドウ糖がエネルギーとなる反応、もともと雌である受精卵が雄に変わる反応などはすべてタンパク質によってもたらされることなどが説明されています。

1章でタンパク質の働きが説明されると、2章ではDNAがどのように情報を伝達し、タンパク質を形作るのかについて詳細に説明されます。

3章以降はタンパク質がどのように体内の目的地に輸送されるのか、どのように生まれ変わるのか、どのように不良タンパク質が淘汰されるのかに説明が割かれています。

感想

著者は細胞生物学者ですので、内容は学術的です。
しかし、非常にわかりやすく書かれています。
しかも普段よく耳にするけど実はよくわかっていないDNAや酵素などについて丁寧に説明されているので、「そういうことだったのか!」という発見が数多くありました。

タンパク質によってもたらされる種々の反応は、さながら精密機械のようでもあり、むしろ精密機械を越えて魔法のようなものまであります。
実用上も生活の改善や病気の予防などを考える際に役立つ知識がたくさん盛り込まれていますが、なにより読み物として面白い本でした。

私はこの本をきっかけに学術的な本を何冊か読み始めました。
それらを読み進める上でも、タンパク質についての基礎的な知識をこの本で身につけられたことは大きく役に立っています。

著者紹介

永田和宏
京都産業大学教授、京都大学名誉教授
著書巻末より引用


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