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アメリカで家を買った実体験から不動産テックを考える

さて、前回前々回と家を売った話をしたので、今回は家を買った話をしたいと思います。
家を買う行為は、売る行為と比べて、苦痛が少ないプロセスですが(お金を払う側なので当然ですが)、最大のペインポイントは住宅ローンを組むところでしょう。

まずは、家を買うプロセスをおさらいしたいと思います。

1.家を買うプロセス

一般的な家を買うプロセスは以下の通り。

①銀行に行って、自分がどこまでローンを受けられるか相談する(Pre-qualification Letterというものをもらう)
②リアルターをつけて、欲しい家の目星をつける
③オファーを出す家の情報を銀行に教えて融資証明を取得、家のオファーを売り主に出す
④オファーがAcceptされると、Inspectionその他もろもろ銀行とやり取り
⑤決済

まず、①ですが、一番最初にしないといけない行為は銀行に行くことです。なぜなら、アメリカではオファーを出すときに資金証明をしないといけないからです(正確に言うと法的義務はないけど、資金証明がないオファーがまともに売り主に取り上げられることはありません)。なので、まず自分達がどれ位の融資を受けられるかということを明確にしないといけません。

自分達の融資可能額がわかると手持ちの現金と合わせて予算が決まるので、家探しのプロセスに移ります。以降のプロセスは、前回前々回の記事で売り側から触れているので割愛します。

2.ペインポイント

さて、このプロセスのどこがペインかというと、家を初めて買う場合はストレートで特段問題がないのですが、家を買い替えるとなったときに急に問題になります。というのも、家を所有していると普通は家を売ったお金で次の家を買おうとしますよね?(家を売らなくても、手元の現金だけで次の家を変えるリッチモンドの方は、まったくペインポイントがありませんので対象外です笑)そうすると、オファーが条件付きになってしまって結局家が買えないことです。もう少し詳細に見ていきましょう。


③で「銀行に買いたい家の情報を教える」と書きましたが、融資証明を銀行からもらうためには、銀行側に「どの家をどの位の価格で買うか」ということと、「融資額とオファー価格の差額の資金証明」を銀行に提出することで、銀行から「xx円融資します。オファー金額はXXです」という書面がでてくるわけです。現在、家を所有していて、それを売却することを前提にしている場合は、そこの書面に「ただし、現在所有している家が売却されることを条件にする」という文言が入ります。また、「売却を前提に考えている」程度ではだめで、銀行からは少なくとも実際に売却活動に入っていることを求められます。売却活動をしていないと信憑性がないためです。


一方で、売り主からすると、条件付きの融資証明はほとんど説得力がありません。実際に、我々が売却活動しているときも2件ほど売却条件付きのオファーがありましたが、そもそもそちらの売出条件がむちゃな条件でとても成立するとは思えなかったので、Acceptしませんでした(一旦、AcceptしてしまうとUnder Contractになってしまい、売却活動ができなくなるので、結構リスクがあります。「結局、売れませんでした」で逃げることが可能だからです)。また、家を買いたい人はたくさんいるので、わざわざ条件付きを選ぶ必要がないという理由もあります。


従って、家を買い替えるプロセスでは、「まず家を売る→アパートに一旦引っ越す→家を買う」という手続きを踏まないといけなくなります。これは相当面倒です。なぜなら①家を売る期間だけでも数か月かかる上に、②家を買い替えようと思ってからなぜかアパートに引っ越すという全く心躍らない期間を経なければいけない(普通、家のほうがアパートより快適なので)上に、更に③オファーを出せるタイミングが家を買おうと思い立った期間から数か月後になってしまい、時機を逃す恐れがあるからです。

3.不動産テックのソリューションと問題点

これに対する1つのソリューションは前回お話した通り、OpendoorなどのCash Offerです。さくっと売ってしまえば、①のペインは解消します。

今回は、それよりも買い替えに特化したKnockという会社を紹介したいと思います(HPはこちら)。彼らは「Trade-In」というサービスを展開しているのですが、それは、まず売り主に査定額を出して、Cashで買うことを約束したうえで、売り主が買いたい家を売り主の代わりに買い、差額を決済するというものです。
サービス内容だけ聞くと素晴らしく良さそうです。おそらく各種フィーは取られるでしょうが、先ほど述べた①から③のペインポイントを見事に解消できるうえに、利用側からすると、もともとアパートに引っ越すと発生していた引っ越し費用とアパート代の合計額が解消されるので、その額との比較で、そこまでだったらフィーを払ってもいいという判断ができるのではないでしょうか?
問題点は対象としているエリアがまだ全然ないということです。現在の対象エリアは下記のようです(HPから抜粋)。

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当たり前ですが、Opendoorと同じジレンマを抱えているので、どこまで対象エリアが増えるかは疑問ですが、少なくともOpendoor位には展開できる(現在のOpendoorの対象エリアはこちらです)はずなので、ぜひとも頑張ってほしいところです。

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さて、ここまでつらつら書いてきましたが、私の実体験が全然出てこなかったことにお気づきでしょうか?(笑)


実は、我々は家を買うには買ったんですが、まずCashで買って、そしてその買った家を取り壊し、家を建てるということをしました。いわゆるカスタムビルドというやつです。それはそれは苦痛な経験でした(笑)。私が職場で、「家を建てる」と言ったときに周りからは「やめろ」「自分もしたが二度とやりたくない」と言われました。同僚は不動産投資を仕事にしている人たちですよ!?それをノンネイティブである我々がアメリカでやるわけですから、どれだけ大変なのかと不安な気持ちになりましたし、実際、大変でした。次回は、そこら辺の話をしたいと思います。