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アメリカで家を売った実体験から不動産テックを考える(後編)

これまで、自分が金融×不動産×データの領域で仕事するきっかけになった仕事を紹介してきましたが、今日は不動産テックについて、自分の体験からつらつらと思うところを話したいと思います。
ーーー長くなったので前編後編に分けました。前編はこちらーーー

0.初めに(再掲)


私は不動産テック業界にいるわけでも、不動産エージェントとして働いたこともありません。ただ自分の経験(個人で家を売却したことと、不動産投資関連の仕事をしていること)から感じたことを書いているだけです。もし、「ここ間違ってるやんけ」とか「全然わかってないやんけ」というご意見・ご感想があれば、(お手柔らかに)コメントください。

3.不動産テックのソリューションと問題点

前編で「2-1.エージェントって必要?問題」と「2-2.内見の対応大変すぎ問題」を書きましたが、アメリカではそれらに対応した不動産テックが誕生・活躍しています。

まず前者ですが、ポータルサイト自身が仲介の分野に進出するというモデルがあります。例えばRedfinは4%で売りをサポート(Listing含む)してくれます。これは前編で言った通り、エージェントの集客での最大の仕事は各種ポータルに載せることになっている今、理にかなっていると思います。ただし、そうは言ってもこまごまとしたリアルでの仕事はあるわけで(看板を立てるとかを含め)、どこまでサポートしてくれるのかな、というのは気になるところです。私は体験したわけではないのでわからないのですが、実際にはRedfinが仲介している物件の看板は結構見ます。障壁は「何となく不安」「何かあった時に不安」というものですが、これは体験した人が増えていけば、ある程度解消されると思うので、頑張ってもらいたいところです。
その他、いろいろな仲介会社が出てきているようですが、そこら辺の詳しい話はこちらに素晴らしいホームページがありますので、こちらをごらんください。
->https://medium.com/@coichikawa (*1)

で、私が今回主にお話したかったのが、後者の「2-2.内見の対応大変すぎ問題」です。最近はこの面倒なプロセスを飛ばして、会社が一気に家を買い取りますよというサービスがあります。最近では、iBuyerと呼ばれている会社達で、Opendoorが老舗だと思います。ここの業界はかなりホットなエリアで、現在もいろいろな新規参入や提携が進行中であったりするのですが、実は家を売却するときに私もOpendoorを使ってみようかと検討したことがあり、結局使わなかった(使えなかった)ということがあったので、その体験をシェアしたいと思います(*2)。

3-1.我が家の基本情報
Opendoorの話をする前に、まず我が家(当時)の基本的な情報をおさらいしたいと思います。私はDallas/Fort Worthエリア(以下、DFWと言います)に住んでいまして、その中でもDallas中心部であるDallas cityから40-50分ほど北にいったところにあるFriscoという郊外に家を買いました。2015年当時、DFWエリアは不動産価格上昇で非常に盛り上がっていましたが、なかでもFriscoは盛り上がっていました(*3)。理由は、いろいろなところから人口流入が続いていて、人口がどんどん増えていたからです。特にカリフォルニアからの人口流入は多く、トヨタの北米本社の移転などはその象徴的なものです。そのような中、私も流れに乗って家を買うことにしました。家は、4 Bed Roomで、ディビジョンの中では低価格帯に位置しておりまして、非常に手頃なのでは、と当時は思っていました。

3-2.Opendoorのオファー(2016年)
2015年に売買契約を締結したのですが、まだ建設中であり、実際に入居したのは2016年です。そんな中、Opendoorの噂を聞きつけ、興味本位で見積もりをとってみることにしました。その当時、OpendoorはDallasとPhoenixにしかサービスを展開していなかったのを覚えています。
それで申し込みをしてみると小一時間ほどでオファー金額が出まして、4300万円ほどでした。ちなみにポータル大手のZillowでもZestimateという金額がありまして、それでもほぼ同額位の見積もりだったのを記憶しています。
Opendoorから見積もりをもらったものの、もちろん売る気がなかったのでそれ以上話は進まなかったのですが、見積もりの中で気になったのは、サービスフィーのようなもので5%位が費用として計上されていたことです。そしたら、普通に仲介通して売るのと変わらんやん!と当時の自分は思って、担当者にもその旨伝えました。

3-3.Opendoorのオファー(2018年)
時は流れて、自分が本当に売却する段になったのですが、Opendoorのことはこれっぽっちも検討に入れず(だってエージェント通して売却活動したほうが上値を狙えるかもしれないから)、エージェントと契約して、売却を始めます。Listing Priceは4300万円位から始めたのですが、全然、オファーが来ないので、ズルズルとListing Priceを落としていきました。その間も絶え間ない内見のオファーがあり、段々疲弊していく我が家。そこで思い出したのが、Opendoor。そうだ、そこに売ればいいじゃん、と思い、再度連絡を取ってみたのでした。結果、「我が家の地域は金額の変動が激しいので現在は買い取りをしていません」とのこと。こうして、Opendoorを使うことはありませんでした。
結局、売却価格は買った価格より低くなり、損をしてしまったわけですが、なぜそんなに低くなってしまったかと言うと、供給過多が要因だろうとおもいます。ちょっと離れれば、同じくらいの金額でそもそも新築が買えるのにこの金額で買うか?という状況になってしまい、エリア全体が値崩れしました。Texasの広さを舐めたらいけませんね。さらに北に行けば広大なフラットな土地がまだまだ広がっています。

さて、結果、Opendoorの判断は正しかったわけですが、私が感じたことは以下のようなものです。
1.転売で益を出そうと思ったら、「安く買って高く売る」が基本。5%程度のバッファーでは怖いので、不動産価格が安定している地域か上昇している地域しか買えない
2.そうなると、Opendoorに売る必然性がそもそも乏しい。Opendoorがお客に渡せるベネフィットが「面倒な内見をすっ飛ばせます」ということのみになってしまうが、そもそも価格安定している地域や上昇している地域ではダラダラと売却活動をしないだろうと思われるので、そんなにベネフィットとして感じるかは不明


ということで、全然、ペイン解決してないやん!と感じました。ただ、会社は成長しているし、業界全体もどんどん大きくなっているので、上記のジレンマに上手いこと折り合いをつけて成長していっているんだろうなとは思いますが。私が住んでいるDallas地区ではまったく見かけず、最近はCOMPASS(*4)が多いように感じます。

4.日本での動きと課題

日本でも不動産テックの業界が盛り上がっており、協会も設立されたようですが、iBuyerと同じくアルゴリズムで価格査定をする(買取まではいかない)会社があります。ただ、日本ではそもそも不動産価格が上昇するというファンダメンタルズが見えにくいことと、やったとしても取引量が少ないのでビジネスとして成立させるのは難しいかと(普通の感想ですみません。業界関係者みんなそう思っていると思いますが笑)。
Opendoorも最初はDallasとPhoenixで始めたということは、人口が増えていて不動産価格上昇(正確に言えばした支え)の基礎があり、郊外型の都市で同じようなSingle Residential Houseのvolumeがありそうなところを狙ったということでしょうから、その二つの前提条件が揃っていない日本市場では難易度は更にあがりそうです(そもそもやる意味ある?という問題がある)。

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以上になります。
これからも日米の不動産テック業界で気になったことを書いていきたいと思います。

(*1)市川さんという現役バリバリのシリコンバレー在住不動産テック会社のVice Presidentという方がブログを書いておられ、詳しい業界動向が載っています。全然、面識はないのですが、勝手におすすめさせてもらっています。
(*2)iBuyerについても市川さんのブログに詳しい動向が書かれていますので、業界動向や最新の状況を知りたい場合はそちらをどうぞ。私はいちユーザーの視点から体験談を共有したいと思います。
(*3)Money誌が選ぶNo1住みたい街2018にも選ばれました(こちら)。
(*4)Property Techと言ってるけどただの仲介なんじゃないの?という疑惑が晴れない仲介会社。