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Residential Mortgage Trading Business概要(後編)

今日は自分がやってきた仕事で、私が金融×不動産×データの領域に足を踏み入れるきっかけになったビジネスの概要を紹介します。
長くなったので、前編・後編で記事を分けました。前編はこちら

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4.Closing概要

さて、Bidでめでたく1st placeがAwardedされるとClosing に移ります。ここでは、膨大な資料が提供されますが、それを確認して、Tapeとの齟齬があった場合は、買い取り対象から外すか価格を交渉する、ということになります。
具体的に見るべきポイントは下記になります。

4-1.不動産価格
SellerからBPOが提供されると書きましたが、今度は自分たちでBPOを発注して差額を見ます。あまりに違いがある場合は、理由を確認してSellerと交渉します。例えば、Seller BPOでは4 Bed roomだけど実際はもっと部屋数が少なかった、など。

4-2.登記
こちらではTitleと言います。これはきちんと登記されているか、ほかに抵当権がついていないか、などです。よくあるのは税金がattachされてるとかHOA(*1)の未払いがattachされてるというものです。アメリカではTitle Insuranceというのに入っているので、もし登記自体に間違いがあっても保険でカバーできます。

4-3.FC Status
FCがどこまで進んでいるか精査します。専門の業者が裁判記録を調べてくれます。FCから派生して他の訴訟が展開されてたりすると、やっかいなことになります(要交渉)。

4-4.バックグランドチェック
日本でもあると思いますが、こちらではFraudの記録を調べたりします。

これを2-3か月で行って、最終的な価格で先方とsettleして終了になります。


5.Asset Management概要

無事にクローズするとアセマネの局面です。基本的にはサービサーが債務者との交渉をやってくれるのですが、分野毎に専門のアセマネを配置して、FC戦略、REO戦略、債務者とのネゴシエーション戦略などを練って、サービサーとやり取りします。基本的な出口は①物件売却、②Discount Payoff(DPO)、③第三者に売却というものです。

DPOは債務者と交渉してこの金額を払えばあとは免除しますというような合意を取り付けて、支払いを受けるものです。もちろんDPOの金額は物件を売った時に得られる金額と天秤にかけます。
第三者に売却というのは、このローン自体を他の投資家に再販売するというものです。そのまま売る場合もありますし、証券化する場合もあります。そのためにも毎日価格をだせるだけのデータの充実度が必要です。また売却する場合はこちらでTapeを用意しないといけないことになります。

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以上が概要になります。

改めてこのビジネスの特徴を考えてみると、
①住宅価格がゆるやかに上がっていくという前提があり、②データ規格が整備され(Tapeの規格、HPAの指数、FICOなど)、③巨大なデータを扱えるテクノロジーが支えている、ということかと思います。

逆に日本で(というかアメリカ以外で)このビジネスができない理由は、①住宅価格が上がらない、②取引ボリュームがない、③取引を可能にする指標等が整備されていないということかと思います(アメリカが持つ巨大な単一市場の凄さを感じますね)。


このビジネスをするには巨大な装置(プラットフォーム)が必要で、①データベース、②モデル、③1と2を可能にする人材が必須の構成要素です。逆に言うとそれさえ準備できれば参入できるビジネスと言えます(実際どんどん参入しています)。割と邦銀なんかは得意なビジネスなんじゃないかと思うのですが(要は最後はディスカウント率の勝負になるので)、私が知る限り(すでに何年か前の話ですが)、まだ大規模にやっている日本の会社はいません。ぜひ私を雇って、やってみてはどうでしょうか?(<-これが言いたかった!笑)


(*1)Home Owner Associationで日本にはそれに該当するものはないと思います。イメージはマンションの管理組合に近いです。HOAがある区域とない区域があって、あったほうがいい場合もあるしないほうがいい場合もあります。例えば、私は以前、新興に開発された住宅区域に住んでいたのですが、そこではHOAがありました。HOAは景観も管理していて、例えば、前庭にバスケットゴールを置きたい場合はHOAに許可を取る必要がありました。他にもHOAがコミュニティのためにプールを管理していてそこが使えるとかフィットネスジムもHOAで賄われていました。また、いろいろなイベント(ハロウィーンパーティとか)もHOAで行われていました。今はHOAがない区域に住んでいるので、そのような地域の催しものとか共用施設などはありません。HOA費はもちろんまちまちですが、私の場合は月に$150以上かかっていました。州によってはHOAの未払いはMortgageよりも支払い順位が高かったりします。