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映画レビュー四十七本目:「少しの愛だけでも」

旧西ドイツの映画監督、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品に「少しの愛だけでも」というのがある。

鑑賞したのが30年近く前なので、内容はうろ覚えなのだけど、大体のあらすじを。

何処にでもいる中産階級の家庭。
息子がひとり。
母親は息子に無関心で、子供ながらの悪さをすれば体罰を奮う反面、父親はそれを詰った後に小遣いを与えるだけ。


息子は成人し家庭を持つが、借りたアパートの管理人が父親と瓜二つ。
彼は両親の為に家を建て、自分たちは貧しく暮らす。
結婚生活はすぐに破綻し、青年は管理人を殺す。


これだけ書くと「あ?何故?」と思う人は居るはず。

しかし、この概要だけで「だろうな。」と思う人は、多分正しい躾を受けて来ている。


青年の心情を鑑みられない時代。
「正しい躾」を、子供達は皆受けたがっている。


御自分の幼少期を思い出して欲しい。
育児を母親に投げっぱなしにした父親の不在感。
その父親から投げつけられた言葉の痛さ。
複数の兄弟がいれば、其々に受けた心の傷は違う。


私は繰り上げ長兄なので、物凄く痛かった。


作品では、童貞のまま家族から抜け出したい勢いで結婚してしまった青年の初夜の葛藤まで具に描写している。
その痛々しさがまた切なかった。


最近何かで読んだ話で

「たまたま腹を借りて産まれて来ただけなんだから、家族に縛られることは無い」

ってのがあって、

自分が老いてきて、それが理解出来てきました。

近年「しつけ」と称して幼児を虐待死させる事件が横行しています。
その反面、「この人は、どんな家庭に育ってきたんだろう?」
と思わせるような犯罪も多いです。


この作品は、他のファスビンダー作品と共によく思い出す作品ですし、
「家庭内の人間関係の希薄さが進んでないか?」
と凶悪報道を観る時にも想起します。


楽しいだけが家庭じゃない。
各人の「心の闇」に一緒に向き合ってあげられる力量が

今、最も必要な事だと思います。

正直、それでないとヤバい家多いぞ。

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