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映画レビュー 四十九本目:「バニー・レークは行方不明」

二ヶ月ぶりです。何も観てなかったワケでは無いんですよ。
でも全部お笑い。ここでレビューは書けません。

そんな一瞬ネタ切れっぽい気分の中、NHKBSでコレ。
こんなモノを13時から流す狂気。
いや、流してくれる粋。

というわけで、今では巨匠扱いだけど本人は多分映画ガイキチだった、オットー・プレミンジャー監督作のカルトな一本。
オープニングの、画面を爪で切り裂きながらのロールは、ソウル・バス。もうハズレ無し確定。

と、頭から観客は混乱する。
屋敷の敷地で兎の小さなぬいぐるみを見つける男、スティーブン(「2001年宇宙の旅」のボウマン船長でお馴染み、ケア・デュリア)。
それを拾い上げ、上着に仕舞う。
荷物を運び出す引越し業者たち。
別宅へ宜しくと男は彼らに告げ、オープンカーで仕事場へ向かう。

保育所に子供を預けるも、保育士が見当たらず仕方なく調理師に頼み出掛ける女、アン(キャロル・リンレー)。
食材の買い物をする女。
旧家での日用品を棚に並べ、「今夜はあなたの好きなフライド・チキンよ」と、所属する雑誌社の取材で出向く男からの電話に応える。

女は男の妹。
ここまでの段階で「妹かよ!」と、先ずハメられるのは当然。
しかしそこから、保育園に預けた筈の4歳の娘が消え、保育園での記録も、米国から船で3人がイギリスに来た記録すら無く。
通報し駆け付けた警部(ローレンス・オリヴィエ)も、新居から子供の荷物だけが忽然と消え失せたと訴える彼女を、次第に怪しんで行く。

我々は「最初から居なかった」という「想像上の友人」(イマジナリー・フレンド)」オチなのかと、何度も油断してしまう。

一番怪しまれて尋問を受けた調理師もシロ、園長も誰も彼もシロ。
では、何処に?


本作を語る上で当然引き合いに出されるのが、ジョディ・フォスター主演「フライト・プラン」
と、申し上げるのはネタバレになるので本当はイヤなんだけど、そもそもの「フライト・プラン」を観てる人が多分あまり居ないので続き。


が、結末は「サイコ」的。と言ってもいいのかな。
ただ、そこまでに至る「犯人」の動機と、その脳内のカラクリ。
相手への愛情が凝り固まり過ぎて、嫉妬感を和らげられることだけに特化した「悪戯」

妹の狂い方と、それでも真実と我が子発見の為に尽力する様。
それを後押しする兄。

(観ながら「アニキャラの萌えヲタ」の妄想のまんまか?と)


で、最後に狂おしいほど描写される、幼児退行。
それは度々、見下げる対象としてネットにも挙げられてくるけど、シスコンに燃える青年の「楽しかった日々へのノスタルジア」への執着は、もしかしたら誰しも

少しはシンパシーを覚えてしまうかも。
行き過ぎてるのは頂けないけど。

妹が病院送りにされた所から、話が急展開して全てが明らかになるのだけど、そこから兄の恐ろしい計画がバレて行って、狂気の果ての結末を迎える。

当初のキャストは、妹アン役にジェーン・フォンダ、兄スティーブンにライアン・オニール、ニューハウス警部はジョージ・C・スコットだったそうだけど、絶対にこんなタッチの作品にはならなかった筈。
とにかく怖くて面白い。やっと観られたことが本当に嬉しい。
公開から55年も経ってるのに、怖さは全く古臭くなっていないのが素晴らしい。
サスペンス好きは必見の一作。

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