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あのとき、妻はなぜ納豆オムレツを食べられたのか?

これまで、ワインを題材にした漫画がたくさん出ています。中でも、人気作の一つが『神の雫』🍷

その続編『マリアージュ』には、一風変わったソムリエが登場します。

「その人物は、今、正に命尽きようとしている人から依頼を受けて、人生の最期に飲む1本のワインを探し出して、末期の水代わりにサーブすることを仕事にしている」

作:亜樹直 画:オキモト・シュウ『マリアージュ』24巻より

思い出の場面で飲んだ、あのワイン。銘柄は覚えていないけど、もう一度だけ味わいたい。そんな1本を微かなヒントを頼りに見つけるんです。

作中で、その人物はこう名乗っていました。

「終末ソムリエ」

さて、どうしてこんな冒頭なのか。

それは〝終活〟と関係していると思ったからです。

エンディングノートの中には、人生が終わるまでに作っておきたい思い出について書く欄があります。僕が妻を亡くしたときに「聞いておくべきだった」と後悔している部分です。

しかし先日、74歳の両親にエンディングノートを書かせてみて衝撃を受けました。

「もうこの年齢になったら、したいことなんてないよ」

なぬぅぅぅぅぅ!

確かにいきなり尋ねられても困るかもしれないけど、口を揃えて「ない」と即答するとは。旅行とかさ、そういうのはないわけ?

「ないない」

ここで僕は引き下がりました。が、失敗でしたね。

終活って本人のためでもあり、残される人のためでもあるんですよ。だから、本人が「思い出はいらない」と考えていても、残される人が「思い出を残したい」と望むなら、作っていくべきだと思うんです。

では、一体どうしたらよかったのか。

後になって気付いたんですが、思い出の味を聞くのも手だったなと。

自分に置き換えて考えてみました。人生を終えるまでに味わっておきたい思い出の味、なんだろう?って。

そしたら、自分でも意外なものが最初に浮かんだんです。

納豆オムレツ。

人生でほとんど食したことがないメニューです。つまり、大好物というわけではない。でも、特別な思い出があるんですよ。

あれは妻と付き合い始めのころだったから、20年近く前かな。高田馬場にある居酒屋でデートをしました。確か、九州系のお店だったと記憶しています。

僕はこのとき、初めて妻が納豆嫌いであることを知りました。

僕「頼む前に言ってよ」
妻「いいの、いいの。食べて。あ、でも食べてみようかな」
僕「お、そう?」
妻(パクっと)「……あ、美味しい」

妻はなぜ納豆オムレツを食べようと思ったのか?

その後、二度と納豆を口にしようとしなかったので、食わず嫌いを克服したわけではなかったと思うんです。

ということは、僕のためにチャレンジしてくれたのかな。

だとしたら、すごくうれしい。だからこそ、また味わってみたいんです。

……ほら。

このように話を持っていったら、思い出なんかいらないという人からも話を引き出せそうではありませんか?

ちなみに、あなたにとっての思い出の味ってなんですか?

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