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たった一文を意識するだけで、あなたの文章は劇的に変わります。

昔、僕の原稿はちょいちょいこんな指摘を受けていました。

「なんだか、構成がつるつるしている」

変わった言い回しですよねー。意味はというと……、

つるつる=凸凹がない
凸凹がない=尖っていない
尖っていない=印象に残らない

ってことみたいです。

この〝つるつる病〟が発症すると、取材はおもしろかったのに、原稿はつまらないという現象が起きます。現場でおもしろく感じた部分は入れているのに、なぜかつまらない。

不思議でしょう?

実はこの病にかかる方、僕を含め業界にはたくさんいるんです。

治療法は、あります。「おもしろがる」意識を持つことです。

ちょっと練習してみましょう。

『桃太郎』の冒頭部分をイメージしてみてください。一般的には、このように伝えようとするのではないでしょうか。

①むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいた
②おじいさんは山にしば刈りへ、おばあさんは川に洗濯へ
③川上から大きな桃が「どんぶらこ、どんぶらこ」

ハイ、ストップ。まだ桃太郎が生まれていないけど、ストップ。

この時点でもう〝おもしろがれる〟部分があるでしょう?

そう、川上から大きな桃が流れてくるという異常事態!

つるっとスルーしてしまってはもったいない。普通ではありえないことなので、ここは際立たせましょう。では、どうしたらいいか。

最もシンプルな手段は「振り」を入れることです。

例えば、②と③の間にこう足してみる。

①むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいた
②おじいさんは山にしば刈りへ、おばあさんは川に洗濯へ
🌟すると、おばあさんの長い人生で初めての出来事が起きた

③川上から大きな桃が「どんぶらこ、どんぶらこ」

たった一文、振ってあげるだけでも印象的になったと思いませんか。③の文頭に「あろうことか」とか「なんと」を入れたら、さらに強調されます。

もうひとつ〝おもしろがり方〟を紹介しましょう。『桃太郎』のつづきです。

④おばあさんはその桃を川から取り上げ、持ち帰った
⑤そして、それを切ろうとしたら、中から元気な赤ん坊が!

ハイ、ストップ。桃太郎が生まれたばかりだけど、ストップ。

ちょっと疑問が浮かびませんか?

おばあさんは、どのようにして川から桃を取り上げたのか?

「どんぶらこ、どんぶらこ」という表現から、桃はなかなかの大きさで、川はそこそこ流れが激しいことが想像されます。

おばあさんが「ざぶん」と飛び込んだとは考えにくい。

そこで大事になってくるのが「ディティール」です。

調べてみると、実はこんな描写があるんですね。

おばあさんは「あっちの水は辛いよ、こっちの水は甘いよ」と声をかけて、桃を川岸まで呼び寄せたのだそうです。

またしても、たった一文で印象的になったでしょう?

〝つるつる病〟の治し方ってこういうことなんです。

まずは、おもしろがれそうな箇所を見つける。そして、それを引き立たせる一文を足す。

その一文一文の積み重ねが、文章全体の〝個性〟にもつながっていく。

ぜひ意識してみてください。書くときも、話すときも、かなり印象が変わってきますよ。

ということで、今回はここまで。桃太郎、鬼退治に行っていないけど笑

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