たった1回の「どうして?」であなたの表現は深くなります。
何人かのディレクターに、こんな質問を投げかけてみました。
「漫画とかでさ、主人公がピンチのときににかつての敵が駆けつける展開、よくあるでしょう? あれってどうして胸アツなのかな?」
あなたはどうしてだと思いますか?
ちなみに、ディレクターたちはというと、
「え……、どうしてだろう?」(説明できない)
「敵だった人が味方になったから」(説明になっていない)
意外とすぐには出て来ないようでした。
さあ、あなたはどうですか?
もし答えに窮しても大丈夫。それは〝文章の伸びしろ〟があるということです。
先ほどの質問、僕なりの答えはこうです。
一つ、戦力が充実するから。
主人公を苦しめまくった敵が、今度は味方としてその実力を発揮してくれる。こんなに心強いことはありません。
二つ、承認欲求が満たされるから。
主人公のことを頑なに否定してきた敵が、考えを改めて歩み寄ってきた。主人公に感情移入してきた読者は、認めてもらえたうれしさを感じることでしょう。
三つ、意外性があるから。
味方になるはずのないキャラクターが、まさかの登場。読者はサプライズに心躍ることになります。
僕が思ったのは、この三パターン。まだあるかもしれませんね。
野球の解説者がよく口にするのですが、
「なんとなく投げたボールは打たれる」
配球には一球一球〝根拠〟がなくてはならないという教えです。人になにかを伝えるときも同じだと思います。
僕自身、苦い経験をたくさんしてきました。
企画書の段階では「おもしろそう」だったのに、構成に落とし込んでみると、なぜか「おもしろくない」……。
そんなときは大体、わかった気になって原稿を書いて〝おもしろさの理由〟を掘り下げられていないことがほとんど。
つまり「どうして?」が足りていないわけです。
主人公のピンチにかつての敵が駆けつけた。
しかし、その事実だけでは胸アツとはなりません。駆けつけた敵がもともと強くなかったら? あるいは駆けつけた途端にかませ犬になってしまったら?
むしろ、がっかりしてしまいますよね。
戦力を充実させないことには、王道の演出でも効果は半減してしまうわけです。
その題材は、どうしておもしろそうなのか。
その人物は、どうして共感できるのか。
その行動に、どうして感動できたのか。
たった1回「どうして?」と立ち止まるだけで、あなたの表現は深くなるはずです。
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