銃撃事件が起きたことで、僕の仕事が〝飛び〟ました。
「飛ぶぞ!」
近年では長州力さんでおなじみですが、僕が働く業界では昔から使われているフレーズです。一体どんなときに使われるのかというと……、
制作していたVTRが、なんらかの理由で放送できなくなったとき。
社会に大きな影響を及ぼす出来事だったり、緊急性の高い事件だったり、本当に様々な理由で飛ぶんです。
今回もありました。
安倍晋三元首相の銃撃事件です。
予定では、きのうはパリ五輪の新競技である「ブレイキン」の企画を放送するはずだったんです。ちょうど前日まで国際大会が行われていましたし、日本人が大活躍を見せたので。
しかし、まさかこんなことが起きるなんて。20年近く報道番組に関わっていますが、銃撃事件での「飛び」は初めて経験しました。
では、過去にどんな飛びがあったのか。
一番は大災害が起きたときです。
中でも印象的なのは、2011年3月の東日本大震災。当週の放送はおろか、動いていた先々の企画も全て白紙になりました。
日本中がスポーツどころではなかった。あの期間は自分の仕事についていろいろ考えさせられましたね。
余談になりますが、災害のニュースがある日はナレーションなどの言い回しに注意しなくてはなりません。
津波で被害が出たとき、スポーツコーナーで「〇〇は好調。波に乗っています」、大火災のときに「燃える男!」「〇失点で炎上」なんて表現は、災害を連想させないために避けるようにしています。
話を戻します。
次に紹介する事例は、間が悪い場合です。
実際にあった例で言うと、東京五輪に向けた水上タクシーの企画を用意していたところに、水害が発生してしまった……。あとはサッカー北朝鮮代表の企画を用意していたところに、ミサイルが発射されてしまった……、なんてことも。
これらの場合、ネタの中身が違うものであったなら放送できたんですよ。間が悪いとしか言いようがありませんよね。
「そんなことある?」と思ったのは、2012年6月の事件。
東京・蒲田でオウム真理教の元信徒が逮捕されたんです。特別手配されていた最後のひとりが捕まったということで、放送当日にいきなり企画の飛びが決まりました。
まあ、このように長く関わっていると様々な飛びを経験するわけです。
不思議に思うのは、こうした出来事ってなぜか仕事の進捗が順調すぎるときに起こりがちなんです。フラグを立てて、回収される感覚。結局、放送日がズレたことで内容の一部を変更する手間が発生してしまいます。
逆にVTR制作に苦しんでいる、いくら直してもしっくり来ないときは絶対に飛びません。なので、過去に「飛んでくれてよかった!」と思った記憶は皆無です。
単なる偶然とは思うのですが、本当に不思議。
🌟もし、この記事があなたの心を動かすことができたなら、ジュース1本分だけでもサポートをお願いしてもいいですか? 🌟サポートいただけた方には当ページであなたの紹介記事を掲載します。