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「放送作家」関の成分表

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🌟僕の心が丸裸になってしまう文集🌟放送作家はどんなことを考えるか🌟亡き妻との思い出🌟シングルファーザー奮闘中🌟たまにはオリックス愛も語らせて笑🌟
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#私の仕事

この気持ちを「放送作家の焦れんま」と名付けよう。

〝ジレンマ〟という言葉があります。 あなたにもあるでしょう?  なにかを優先すると、なにかが犠牲になる。 どちらを選ぶか、とても悩ましい。 そんな状態に陥ることが。 もちろん、僕にもあります。 今日は仕事でよく陥る〝放送作家としてのジレンマ〟について。 僕の〝ジレンマ〟とはどんなものか。 それを語る前に、僕が毎週どういう流れで仕事しているか説明させてください。 大体、こんな感じ。 <企画準備> ネタ出しとネタ選び。さらに、通ったネタについては取材などに向けて

三方よしの仕事術。周りからの評価がこれで変わりました。

次の企業にはある共通点があります。それは一体なんでしょう? 伊藤忠商事(総合商社) 日本生命(保険業) 西川産業(寝具など) 高島屋(百貨店業) ワコール(繊維製品) 正解は「近江商人にルーツがある企業」です。 近江商人とは近江国(現在の滋賀県)から他国へ行商して歩いた商人たちの総称で、江戸中期から明治期にかけて活躍しました。 彼らは〝よそ者〟でありながら、その土地で人々の信用を勝ち取り、持続的経営を実現させています。その根本にあった理念はいつからか、こんな言葉で表現

あなたはきっと〝湯上りの一杯〟が欲しくなーる。

高くそびえ立つ煙突。 プラスチック製の桶。 足を伸ばせるほど広い浴槽。 上京したてのころ、家の目の前にあった昔ながらの銭湯。お金に余裕のなかった僕にとっては、とても特別な場所でした。 当時の反動なのか、今も自分を労いたいときは銭湯を堪能したくなります。 ハァ~ビバノンノン🎵 さて、きょうはそんな銭湯に関するお話です。 あなたは湯上りの一杯、なにを飲みますか? やはり、定番の〝コーヒー牛乳〟? それとも、大人の特権で〝ビール〟? サウナにも入るなら〝オロポ〟もありか

映像作品の原稿を書くことは、ある意味で野球に通じている。

僕の職業は放送作家です。 ストーリーを構築したり、ナレーションを考えたり、演出のアイデアを出したりして、番組(映像)のクオリティを上げるのが役割です。 中でも、重要な仕事のひとつが原稿(=構成=台本)の作成。 映像制作における原稿って、見たことはありますか? 人によってフォーマットは違うのですが、僕の場合はこんな感じ(↓)。 左の欄に〝画の指定〟 右の欄に〝音声〟 その間に〝尺〟を書き込んでいます。 放送作家にとっては、右側の〝音声〟が主戦場です。 「N」マークが

たった1回の「どうして?」であなたの表現は深くなります。

何人かのディレクターに、こんな質問を投げかけてみました。 「漫画とかでさ、主人公がピンチにかつての敵が駆けつける展開、よくあるでしょう? あれってどうして胸アツなのかな?」 あなたはどうしてだと思いますか? ちなみに、ディレクターたちはというと、 「え……、どうしてだろう?」(説明できない) 「敵だった人が味方になったから」(説明になっていない) 意外とすぐには出て来ないようでした。 さあ、あなたはどうですか? もし答えに窮しても大丈夫。それは〝文章の伸びしろ〟

たった一文を意識するだけで、あなたの文章は劇的に変わります。

昔、僕の原稿はちょいちょいこんな指摘を受けていました。 「なんだか、構成がつるつるしている」 変わった言い回しですよねー。意味はというと……、 つるつる=凸凹がない 凸凹がない=尖っていない 尖っていない=印象に残らない ってことみたいです。 この〝つるつる病〟が発症すると、取材はおもしろかったのに、原稿はつまらないという現象が起きます。現場でおもしろく感じた部分は入れているのに、なぜかつまらない。 不思議でしょう? 実はこの病にかかる方、僕を含め業界にはたくさ

あなたの文章には伸びしろがあるかもしれません。

ディレクターが書いてきた原稿を読んで「もったいないな」と感じることがあります。 話の本質は掴んでいる。 構成もしっかりしている。 文章が読みにくいわけでもない。 では、なにが引っかかるのか? いくつかあるのですが、きょう紹介したいのは……、 僕が「オートマティック」あるいは「思考停止」と呼んでいる現象です。 みなさん、こんな表現をよく見かけませんか? 場所の大きさを表したいときに使われますよね。もちろん、この表現自体が悪いとは思っていないんです。 ただ、本当にこ

羽生結弦さんの会見から、怒涛の日々でした。

リモートワークはとても便利だけど、良いことばかりではない。 今回はそんな話を書こうと思います。 実は今週、僕はてんてこまいでした。 火曜日、フィギュアスケートの羽生結弦さんが今後について決意表明をしたでしょう? プロスケーターとしてショーを中心に活動していく五輪などの大会には出ない。ただし、従来のようなプロ転向=現役引退ではない。……っていう。 これを受け、僕は怒涛のスケジュールに巻き込まれていきます。 火曜日は『報道ステーション』生出演への対応。 水曜日は午後と

銃撃事件が起きたことで、僕の仕事が〝飛び〟ました。

「飛ぶぞ!」 近年では長州力さんでおなじみですが、僕が働く業界では昔から使われているフレーズです。一体どんなときに使われるのかというと……、 制作していたVTRが、なんらかの理由で放送できなくなったとき。 社会に大きな影響を及ぼす出来事だったり、緊急性の高い事件だったり、本当に様々な理由で飛ぶんです。 今回もありました。 安倍晋三元首相の銃撃事件です。 予定では、きのうはパリ五輪の新競技である「ブレイキン」の企画を放送するはずだったんです。ちょうど前日まで国際大会

快挙達成に思う。〝驚ける〟人ほど楽しめる。

ちょっと日にちが経ってしまったけど、オリックスファンとしてこの話題を書かないわけにはいきますまい。 山本由伸投手、ノーヒットノーラン達成! 史上86人目、97度目の快挙でした。おめでとうございます🎉🎊🍾 最終回、森選手との勝負が最もしびれる場面でした。あのストレート、お見事すぎる😲 なんて球を投げるんですか。 ギレン・ザビが見ていたら、こう言ったことでしょう。 「敢えて言おう、カミであると!」 中継を見ていた僕は大興奮。だって、生まれてから推し球団の投手がノーノ―

放送作家が考える、句読点。音読したくなる文章、書いてみませんか? 

.「せきさんって、A型でしょう?」 ディレクターと一緒にナレーション原稿を直していると、よく言われる言葉です。彼らが最も反応するのは、僕が句読点について細かいところ。 信じられないことかもしれませんが、ナレーションを書く仕事をしているのに、句読点の位置に気を配らない、あるいは打たないって人は意外といます。 だから、きょうは声を大にして言いたいんです。 句読点のこと、考えてみよ? ちょっとの工夫で読んだ人が音読したくなるような文章になるから。 今回、この記事を書く上で

世界遺産・屋久島からの帰り道に、忘れられない小旅行をした。

昔はよくロケに同行していました。 北は北海道から、南は沖縄まで。海を越えて外国にも行きました。時には思いもよらないトラブルに巻き込まれることも……。 思い出されるのは、今から15年前のこと。 僕はある番組のロケで、屋久島を訪ねたんです。 屋久島とは1993年に世界遺産となった場所で、島の90%が神秘的な森に覆われています。とにかく水が豊富な島で、そこら中に水が湧き、流れているんです。しかも、飲める。冷たくて、あま~い! ロケは標高1030m地点にある「ウイルソン株」

あの日から11年、立ち上がる力を。

きょう3月11日は、東日本大震災があった日ですね。 僕の実家は福島県郡山市。津波の被害はありませんでしたが、家が傾いてしまって建て替えを余儀なくされました。 あれから11年――。 毎年、この時期になると僕はTVで震災関連の仕事に携わります。今年もふたつの物語を知ることができました。 ひとつは、スポーツの力を考えさせられた企画です。 福島県いわき市。 フラダンスで有名なこの街は、いま期待で胸が膨らんでいます。 地元のサッカークラブ・いわきFCが、設立たった10年と

陸上・福島千里さんの企画で〝心のノート〟にメモったこと。

きのう、陸上の福島千里さん(33)が引退会見を開きました。 🏅100mの11秒21、200mの22秒88は今も日本記録 🏅五輪は北京、ロンドン、リオと3大会に出場 🏅2011年の世界陸上で日本女子初のW準決勝進出 🏅日本選手権は100mで7連覇、200mで6連覇 と、長く日本の短距離界をけん引してきた選手です。小4から陸上を始めて23年、おつかれさまでした! 福島さんについては『報道ステーション』で企画を担当したことがあります。2010年、100mの日本記録を出したタイ