③佐藤和夫が大切にしている言葉
【「②佐藤和夫のたいせつな1曲」から続く】
3つ目の質問は“座右の銘や、大切にしている言葉”です。
うーん……今、パッと思いついたのは黒沼亮介(盛岡・クラブチェンジ代表)が酔っ払った時に言った“綺麗に殺せ”っていう言葉だけど、“殺せ”はダメだよね(笑)?
その意味まんまで使うのは当然よろしくないけど、ちゃんと意味合いがあるはずよね?
そう。ステージに立つ人間はカッコ良くいなきゃ駄目で、カッコ良く人の心に刺さらなくちゃいけない。MCの言葉だって選ばなくちゃいけないし、音数も多ければ良いわけではない。1本持っているその剣で突き刺すために、自分の剣を毎日毎日、常に研ぎ澄ませないといけない。
ライブが出来る時間って30分とかだったりもするわけで、その30分の間で何回、綺麗な攻撃が出来るか。無様なところが出たら一気に人は離れてしまう、それは一対一の真剣での勝負だった場合、ちょっと隙が見えたら殺される。西部劇の撃ち合いでも同じで。
ライブもやり合いで、一瞬の隙で自分が殺られてしまうかもしれない。だから、ライブは怖さも表裏一体で、1回1回のライブを舐めんな、ステージに立つとはそういうことなんだ、っていうのを黒沼さんは伝えたかったんだろうと思ってるけどね。
なるほど。
そもそも言ったこと自体、酔っ払ってて覚えてないかもだけど(笑)。その時は“いいこと言った!”っていう顔はしてた(一同笑)。
他にもいっぱい言葉はあるんだけどね、“和夫は勝負をしてないから、勝ちも負けもないつまらない人生だな”って黒沼さんに言われたこともあるし。そもそも戦いのフィールドに立ってない、って。だからSaToMansionは賭けに出たの。
それはインタビュー②での話に繋がるね、なるほど。
あとはね、黒沼ゾーンから離れると他にはね、東京に出てきてすぐ始めたバイト先で。ちょっと治安が悪い某駅前の深夜のコンビニで、朝4時から7時くらいまで1人シフトで。“この3時間はお前1人しかいないんだぞ、もし事件とか何かがあったら、あなたの責任になりますよ”って店長に言われたわけ。
けっこう厳しいな…
たくさん研修もするんだけど、やっぱりたくさんミスもするわけよ。“あなたのことを誰も助けてくれませんよ”とも言われてさ。その言葉がすごく残ってて、それは結局、人任せにするなっていうことだなと思って。苦難とか、何かが襲ってきた時にこの言葉が蘇ってくるの。厳しかったけど、愛を持って叩いて怒ってくれた感じがしててさ。
上京して友達とかもいないでしょ、バンドはやっててもバンドの友達もいないし毎晩、夜勤も1人で鬱にもなってくるの。そういう時にその店長の…確かに厳しい言葉なんだけど、愛を感じて“クソ!”って気持ちにもなったし、それがエネルギーにもなったんだよね。“俺、ダメだなぁ”って思った時に誰かのせいにしようとか、やらなきゃいけないことがあるけど飲みに行っちゃおうかな、って逃げたくなっちゃう時とか。そういう時に“お前のことは誰も助けてくれないぞ!”って、言われたことが出てきて。1人でやり抜かなきゃいけないんだ、って。1人シフトの3時間の時だけを(指して)言ってるとは思えなかった、あの熱さは人生のことを言ってたんじゃないかって俺は思うのよ。“佐藤くんは夢を追ってるんだから、頑張って欲しい”って。
兄貴2人から“あそこのコンビニはマジで厳しいぞ、よく行ったな”って後で言われたけどね。声出しとか規律とかも厳しくて。でも今思うと逆に良かったなって、ビシバシやってもらえてすごく鍛えられたから。
ちなみにそのバイト先を選んだのは家から近いとかそういう理由?
それもあったし、コンビニの夜勤で1人になる時間があれば色々と考え事も出来て楽(らく)そうかなって思ったの。夜勤ってお客さんいなくて雑誌読めるとか(笑)、楽そうに見えるじゃん。でも全然そんなことはなかったね。監視カメラで見られてるし、ずーっと掃除してピターっと(商品の陳列を)面出しして、朝のラッシュがくる前に綺麗に品出しして“いらっしゃいませ”って迎えないとだし。それで交代して、朝からスタジオに行くっていう生活だったなぁ。
出会った人にかけてもらう言葉を大切にしてると思うし、そもそも和夫さんは人に可愛がられるタイプだと思うけど、なぜだろうね?
俺が、“欲しがってる”感を出してるっていうのはあると思う。それこそ武井壮さんからもいっぱい良い言葉をもらってて、それ話し出すと終わんなくなっちゃうな(笑)。あと鉄拳さんとかもね。
自分も常に悩みながら、迷いながら生きてるから、先輩から話を聞くって言うのはいっぱいヒントがあって。このままで良いなとかここを変えなきゃとか、全く違う角度からこうすれば良いのか、とかが出てくる。自分が常に迷ってるから、色んな人の話が純粋に刺さってくるところがあるのかもしれないね。
悩んだり迷ったり、っていうのも口に出してるんだ。
そうだね。自分たちは大きなバックボーンがあるわけでもないから自分を信じて進むしかないし、自分でゴールも決めなきゃいけない。となると、不安にもなってくる、誰かにすがりたい気持ちにもなると言うか。アルバイトの時は店長がいてゴールを導き出してくれるからそれで良いけど、今の自分たちはそうじゃない。自分たちで正解を決めなきゃいけないし正解にしなきゃいけない。第一線で活躍してる人たちはそれをやれている・やってのけている人たちだからヒントがあるし、そういう人たちのそばに自分を置いて、その空気に自分をさらしておきたい(笑)。
でも今日は話しながら、ずっと良い顔で喋ってるのが良いよ!
“いや~、どうしよっかな”って言ってるぐらいが多分、ちょうど良いんだと思う。走り続けなきゃいけない、けど、それが好きだからやってるんだろうね。無理もしてないし。
今回のインタビューで多々、名前が出ている黒沼さんも関わる盛岡・いしがきミュージックフェスティバル(以下いしがき)。SaToMansionは出演アーティストの第一弾として発表がありました。
はい!いしがきではね、それこそたくさんの出会いがありました。いしがきを通して出会った先輩もたくさんいるし、いしがきから学んだこともたくさんあるし。
実行委員会があって、朝も早くから夜も遅くまで働いて準備してるスタッフがいる。1つのイベントであの笑顔や熱狂を作るってこれだけ大変なんだなっていうのを…俺がハタチぐらいの時にいしがきが始まったんだけど、その時から近くで見せてもらって、スタッフがどういう動きをしてるかとか、黒沼さんがどういう動きをしてるかとか。俺はずっと見て追っかけてたし、“ここでこういう動き方するんだ”って俺、気持ち悪がられるぐらい見てたんですよ(笑)。その1つ1つが勉強になったし、先輩とか人との付き合い方ももしかしたら、いしがきから学んでるのかも知れない。
黒沼さんにしても、同世代もいるけど先輩も下の世代のブッキングもしないといけないし、(そういうのを見て)身の振り方をすごく近くで教わったなっていうのがあるから。(自分の)周りに色んなジャンルの人がいるのは、いしがきを通して自分の身の振り方を学んだところがある、かもね。
原体験として二戸で見ているイベントが、盛岡の街ナカで開催されるいしがきというフェスを通してもっと大きなものに触れられた感動もあるのかもね。
そうだね、そういう感動はあると思う。いしがきは特別なフェスだなぁってすごく思う。たまーに「いしがきCHANNEL」にも出させてもらったりもしてね。
【「④佐藤和夫のこれから」(終)に続く/9月27日更新予定】
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