デンジャラス:桐野夏生:摩擦

「デンジャラス」(082/2020年)

作家が作家を書く。物凄い摩擦を感じる。そこに発する熱、とてつもない。桐野が谷崎潤一郎を書く、それも嫁の妹の視点で、戦中から戦後の時代を駆け抜ける。

残念ながら、谷崎潤一郎、ほぼ読んでいない。「細雪」は舞台でしか見たことがない。改めて、日本人作家を読んでいないことを痛感。でも、これで、少し読みたくなってきた。書物が書物を呼び込む連鎖、楽しいな。

どこまでリアルで、どこからがフェイクなのか。この境界線上を行ったり来たり。桐野の仕掛けに翻弄される楽しさ。タイトル「デンジャラス」の意味を勝手に深読みし戸惑う楽しみ。アートという名の下に、どこまで許されるのか、このテーマは難しい。芸術家の狂気を目の当たりにしているので、本当に難しい。許せないから憧れる、許せないから許せない。

「細雪」を書いた時点でオールクリアという気持ち、とても分かる。人として、決して完成していないけど、それで良いんだね、改めて思う。素晴らしい、文学は。ありがとう、文学。

それにしても、最後の「圧」は、いいね。



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