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カエルの楽園:百田尚樹:筆力、圧倒的

「カエルの楽園」(102/2022年)

2016年発表ですか、まあ問題作。
凄いのが、カエルが主役の寓話なのに、この分量の作品で緩みがないこと。この筆力は圧倒的。ストーリーが圧倒的に完成しているからこそ読み通せるんですよね。百田の作家としてのパワー、感じます。登場人物の緻密な心理描写とか、恋愛模様とか、人間世界ではないので書き込めないじゃないですか。なのに飽きない、物語の強さです。

ご存知の通り、非常に政治的な話です。憲法第9条によって「軍隊」を持つことが出来ない日本のことをカエルの世界に置き換えた寓話ですから。
そんな国がどういう末路を辿るのか、非常に分かりやすく書いてあります。まあ、読まずとも結末は分かるのですが、それを承知で最後まで読むという珍しい読書体験が出来ます。
結果が分かっていてドキドキする作品ってありますよね。歴史モノが最たる例です。明智光秀は豊臣秀吉に負けるのに、その負けを読みたい。それと同じく、この国は亡びるのに、その亡びる様を読みたい、その流れに抵抗する人たちが失敗する様子を見守りたい。
それを読ませるためには作家の筆力がものをいいます。強引に読者を引っ張て行く、読者の方も少々雑でもいいから導いてほしくなるような勢いが感じられる文章を読みたいのです。百田作品だと「海賊と呼ばれた男」とかそうでしたよね。

書かれてから6年、ますます価値を待つ作品に進化していると思います。歴史に残る一冊になるかもしれませんね。

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