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SaaSの営業は既存のお客様へのフォローをサボってはいけない〜既存のお客様向け営業のススメ〜

今回のnoteは既存のお客様向けの営業についてです。
新規のお客様開拓のメソッドは多く世に溢れていると思いますが、
SaaSにおいての既存のお客様へ深耕を営業が行う具体的な手法について書かれているものがほとんどない!ということで、ここを深堀りしていきます。

※お断り

個人的に、お客様のことを顧客と呼ぶことや、オンボーディング&定着活用支援部隊をカスタマーサクセスと呼ぶことを個人的に違和感を感じていますが、読みやすさを重視し、

お客様=顧客、
オンボーディング&定着活用部隊=CS
インサイドセールス=IS

と表現致します。

今回は
・サブスクリプションの概念
・実際に営業はなにをすべきか

という流れで書いていきます。

SaaSの醍醐味はサブスクリプションであること

SaaSの醍醐味は、なんと言ってもビジネスモデルがサブスクリプションであることだと僕は考えています。

長期に渡ってお客様に価値を提供し、
商品自体ではなく、価値に対しての対価をお支払い頂くこと。

そして、お客様のニーズも日々変化していくので、そこに対して調整や改善を続けて、「永遠のβ版」として価値を提供し続ける。

ここに醍醐味があると思っています。

細かいことはこちらに書いています。

この、サブスクリプションにおいて収益を上げていく方法は主に3つあると言われています。

サブスクリプションで成功するための3つの戦略

この3つは過去にも書いたことがあるのですが、

①新規顧客の獲得
②既存顧客へのアップセル/クロスセル
③解約の防止

3点です。

①については過去のnoteで大量に触れてきましたが、
②と③についてメインでお話をしていきます。

ここで、簡単な問題です。

現在、ARR(サブスク売上)が100億円、利益が10億円
この利益を20%アップさせて12億円にするにはどうしたら良いでしょうか。

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細かい話や計算は一旦置いておいて、シンプルな単純計算です。

もちろん、ご想像の通りで、単純計算ではございますが、こうなります。

新規顧客を獲得し、売上を20%上げる。

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もう、シンプルな単純計算なのですが、売上を20%上げることができれば、
利益は20%上がるので、12億円になります。

ですが、サブスクリプションの妙は新規獲得ではありません。
既存顧客へのアップセル/クロスセルは利益に対して直接のインパクトを与えます。

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あくまで単純計算ではありますが、
デジタルで提供するサービスであれば、
既存顧客からの単価UPができれば、大きな原価の変化もなく、
利益に対してダイレクトなインパクトを与えるという表現です。
(CACとかTCSとか、そういう細かい話は今回は割愛します。)

ただ、ここで気をつけていただきたいのは、純粋に既存顧客に対して値上げをしろというわけではありません。

提供する価値を最大化しようという話です。

最もシンプルなLTVの考え方

LTV=顧客生涯価値
すなわち、そのお客様が自分たちに今までトータルでいくらお金を支払ってもらったか。
ということです。

LTVはお客様が多くなってくると個別での算出が難しく、平均のLTVを算出しようなんて言われていますが、僕はその意見に対してはNoだと思っています。今回は割愛しますが、
最もシンプルなLTVの考え方って以下なのでは無いでしょうか?

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縦軸=契約金額
横軸=契約期間
LTV=横軸と縦軸の掛け算で求められる面積

ここで、
縦軸の高さと、横軸の長さならどちらが重要か。

言わずもがな、横軸です。いわば、長期に渡ってお客様に価値を提供し、よりよい関係を構築し続けるということです。

また、ここで言う縦軸の高さというのは、契約金額なのですが、前述の情報を踏まえて言い換えると、顧客に提供する価値の量と言い換えることもできると思います。

顧客のニーズを把握し、提供する価値を最適化する

先程の図では、縦軸が変動しています。
今回はこんなイメージです。

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ここで重要なポイントは、なぜ増減するのか。というところです。

答えはシンプルです。

顧客のニーズは常に変化する

これにつきます。
常に顧客の状況は変化し続けます。
これによって、常にニーズは変化します。

その変化するニーズを把握し、提供する価値を調整する。
そして、常に最適な関係を構築する。

だから、サブスクリプションは永遠のβ版なのです。

では、営業は何をするのか

すこし前置きが長くなりましたが、本題です。
このSaaS×サブスクリプションのビジネスにおいて、営業は新規開拓だけがミッションか。

間違いなくNoです。

私自身もいくつかのサービスの提案を受け、契約をしましたが、
プロジェクトのキックオフになったタイミングでCSの人に切り替わり、営業から連絡は途絶える。

そんなサービスもありました。

確かに、会社としてのフォローアップはできているのかもしれませんが、
今後、顧客のニーズが変わり、追加や削減、オプション追加が発生した際に対応するのはCSなのでしょうか?

仮にCSが新たな顧客ニーズを発掘し、アップセル/クロスセルの案件を獲得したとしたら、もうCSは完全にやっていることが営業になってしまいます。

CSはオンボーディング、活用等のプロフェッショナル部隊だと私は思っています。

もっと、ここに営業に介入をしてほしいと思っています。

ざっとまとめると、こんな感じかなと思っています。

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ポイントは、
対顧客に対しては、いつでも責任範囲が一番大きいのは営業
というのが僕の持論です。

その上で、営業が既存顧客に対して実施すべき活動は主に3つだと思っています。

SaaSの既存顧客営業①:プロダクトセリング

優秀な営業はバリュー(ビジョン)セリングをする。なんて言われます。
ここは完全に合意なのですが、SaaSの場合、あえて初期段階はプロダクトセリングに徹してほしいです。

多くの場合、ビジョンセリングで語られる内容はかなり高いハードルになっていることが多いです。

跳び箱で言うなら、20段くらい。
そんなもの、ケイン・コスギか池谷直樹しか飛べないのです。

なのであえて、5段などの最低限の内容を機能ベースで提案してほしいのです。

ただ、こんな提案だけしていては全く面白くない。
なので、次の10段でできる世界、20段の世界も同時にお客様に提案をする。

その20段のビジョンを実現するために・・・
という前置きしながら、まずは5段を飛びましょう。
という提案を初期段階から盛り込んでほしいのです。

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ここで重要なのが、何ができたら次のステップなのか。という話です。

CRMを例にするならば、

フェーズ①:バラバラになっている顧客情報を1つの基盤上に一元管理する
→蓄積の箱を作る

※ゴールの基準:貴社の既存顧客300社と見込み顧客1000社の情報をCRM上に蓄積
→会社名、名刺情報、電話、メールの基本情報がすべてCRM上に蓄積され、全社員が全てのお客様の情報に関して、同じ情報を把握できる

というくらい、基本的な内容で良いと思います。

多くの方が始めたがるMAやAIを使ったスコアリングなんて、跳び箱10段、20段の話なので、
それらはフェーズ②や③に持っていってほしいです。

まず、フェーズ①の段階を超えたら、次に進みましょう。と、新規営業の段階で合意形成をしてほしいのです。

最初は小さく、後で大きく。

これを、Seeds & Grow(シーズアンドグロウ)なんで言ったりもします。

なので、キックオフや構築の初期段階まで、しっかり営業が同席するべきだと僕は思っています。

SaaSの既存顧客営業②データの確認

SaaSの営業たるもの、常に既存顧客のデータを把握するべきだと思っています。

幸いにもSalesforceやZuoraなどは強烈な製品力によって、様々な顧客データの把握が容易で環境に恵まれていたことは否定しませんが、
どんなSaaSであっても、お客様のデータを把握することができるはずです。

・ログイン率
・入力件数
・出力件数
その他諸々

コレを常に営業は把握をしてほしいのです。

もちろん、これらが常に把握できるようなプロダクトのデータ設計も必要になってくるのですが、営業は変化を常に把握しましょう。

先述のプロダクトセリングでお客様と合意した①段階について、
何かしらのデータで把握ができる内容である。
というのもポイントです。

ですので、データの変化を察知した営業は、
プロダクトセリング時に約束したフェーズ②の提案をしていくのです。
もちろん、新規営業の時点でフェーズ提案をし、活用の支援まで積極的に行っているのであれば、アップセル/クロスセルの提案を断られることはほとんど無いはずです。

SaaSの既存顧客営業③ダウンセル

営業であれば、自ら下位のプランを提案することは気持ち的にしたくないでしょう。

しかし、サブスクリプションにおいては、縦軸よりも横軸と先述した通りで、今の瞬間風速的な売上よりも、長期にわたっての関係構築が大切です。

②でデータを見ると言いましたが、提供している現在の契約に対して使われている量が少ないと感じたら、思い切ってダウンセルの提案をしてください。
(このあたりのデータの基準等は、CSと協力し、ヘルススコアのチェックをしてください。)

契約金額=提供している価値の量
なのですが、その価値をお客様が享受できていない可能性があります。
そのような場合、満足度が低下し、解約のリスクが上がります。

その徴候を事前に見つけた場合は、「どうしたらもっと使ってもらえるか考える」というのが正論なのですが、思い切ったダウンセルの提案をすることも時には必要になります。

一番大切なのはお客様との長期の関係です。
縦軸より横軸です。

番外編:ACVもLTVも上がるダウンセル

ダウンセルをするのに、短期的なACVが上がって、LTVも上がるという、ちょっと変わったパターンもあります。

これは、想像以上にお客様の利用が活発で、更には成長している場合です。

細かい説明を色々と考えたのですが、ざっくり言うと、ボリュームディスカウントです。

本当にたくさん使ってくださっているお客様なのに、全社ではなく特定の部署だけで使っている場合などもこれにあたります。

これは完全に契約のテクニックなのですが、
SaaSのサブスクリプション契約は1年単位の場合が多いかと思います。

すると、追加の発注を頂く際に、ボリュームディスカウントをしたとしても、ディスカウントがかかる部分は追加分だけになってしまいます。

このような場合、単価がバラバラになったり、契約状態がいびつになったりで、結構こまります。

なので、ここで登場するのがアーリーリニューアル(早期更新)
というTipsです。

ざっくりいうと、本来は1年契約ですが、
半年の時点で、通常より早く1年更新をかけてしまう。
そのタイミングで、もともとの契約ライセンスを含めてディスカウントをかけるという手法です。

なので、ダウンセルなのに、ACVもLTVも上がるという矛盾のような現象が成立するのです。

実際に、僕は前職でこの提案をあるSaaS企業様にご提案した際、CFOの方に非常に喜んでいただけたとう経験があります。

こういう細かい契約のテクニックも覚えておくと良いと思います。

番外編②:引き継ぎ編

ここまでは、自分で獲得したお客様への対応でしたが、すでに契約済みの既存顧客を引き継ぐ場合もあるかと思います。

大前提として、様々な情報はCRMに蓄積されていることが大前提で、その情報を全て把握する・・・
のも大切なのですが、

僕はその上で全ての定性情報を無視し、
定量情報だけを整理するのです。

○○部長は気難しい方
とか、そういう情報は全て無視。

見るのは実際の利用データと契約情報と組織図のみ。

そして、やることは2点です。

①現状の契約一覧を整理して初回に持っていく
②前任の営業から受けた提案の整理
→プロダクトセリングの項で書いた内容で提案を受けていたか確認
→ないなら、再度新規の営業のスタンスで作り直す

このnoteを読んでくださっているSaaSの営業の方は、きっと既存顧客を大切にしようというマインドをもった優秀な営業の方でしょう。

ここで必ず持ってもらいたいスタンスは、前任より自分のほうが貴社の役に立ちますよっていう心構えと、そのインパクトを初回から持っていくことです。

ここの引き継ぎについては、追って詳細を書くのでここまでにしますが、ご要望が多ければ、SaaSの営業が初回引き継ぎ時に持っていくと喜ばれる引き継ぎ初回資料テンプレも配布しますのでおしえてください。

まとめ

今回は営業を主軸で書いたのですが、CSの方は営業とどう付き合ってほしいかという内容も追々書いていきます。
最後に一言だけ言わせてください。
既存のお客様を大切にしましょう。

※noteのTwitter埋め込みまた変になってますが、
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