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31 給食(lunch)


はじめに

私の周りでは、学校で過ごす一日のなかで、給食の時間が好きだという人がとても多いように思います。もちろん、苦手な食べ物や味付けに悩む人もいるかと思います。給食の時間は、みんなで食事を楽しむだけではなく、食を通して旬を学んだり郷土の文化を学んだりと大変に重要な時間でもあります。今回のコラムでは、そんな給食について最近のニュースなどにも触れながら考えてみたいと思います。

給食の始まり 世界

給食の起源については、様々な説があります。今日紹介するのは、ドイツで18世紀に始まった貴族のある行為から給食へと変化していったというお話です。ドイツにあるミュンヘンで毎日の食事にも困っていた子どもたちに対して、貴族が自費で食事をふるまう取り組みを始めました。これにより、安心して食事がとれるようになった子どもたちは、生活のために盗みや労働に時間を割く必要が減り、自分のために学ぶ余裕が出てきました。まさに、現代の社会でも必要な貧困対策につながる取り組みと言えます。その後、この効果的な取り組みに関心をもった世界の各国で、給食を子どもたちに提供する取り組みが始まっていきます。
少し遅れて、フランスでも始まった給食ですが、パリの街に多く見られた貧困児童のために食事を提供するだけではなく、お金はかかりますが比較的経済力のある家庭の子どもたちに対しても有料で提供していました。その後、20世紀にはいるとアメリカでも栄養の偏りによる子どもたちの成長への悪影響を防ぐために、給食が始まっていきました。

給食の始まり 日本

では、日本における給食の始まりはというと、ドイツやフランスなどと同じような経緯の中で、始まりの時期も19世紀とほとんど同じころにその起源を確認することができます。
明治22年ですから、今から約140年ほど前のことです。山形県にあります、鶴岡市の大督寺にあった忠愛小学校で給食が始まりました。ドイツで貴族が行ったように、生活が苦しい家庭の子どもに小学校が無償で昼食をふるまうという取り組みを始めました。これが、日本の学校における給食の起源とされています。
その後、明治40年ころになると同様の取り組みが、広島県、秋田県でも行われ始め、静岡県、岡山県、岩手県などでも始まっていきました。しかし、これは一部の地域や小学校で行われていたもので、全国で行われるようになるのはさらに時代が進んでのこととなります。
昭和22年には、全国都市の児童約300万人に対して、学校給食が開始されました。さらに、昭和27年には小麦粉に対する半額国庫補助が開始され4月からは、全国すべての小学校を対象に完全給食がはじまりました。

学校給食感謝の日

太平洋戦争の終戦が1945年のことですが、その後の戦後復興がなされるまでの日本は大変な食糧難でした。戦後間もない1946年12月24日に、アメリカの民間救援団体から給食用物資がおくられました。この贈呈式がおこなわれたことを記念して、毎年12月24日は「学校給食感謝の日」と定められています。年末年始休みで教育的な活動がしにくいので、学校では1月24日からの1週間を「全国学校給食週間」として、様々な教育的な取り組みを通して、食への感謝の念やマナーなどについて学びます。

子ども未来戦略会議

政府の子ども未来戦略会議では、給食についてある計画が準備されています。それは、「小中学校での給食の実施状況や地方自治体による無償化の現状について、全国規模の実態調査を速やかに行い、1年以内にその結果を公表する。」といものです。無償化の時期は示されていませんが、これは、多くの子どもたちにとって朗報となるだけではなく、子どもをもつ家庭や子どもたちを大切に考える地域の人々にとって大変喜ばしいことです。
現在、学校給食費は原則として自費負担ですが、実際には地域や自治体ごとに無償化にしたり、していなかったりと平等性という点では問題があります。これを全国の小中学校で給食を無料で提供するようになるわけですから、現在自費負担の方々は特に朗報ではないでしょうか。
この政策を実行すると、年間で約5000億円が必要となります。もちろん税金で歳出するわけですから、国民が自ら負担し、国民に直接的に還元されるものではありますが、大変な額となります。この金額をどう見るかが重要です。給食が無償化されることで、毎日のお弁当の準備や毎月の給食費の心配などから解放される子育て世代の親、安心して昼食をみんなと食べることができる児童生徒の心の安定、これらが及ぼす社会的な影響について思いを巡らせてみるとこの政策の重要性が見えてきます。こうした国民の幸福の追求は、政治の重要な役割であり、公教育の環境改善と児童生徒の学力の向上にもつながります。

学ぶことは安心して食べることから

おなかが減って勉強に集中できないといった経験をしたことはありますか。実は、そんな経験をしている子どもたちは今の日本においても数多くいるのです。2020年の厚生労働省の調査では、17歳以下の日本の子どもたちの相対的貧困率は、なんと2018年時点で約14%にも上っていたのです。14%とは、7人に1人という状況を示します。世界的な学力の実態調査などでもよく名前の聞く、OECD調査では日本の子どもの貧困率は、先進国34ヶ国中10番目に高いものでした。
世界的な視点から見ても、安心して食べることができないという問題はけっして海外の問題ではなく日本における重要な問題になっているということを私たちはしっかり認識しなければいけないのではないでしょうか。

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