36 オープンAI(Open AI)
はじめに
社会の中にAIが浸透していく速度がどんどん加速しています。今話題のChatGPTですが、ただ単に人が質問することに対して多くのデジタル化された言語やインターネットで結びついた知見をもとにAIが答えてくれるといった単純なものだけにとどまるものではありません。
AIが生成してくれるものは、非常に多岐にわたります。膨大なデータから学習をするオープンAIの人工知能は、生成AIまたはジェネレーティブAIと呼ばれています。では、何を生成できるかというと、新たなテキストや画像、絵画、音声などを生み出すことができるのです。
Open AIとは
Open AIとは、アメリカで2015年に創立されたAIに関する世界中の技術者たちが共同研究をしていく団体です。この団体は活動の目的を「AI技術を高め、人類に貢献し、よりよい世界としていくこと」としています。創立には電気自動車のテスラやTwitterを買収したことでも有名なイーロン・マスク氏が関わっていました。この団体が開発したものが、今話題のチャットGPTとなるわけです。最新バージョンのGPT-4を搭載したマイクロソフトの検索エンジン「bing AI」も最近リリースされるなどその躍進ぶりはすさまじいものがあります。
プロンプト
チャットGPTは、インターネットの普及で今この瞬間にも膨大なデータをもとに計り知れないスピードで学習をしているAIがどんな質問にも答えてくれます。どんな質問にも答えてくれるといっても、利用規約に反するような内容を質問しても望むような答えを得ることはできません。こうした判断も即時にAIは行います。いくつかのキーワードを入力し、細かな留意点を付け加えるだけで、短編小説が即時に出来上がるなど、驚くべきスピードで新たな文章が出来上がります。
これまであれば、プログラミング言語を用いてコンピューターに指令を出していたものが、それぞれの国の言葉で普段から使っているような会話に似たレベルで指令を出すことができるのです。ここで重要となるのが、どのようにチャットGPTに質問をするかです。先ほども述べたようにプログラミング言語は必要ありません。日常の言語でいいのですが、適切に支持を出すためには入力するテキストを的確に選択することは重要です。これは、検索エンジンを用いて必要な情報を検索するときのキーワードを選択する能力に似ている感覚かもしれません。少し違うのが、キーワードではなく、指示を出す言葉選びが必要であるという点です。
パソコンの画面等でチャットGPTを開いた時に、下の方にテキストを入力する部分があるのですが、ここに入力する内容を「プロンプト」と呼びます。どのように入力するかによって生成され、得られるものが変わってきます。というよりも、この何を入力するかが、AIから生成物を得るために必要な人間の行う唯一の作業であり、その後に生成されたものが適切かどうか、理想的であるかを判断することが生成後の人間の作業となります。
プロンプトエンジニアリング
「プロンプト」を的確に作成する技術のことを「プロンプトエンジニアリング」と呼びます。的確なプロンプトを入力しないとGPTの回答も的確なものになりません。チャットGPTを様々な仕事の場面で用いる試みが、進んでいます。それに合わせて、プロントエンジニアリングに優れた人を雇用する企業も出てきています。まさに新しい仕事が誕生しているのです。
新しい世界の重要な要素としてのAI
社会の姿をとらえていく要素として、「安心や安全」は重要な指標となります。AIはこの安心や安全に今深くかかわっています。例えば、自動運転などは、事故を防ぐうえでも故障を検知するためにも、障がいを克服するうえでもAIが活躍する重要な場です。人的なミスをAIが防いでくれているわけです。
また、AIは自然言語処理も得意なため、コミュニケーションの品質の向上にも力を発揮しています。自動翻訳やチャットボットなどはそうしたものの代表的なものだと言えます。皆さんも日頃から活用していることと思いますので例に挙げたようなAIの活躍については身近に感じることができるのではないでしょうか。この精度はどんどん向上していきます。なぜならAIは今も常に学び続けているからです。失敗を克服し続けているからです。そして、最適解に近づく努力をやめないからです。
AIが学習し続けることで、自動翻訳サービスの質も精度も上がっていくわけですから、言語の壁もなくなっていきます。言語の壁をAIが取り除くことで私たちは、多様な国々の方々と交流することが可能になるのです。そこで求められるのは、言語理解的なスキルの差ではなくコミュニケーションという複雑に組み合わさった、相互理解のスキルが求められるのです。
苦手でも素敵な絵が描け、音楽がつくれる
生成的人工知能、生成AIは、的確なプロンプトを入力することで、そのオーダーに対して、文章、画像、音楽メディア、会話を生成してくれます。アイディアが欲しいときは、瞬時に10通り以上のアイディアを提供してくれますし、新たなデザイン画を生み出します。世界中のインターネット上の膨大なデータには、これまで人類が生み出してきた小説、絵画、標語、詩、化学式、デザイン、ロゴなどなど人類の歴史そのものがビックデータとして存在します。この膨大なデータを用いて、AIは新たな音楽や小説を作ってくれるのです。まだまだ不完全な面はありますが使ってみるとそのレベルの高さに驚くと同時に、なんといっても速さに驚きます。
注意点は、インターネットから取り込むコンテンツの中には、誤った情報や偏見等も含まれるため、生成するものがそうしたものの影響を受ける可能性があるという点です。すでに存在しない駅や町の名前が回答に含まれていたりと、インターネットに存在する情報が古ければ、それらをもとに生成されたものにも誤りが出てしまうのです。
もし、華やかで友だちを勇気づけるような曲を作曲し、プレゼントしたいと思った場合、これまでは、音楽を学び作曲するか、できる人に手伝ってもらい教えてもらいながら進めるかという選択をしていましたが、その両方共ができないということが多かったのではないでしょうか。時間や機会や人脈がなければそこで、この思いは手詰まりです。それが今までの時代でした。それが、AIという強い味方を使いこなすスキルを身に付ければ、選択肢が増えるのです。
これからをそして、今を生きる子どもたちに一つ提案です。新たなコミュニケーションスキルとして、AIに的確な「プロンプト」を出す方法を学んでみてください。適切に指示を出す力をつけるということです。できなかったことを仲間とともに乗り越えるという構図から仲間とAIと乗り越えるという構図でとらえてみてください。きっとまた違ったコミュニケーションスキルが必要になるはずです。面白い時代がやってきましたね。