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387 留学生が強すぎる問題


はじめに

昨年の12月に行われた、全国高校駅伝女子の劇的な逆転シーンは、海外留学生の強さを改めて印象付けるものでした。
その後の大会の実行委員会の発表では、今年度の大会から留学生の出場できる区間を最短区間に絞ることが示されました。最長区間は約9km、最短区間は3kmですから、この処置により留学生がいかに早くともその影響は単純に考えて3分の1に留まるというものです。これにより、留学生が勝敗に与える影響を小さくしたいという考えでしょうが、皆さんはこの問題から何を感じるでしょうか。今日の教育コラムでは、高校スポーツについて留学選手にふれながら少しお話してみたいと思います。

日本人に勝たせたいの?

今回話題となったシーンは、1分20秒のリードをもらってトップで通過した仙台育英のアンカーが、神村学園のアンカーであったカリバ・カロライン選手に猛烈なペース追い上げられ、ゴール前の最後の直線で抜かれるというシーンでした。まさに歴史的な大逆転だったわけです。
皮肉なことに、高校駅伝において仙台育英が2人のケニア人留学生を登場させ、圧勝したのは1990年代のことでした。その結果があまりに多くの波紋を生み、留学生の出場は1人までというルールができました。
そして、留学生を起用することに力を入れていた仙台育英が負けることで、今度は留学生の走れる区間に制限が設けられるようになりました。
各高校は、勝つことで自分の高校をPRできます。そのため、ケニアなどで優秀な選手をスカウトし、奨学金や特待制度などを設けて授業などを免除して呼び寄せるわけです。よくそうした留学生の選手を助っ人選手と呼ぶ人がいます。これは、昭和のころからにプロ野球などでよく行われていた助っ人外国人選手をメジャーからヘッドハンティングしていたものによく似ています。
こうした現状を見た時にチームを強くするという方法を考えた時にいくつかの疑問が生じてきます。
本来進学を希望し、その高校に通っている学生によってチームをつくり大会に出場するわけですが、学校の名誉やPRのためにスカウトしなければならないとしている学校もあるようです。そうした状況を考えた時、進学を希望していない海外の選手を呼び寄せる方法は適切なのかと考える人もいるでしょう。
また、公立私立の違いによってそうした留学生に頼るという方法を選択できる学校とできない学校があることが問題だと考える人もいるでしょう。
高校スポーツをどのように位置づけるかによってこうした受けとめ方の違いは出てくるでしょう。

高校スポーツとは

学校における体育活動にはどのような意義があるのかを文部科学省は次のように説明しています。
「生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現するための基礎となるものであり、体力向上、健康増進、競争心や協調、他を尊重する精神の涵養、人間関係の形成など様々な面で意義、効果を有している。」

こうしたことを踏まえた上で、留学生が強すぎる問題について見ていくと、むしろ留学生と競い合うことで向上することもあるわけですから、大会の姿として日本人だけが出場していることが決して望ましいこととは思えないのです。
しかし、大人や学校の利益を優先して勝利至上主義に基づいて留学生をただ単に勝ち負けの道具として利用しているとすればそれは大きな問題だとも考えられます。
現在、そうした問題は少しゆがんだ形で高校スポーツの中で問題となっています。例えば、バスケットボールは留学生の影響がとても大きいスポーツの一つです。留学生選手の身長は日本人選手より大きく、身長の高さが影響するバスケットでは、リバウンドはもちろんのことゴール下のプレイは留学生に圧倒的な利があります。
結果的に留学生を起用しているチームは、インターハイやウインターカップでも優勝する傾向になります。その現状に対して留学生のいない一部のチームでは、留学生がいるチームを打ち負かすことを目標にしているほどです。こうした感情の在りようはスポーツをする環境として望ましいとは必ずしも言えません。
特にラグビーの世界はその影響が大きいように思います。ラグビーは、体が大きい選手が圧倒的に有利です。高校ラグビーでも留学生の存在感は目立ちます。

高校スポーツの留学生はプロスポーツの契約選手とは違う

生徒が学校教育の一環としてスポーツ・文化活動に打ち込む中学や高校における部活動は、世界に類を見ない日本独自の文化でもあります。
日本が育んできたこうした部活動に留学生が選手として参加するのは、教育上の理由で日本の学校にやってきたので、その学校の部活動に所属することも当然で、その延長線上として試合に出ることもやはり当然の権利なわけです。
ですから、部活の強化のために契約して海外から留学させた選手では無いというのが原則なわけです。現在、様々な高校スポーツの競技において問題となっているのは、強い選手をまるで人身売買のように金銭的な支援を提示し、集め学校のCMをさせていることなのではないかと思います。
私は個人的には、有名私立が他県から優秀な選手を集め、地元の生徒がほとんどいないようなチームをつくり全国大会で勝ち上がっている姿もこの問題と同じような印象を受けます。
留学生に過度な制限が無い大会運営をするためには、高校スポーツに携わっている学校や指導者がその在り方そのものを見直す必要があるように感じます。

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